きのうは砂丘館にて 『 末松正樹の時代展 』 を見てきました。四時から司修氏の講演 「 戦争と人間 末松正樹のこと 」 がありましたが、とても刺激的なお話でした。何より、テーマの画家のことを動物写真家・星野道夫 ( 1952-1996 ) の生涯になぞらえてのお話で、これは言ってみれば比較文学の手法でした。また言葉を換えて言えば、司先生得意の、分野を越境した 「 コラージュ 」 的比較法だったのではないでしょうか。画家の娘さんの香山万里恵氏がおられて言いづらいことも多々あったようですが、しかし画家の私生活の混乱のことや、その内面にまで迫ろうとした実に感動的な講演だったと思います。
絵画作品の他にも書籍、来簡の手紙なども展示されていて、中でも廣畑憲や松本俊介の手紙は、若き画家の希望と虚しさを切々と末松に語りかけていて、胸が熱くなってしまいました。貧しくあれ、愚かであれ、と言ったのはスティーブ・ジョブズであった。世間から見れば、若く名も無き一画家の希望なんてものは、一屑のパンにもならない愚かしいものであったろう。
新潟の夜は十三夜であったから、帰宅は深夜になってしまった。大倉館長に誘われて、司氏と香山氏とご一緒の夜の古町は、「 神楽坂のようでもあり、パリの小路のようでもあるわね 」 とおっしゃったのは香山氏であった。
「 戦後の暗い作品群の中で、末松正樹の絵は、彼の絵だけが光が差しているように明るかった 」 。訥々と語る司氏の言葉が、せつなく印象に残る深更の古町通りであった。
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