咲とその夫

 定年退職後、「咲」と共に第二の人生を謳歌しながら、趣味のグラウンド・ゴルフに没頭。
 週末にちょこっと競馬も。
 

椿三十郎・・・リメイク版

2012-11-15 22:13:35 | レビュー
 「1962年公開の映画『椿三十郎』の脚本(黒澤明、菊島隆三、小国英雄による)の再映画化。『用心棒』、『椿三十郎』2作品のリメイク権を獲得していた角川春樹が2006年7月12日に製作を発表した」

 と、6年前の当時、ちょっと話題性のあったリメイク版の「椿三十郎」、角川春樹氏は60億円の興行収入を目指したらしいが、結果は11億円余であったとのこと。

 先日、例によってTUTAYAのレンタル店に出向き「剣客商売」を返却後、旧作のDVDをチェックしていた。先般、黒澤明監督作品「隠し砦の三悪人」の原作をアレンジした同名映画のDVDをレンタルしたこともあり、リメイク版の「椿三十郎」を見たいと思った。

 自宅に帰り時間を作って・・・もっとも、時間はいくらでもあるもので。(笑)このリメイク版を観賞。すると、始まりから終了まで、黒沢作品と同じ雰囲気で見ることができた。出演者も時代劇初出演と思われる役者さんを交えた配役で構成された中で、脇を固めるベテラン陣(藤田まこと、中村玉緒、風間杜夫)が、それぞれの持ち場でいい味を出していた。

 もっとも、物足りなさが”ちらちら”と見られたことは仕方ないのかも

 若い9人の侍の中心人物・井坂伊織(加山雄三)に今年のNHK大河ドラマ「平清盛」で主役を務めている松山ケンイチさん・・・最初、誰だろうと思っていた。余りにも初々しいから驚き

 城代家老の睦田(藤田まこと)の夫人(中村玉緒)を助けた9人の若侍と主人公・三十郎(織田裕二)。その夫人から改めて、「あなたのお名前は・・」と聞かれ、困ってしまった主人公は、「私の名前ですか。…つばき、椿三十郎。いや、もうそろそろ四十郎ですが」と答えて、外を見ると塀越しに隣屋敷の真っ赤な椿の花・・・。

 この映画のキーポイントとなる「椿」を印象的に見せる黒沢監督の際立った手法、同様にそれを踏襲している森田芳光監督・・・。

 先ほどの「私の名前ですか。・・・」の台詞回し、これは豪快な素浪人を演じている三船敏郎さんが、上品な物腰の睦田夫人のスローな物言いにちょっとテレながら、朴訥にしゃべっている・・・織田裕二さんの同じ場面、さすがに三船さんにはかなわない。

 脇を固めていたそれぞれの名優たち・・・。竹林役の藤原釜足さん、その役を風間杜夫さんが演じていたが、前任者に負けないくらいの名演技であった。これまでの風間さんのイメージを大きく変えており、拍手喝さいの演技・・・素晴らしい。

 また、城代家老睦田弥兵衛役の伊藤雄之助の名演技、この役は誰だろうと見ていたら、名優の域にあった藤田まことさんであった。

 「乗った人より馬は丸顔」の名台詞、これも伊藤さんに負けないくらい適任の藤田さん・・ここにも拍手。

 黒沢作品の「椿三十郎」では、最後のカットがつとに有名であった。椿三十郎(三船敏郎)と室戸半兵衛(仲代達矢)の決闘シーン。双方が対峙し、いつ剣を抜き放つのかと固唾を呑んでいると、一瞬のうちに決闘は終結・・・おびただしい量の血が、斬られた半兵衛の胸元から吹き出すシーン、これにはすべての映画ファンが驚いた。

 その当時、仲代達矢さんは本当に切られたと思った・・・とのこと。それほど迫力があり、タイミングのいいカットだった。

 この当時の映画で、これだけの血が流れ出すものはなかったと思っている。黒沢監督のリアリズムを垣間見ることができる。リメイク版の決闘シーンは、どうなるのか・・・それも興味を引くところである。

 なるほどね、森田監督も考え抜いた演出だね。

 リメイク版を見て「物足りなさがちらちらと見られた」と中段に記しているが、椿三十郎と室戸半兵衛を演じている織田裕二さんと豊川悦司さん、前作を意識しないよう懸命に演じているのであろうが、残念ながら地に足がついていないようにも思えた。

 台詞回しや殺陣のシーン、ちょっと迫力不足である。その点、黒沢監督に厳しく鍛え上げられた三船敏郎さん、仲代達矢さんの台詞回しや佇まい、殺陣シーンも最高である。重厚感のあるモノクロ映画と素晴らしい俳優陣、これを超えようとの努力はうかがえたが・・・惜しいね。

 双方の作品を見比べるとさらに面白い、リメイク版も悪くはないのだけれど・・・。(夫)


(出典: 2007「椿三十郎」製作委員会)

 参考資料:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』、 2007「椿三十郎」製作委員会HP他

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