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■ 熱海温泉(上宿)「上宿新宿共同浴場」 / 法界山 誓欣院

数年ぶりに温泉のレポ記事を書こうと思うのですが、新型コロナ禍が収まる気配をみせないなか、現役施設のレポはどうかな? とも思うので、しばらくは休廃業となった施設をレポしていきます。

熱海温泉には、水口共同浴場、水口第二共同浴場、渚共同浴場、清水町浴場、山田湯、駅前温泉浴場、そして上宿新宿共同浴場など、いくつかの共同浴場がありました。

熱海はもともと内湯が主力の温泉地で、共同浴場など外湯の数は多くありませんでした。
熱海の温泉は高温で塩分を含むものが多く、温泉施設の維持にはコストがかかり、温泉組合員の減少などの問題も顕在化していました。
そんなこともあってか、これらの貴重な共同浴場の多くは近年相次いで休廃業となり、現在外来客が入浴できる施設は数少なくなりました。

熱海の共同浴場はもともと地元住民向けの施設が多く、その入浴難易度はかなり高いものでした。
Web上のレポも多くはないので、順次記録の意味でUPしていきたいと思います。

今回は「上宿(かみしゅく)新宿共同浴場」。
「関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん」で特集いただいた記事のリニューアル版です。

※ この施設は平成21年(2009年)に廃止されました。下記は営業時のデータです。

熱海温泉(上宿) 「上宿新宿共同浴場」
住 所 :静岡県熱海市上宿町6-2
電 話 :0557-81-5773
時 間 :14:30~20:20 / 不定休
料 金 :400円

廃止施設ですが、以前の情報や雰囲気を記録するため、極力以前のレポの内容を手を加えずに残しています。
入湯は2005年11月および2008年4月で、主に2005年11月をベースに書いています。


【写真 上(左)】 外観(2005年)
【写真 下(右)】 男湯(2008年)

市内上宿地区にある共同浴場です。
やませみさんから「明治期の大湯の分析にひじょうに近い」という情報をいただき、たまらず突入しました。
場所は市役所の山側、上宿地区。大湯間欠泉から糸川を一本隔てた位置にあります。
市役所となりの中央町公共Pが近いですが混んでいて入れにくく有料なので、スーパー「マックスバリュ」のPにとめて(なにか買い物をすれば2時間まで無料)歩いて行ったほうがいいかも。徒歩4.5分です。


【写真 上(左)】 観音橋
【写真 下(右)】 入口(2008年)



【写真 上(左)】 糸川側から
【写真 下(右)】 糸川への排湯

市役所の前を通り「ニューフジヤホテル」手前(糸川を渡る橋の手前)の路地を山側に入り、温泉寺を左にみてそのすぐ先にある誓欣院参道の観音橋のたもと。
「山田湯」や「渚浴場」にくらべるとぜんぜんわかりやすいです。
朱塗りの橋と共同浴場の白壁、その上に誓欣院の鐘楼と山門が重なり見ごたえがあります。


【写真 上(左)】 内廊下(2005年)
【写真 下(右)】 番台(2008年)

総木造の館内に男女別の浴場。
小さな番台と壁に祀られた神棚、木格子の脱衣棚に年季入った台秤など、共同浴場ならではの風情をただよわせています。
なお、番台は無人のときがあるようなので、小銭で400円用意していったほうがいいかと。


【写真 上(左)】 脱衣所-1(2005年)
【写真 下(右)】 脱衣所-2(2005年)

扉をあけると浴室。
浴室は思いのほか広く、左右の壁面にカラン(計8位)、中央に椅子と桶が山型に積まれています。


【写真 上(左)】 男湯(2005年)
【写真 下(右)】 女湯(2008年)

奥に水色タイル貼3-4人のふたつの浴槽があり、向かって右が熱湯槽、左が適温槽。
ともに石膏の析出と緑青におおわれたカランからゲキ熱の源泉を投入で、よこにうめ水用の水カランもあります。


【写真 上(左)】 男湯適温槽(2008年)
【写真 下(右)】 男湯熱湯槽(2008年)

こういう場合は、外来客は熱湯槽の水カランは使わないのが暗黙のルールで、熱湯槽はゲキ熱でしたが、あとから入ってきた常連さんが水を入れてくれました。
なお、熱湯槽の表示は2005年は「あつい湯」、2008年は「上り湯」で、2008年時点では熱湯槽は上がり湯専用になっていたかもしれません。
共同浴場につきアメニティ類はなし。

常連さんによるとお湯は湯前神社あたりから引いていて、ここにくると70℃くらい、熱交換で冷ましているがそれでも熱いとのこと。

なお、温泉分析書記載の源泉名は「熱海19号泉・野村湯」。
熱海市発行の「熱海温泉誌」(2017年)記載の「昭和11年(1936年)頃の温泉源地一覧」によると、「野村湯」は温泉番号65番、熱海町有、掘削深度49.10m、所在地番は本町447-2となっています。


