咲とその夫

 定年退職後、「咲」と共に第二の人生を謳歌しながら、趣味のグラウンド・ゴルフに没頭。
 週末にちょこっと競馬も。
 

映画「たそがれ清兵衛」・・・

2012-11-29 23:11:00 | レビュー
 「たそがれ清兵衛は不運な男だという人もいるが、私はそうは思わない。私たち娘を愛し、美しい朋江さんに愛され、充足した思いで短い人生を過ごしたにちがいない。そんな父を誇りに思う」

 と、清兵衛の娘・井口以登(橋口恵莉奈から岸恵子へ)が、晩年に述懐しているこの言葉が物語のすべてを言いつくしている。なお、ナレーターも晩年の以登(岸恵子)。

 先日、NHKBSで観た「隠し剣 鬼の爪」に刺激されて、山田洋次監督作品で初の時代劇「たそがれ清兵衛」を再度観たくてレンタルした。この映画は、藤沢周平原作「たそがれ清兵衛」などの短編3本を基に映画化された2002年公開作品。

 物語は、「隠し剣 鬼の爪」と同じく、幕末の維新の日も遠くない東北・庄内地方の小藩・海坂藩が舞台となっている。雪の降った寒々とした日、井口清兵衛宅にて労咳で寝込んでいた妻の葬儀の様子からはじまる。石高50石の平侍・清兵衛は、本家の伯父・井口藤左衛門(丹波哲郎)の手前、借金を重ねた葬儀を行わざるを得なかった。

 その清兵衛は、借金返済などで手取りは30石とのことで、二人の娘と老いた母、中間の直太(神戸浩)らの生活を支えるため、御蔵役の勤めを終えるとすぐに帰宅し、家事と内職に没頭していた。そのため、いつも風采の上がらない身なりで、同僚の矢崎(赤塚真人)たちから“たそがれ清兵衛”と影で呼ばれ、鼻つまみ者扱いされている。 直太の神戸浩さんが、ここでもいい味を出している

 赤塚真人さんが出演だから、コミカルな演出もあるかと思っていたが、「隠し剣 鬼の爪」や「武士の一分」にあるようなコミカルな部分はほとんど見受けられなかった。山田洋次監督の時代劇初挑戦とのことで、時代考証を念入りに行いロケセットも、小道具から照明、すべてを凝りに凝っている様子が映像の隅々から窺い知れる。そのため、いつものコミカルな部分より、時代劇制作という点に一生懸命であったのだろうか・・・。

 ところで、貧しいながらも祖母を大切にする二人の娘・井口萱野(伊藤未希)と以登(橋口恵莉奈)の佇まいが観る者の心を打ち・・・それだけでも、素晴らしい作品といえる。

 友人・飯沼倫之丞(吹越満)の妹・朋江(宮沢りえ)と清兵衛は、幼馴染であり密かな淡い恋心を持ち続けていた。朋江の元夫・甲田豊太郎(大杉漣)とのやむを得ない決闘、棒切れで打ちのめした清兵衛の噂が広まり、御蔵役の同僚・矢崎(赤塚真人)たちから一目置かれるようになった。

 その後、藤沢周平氏の書き込む、いつもの海坂藩のお家騒動。この一件で現・家老に執拗にたて突いて切腹を命ぜられるも拒み、自宅に籠城した余吾善右衛門(田中泯)を打ち取る旨、清兵衛に藩命が下される。

 先の豊太郎との一件から、清兵衛は一刀流の戸田寛斎の門下生で、若い頃に師範代を務めていたことが判明し、家老から藩命が下されたものである。清兵衛は、自らの境遇から一度は渋るも藩命とあらば仕方ないと決心する。ここから、終盤までのこの映画、観るものに興奮と感動を与える・・・。

 当方も田中泯さんというお方を存じ上げていなかったが、世界的な舞踏家とのことであった。その善右衛門との決闘シーンと前段の二人のやり取り、善右衛門の厳しい境遇を知ることとなると共に何とも言えない得体のしれない、不気味な佇まいに・・・驚きを隠せない。

 殺陣も凄ましいが、斬られた善右衛門の最後は・・・舞踏家としての振り付けなのだろうか。その後、田中泯さんは「隠し剣 鬼の爪」に戸田寛斎の役柄で出演されていた。また、NHK大河ドラマ「龍馬伝」にても土佐藩参政・吉田東洋役で存在感ある演技をされていた。

 敵役となるところに存在感ある役者さんを配置したこの映画、それだけでも凄い作品で山田監督の時代劇第1回作品へのこだわりが窺い知れる。そして、山田監督作品時代劇三部作へと繋がってゆく・・・。

 「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」「武士の一分」

 今回、改めてこの映画を見直し、これまで見逃していたディテール(主役たちの演技の向こうで演じているエキストラの所作がいい)もいろいろと発見しさすがに心を打つ作品のひとつであると・・・思った。実にいいですね。(夫)

[追 記]~解説~
 江戸末期、庄内の平侍・井口清兵衛(真田広之)は、労咳を患った妻の死後、娘2人と老いた母親をなんとか養い暮らしている。仕事が終わると同僚との付き合いを断って帰るため、仲間には「たそがれ」と呼ばれていた。ある夜清兵衛は、久しぶりに再会した幼なじみの朋江(宮沢りえ)を家に送った際、朋江が離縁した男に果し合いを申し渡され、木刀で打ち負かしてしまう。噂はたちまち城中に広まり、朋江も清兵衛に心を砕いていく。その頃、藩主の死により城は揺れ始めていた。
(出典:goo 映画 抜粋)


(子役の表情がとてもいい・・・出典:goo 映画)

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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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hajimemashite (namie)
2012-12-03 06:28:48
すてきなタペストリーに魅せられました^^
おうちを明るくしてくれますね。
「たそがれ清兵衛」と伺って、
「陰陽師」を思い出しました。
もうご覧になられましたか?真田広之さまが
出ている映画と言えばこちらがオススメです^^
素敵な記事をありがとうぞんじます。
返信する
ありがとうございます (咲とその夫)
2012-12-03 14:31:57
真田広之さんは、年齢を重ねてから、とてもいい俳優さんになりましたね。「陰陽師」は野村萬斎さんがメインンと思っていましたが、真田広之さんも出演なのですね。

 最近は、TUTAYA通いをしており・・また、レンタルしてみます。

 トムクルーズ・渡辺謙さんと出演の「ラストサムライ」の武士の役柄のよかったです。

 競馬の話が多いですが、時には家内が趣味に関して書き込みますのでご覧ください。
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