【写真】 男湯適温槽の湯口(2005年)

熱交換でつくられる真湯のお湯がカランから出るのがありがたいとも・・・。
そういえば(2005年)夏に行った蔵王でも、真湯の浴槽やカランがあるのが宿のウリになるという話をききました。
温泉好きはカランも温泉だと嬉しいものですが、強くて熱いお湯の温泉地では、そんなものなのでしょう。


【写真 上(左)】 男湯適温槽(2005年)
【写真 下(右)】 男湯熱湯槽(2005年)

やや懸濁したお湯は弱い苦味と強いながらもどこかまろみを感じる塩味。
おだやかな磯の香が香り立ち、等張泉らしい適度な重みに明瞭なとろみと土類系の肌に食い込んでくるような力強さが加わるすばらしいもの。
このとろみは、たぶんメタけい酸=271.0mg/kgによるものと思います。

熱海がお湯のよさで語られることは意外と少ないですが、熱海本来のお湯は、力感と深みをあわせ持つこのようなすぐれモノのお湯だったのでしょうか。

やませみさん情報では、「近ごろ空洞化による組合員の減少で存続がきびしい状況」とのことですが、たしかに16時台で2人とゲキ空きで、やはり運営がたいへんなのかも・・・。
熱海の共同浴場は一見客にはきびしいという説もありますが、こちらは番台の方も常連さんも親切で、いろいろお話もうかがえて楽しく入れました。

雰囲気もお湯もすばらしい共同浴場なので、ここはおすすめです。(ただし、あくまでも共同浴場なので入浴にあたってはマナー厳守が必要かと。)

2008年4月に再度入湯しましたが、お湯はぬるめで想定外の強カルキ臭があったので早々に退散しました。
あの素晴らしいお湯がカルキ湯と化したことに割り切れないものを感じましたが、この風情ある共同浴場は平成21年(2009年)に廃止され、現在は誓欣院の墓地となっています。

熱海はこのところ復権気味の温泉地ともいわれ、とくに若い客層が増えているといわれます。
その理由としてロケ地としてメディア露出が増えたこと(→関連記事)や外資系施設の増加によるインバウンド客の増加などもあるかと思います。
地魚料理を積極導入するなど、商店街の頑張りもあるかもしれません。

コロナ禍のなか、当面はインバウンド客は望めない反面、東京への好アクセスを見込んで移住やリゾートワークのニーズが増える可能性もあり、熱海の将来性については不透明感が増しています。
華やかな歴史やさまざまな資源をもつ素晴らしい温泉地なので、一部の「勝ち組」だけでなく、街全体が潤うかたちで発展していけるといいですね。

Na・Ca-塩化物温泉 87.5℃、pH=8.0、湧出量不明、成分総計=8.873g/kg
Na^+=2035.0mg/kg、Ca^2+=1057.0、Fe^2+=1.4、Cl^-=4983.0、SO_4^2-=180.7、I^-=5.4、メタけい酸=271.0、メタほう酸=8.3
<H9.1.14分析> (源泉名:熱海19号泉・野村湯)

せっかくなので、誓欣院もご紹介します。
ただし、参拝時の画像をHDD不調でなくしてしまったので、山内の画像はありません。

現在、新型コロナウイルス感染急拡大により、不要不急の外出自粛が要請されています。
また、寺社様によっては御朱印授与を中止される可能性が高くなっています。
以上、ご留意をお願いします。


法界山 誓欣院
公式Web
熱海市上宿町6-3
浄土宗
御本尊 阿弥陀如来


【写真 上(左)】 誓欣院の参道
【下(右)】 誓欣院の御朱印

浄土宗の古刹で「せいごんいん」と読みます。
もとは真言宗の道光寺で、天正十七年(1589年)浄土宗明珠庵と改めました。

承応三年(1654年)、千葉常周の持念仏であった恵心僧都作「阿弥陀如来」を善譽誓欣上人が御本尊としてこの地に遷化されて開山。
のちに開山の徳を慕って浄土宗 法界山 誓欣院と改めました。

万治三年(1660年)の大火で焼失したものの、芝増上寺の聞誉随範上人により寛政九年(1757年)現在の湯前神社東側に再建。
再建された堂宇もふたたび火災をこうむり、廃寺の危機となりましたが安政七年(1778年)芝増上寺の了諦上人により現在地に再興されいまに至ります。

画像をなくしてしまったので山内の紹介は控えますが、公式Webによると、本堂、庫裏ともに初島の松材を使ったもの。
昔から芝増上寺との関係が深く、本堂屋根には「葵の御紋」が使用されているとのことです。
また、インド大菩提会事務総長ジナラタナ師が奉戴して昭和41年当山に伝授された仏舎利が、仏舎利奉安殿に奉安されています。

山内には樹齢推定800年 幹周約4メートルのクロマツ(雄松)の大木があります。
この松の大木に触れ参拝祈願した、子宝に恵まれない人が参拝後に子を授かったと言われたため、「子宝の松」と命名されています。

御朱印は庫裡にて拝受しました。
中央に三寶印と南無阿弥陀佛の六字御名号の揮毫と「舎利奉安の寺院」の揮毫。
右に「本尊 阿彌陀如来」の印判。
左には山号院号の揮毫と寺院印が捺されています。

公式Webには御朱印の案内もあり、授与に積極的なお寺様とみられます。

なお、そばにある温泉寺でも御朱印を授与されています。(→熱海温泉&湯河原温泉周辺の御朱印


【写真 上(左)】 温泉寺の参道
【下(右)】 温泉寺の御朱印

【 BGM 】
今を抱きしめて - YOSHIKI(X JAPAN) NOA(1993年)
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■ 大雪

2021/01/09 UP

日本海側で大雪が続いています。
不思議なのは、昨日今日と関東での北風の吹き出しはさほど強くないのに、一部で記録的な降雪を記録していることです。
現在の積雪量は→ こちら
24時間降雪量は→ こちら

24時間降雪量で、過去最高、または1月としての過去最高を記録した地点は下記のとおりです。(本州のみ)
秋田、酒田、高田(上越市)、魚津、富山、福井、(越前)大野、下関
ほとんどが日本海側の平野部です。

新潟県の積雪量は、高田198cm、小出192cmと、いずれも山沿いの湯沢191cmよりも多くなっています。
これは、12月中旬の魚沼・奥利根を中心とした豪雪(山雪型)とは様相が異なり、むしろ平成30年の福井豪雪に近い降り方(里雪型)だと思います。
この豪雪は、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ/以前の北陸不連続線)によるものとされ、日本海側の平野部に大きな被害をもたらした「サンパチ豪雪」(昭和38年1月の記録的豪雪)もこの形だったとされています。

実際、雲画像(現況・予想)をみると、北陸沿岸でいくつかの雲の渦がみられます。
里雪型は人口密度の高い平野部で降るため、被害が大きくなりがちです。

コロナ禍のなか、少しでも被害がすくなく収まることを祈ります。

「暖国の雪一尺以下ならば山川村里立所に銀世界をなし、雪の飄々翩々たるを観て花に論へ玉に比べ、勝望美景を愛し、酒食音律の楽を添へ、画に写し詞をつらねて賞翫するは和漢古今の通例なれども、是雪の浅き国の楽みなり。我越後のごとく年毎に幾丈の雪を視ば何の楽き事あらん。雪の為に力を費し千辛万苦する事、下に説く所を視ておもひはかるべし。」
『北越雪譜』 鈴木牧之著

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2020/12/30 UP

国土交通省から「大雪に対する緊急発表」が発表されています。
「30日から1月1日頃にかけて強い冬型の気圧配置となるため、北日本から西日本にかけての日本海側を中心に大雪や大荒れとなるおそれがあり、平地でも大雪となるおそれがあります。
東日本と西日本の太平洋側の平地でも積雪となるところがある見込みです。その後も日本海側を中心にさらに降雪量が増えるおそれがあります。  
大雪による立ち往生等に警戒が必要です。不要不急の外出は控えて下さい。」
とのことです。

これ(高層気温解析図)をみると、
昨日12/29の21時時点の上空約5500m(500hPa天気図)の気温は、樺太付近で-46℃以下となっています。
通常、雪となる目安は-30℃、大雪の目安は-36℃といわれますから、今回の寒気はだだものでないことがわかります。(→大雪の目安

関連ニュースをみると、新潟県の24時間予想降雪量は、
30日の夕方から31日夕方にかけて、70センチから100センチ
31日の夕方から年明け1月1日の夕方にかけて、80センチから120センチ
山沿いの雪の多いところでは、本日30日の夕方からの48時間でじつに220センチのとてつもない大雪が予想されています。

これまでの記録は24時間で100~150センチ程度のところが多いので、記録的な豪雪になる可能性があります。
交通機関の混乱はもちろん、これだけ降ると新雪なだれも心配です。

また、これだけ強い寒気だと夏場のゲリラ豪雨と同じで、どこで局地的な降雪があってもおかしくなく、太平洋側でも油断できないと思います。

コロナ感染も歯止めがきかなくなっているし、年末年始は「お家でゆったり」が正解なのかもしれません。

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2020/12/17 UP

日本海の海水温と上空寒気の差が50℃以上って、相当ヤバそうだと思ったけどまさかここまで降るとは・・・。→気象庁データ

これ(新潟県雪情報)みると、典型的な山雪型であることがわかるが、それにしても群馬・奥利根地域の降り方は異常。

津南171cm、湯沢182cmに対して、藤原202cmって、こんなデータ見たことがない。
奥利根の冬はスキーや温泉でさんざん行っているので、このエリアの雪の降り方はわかっているけど、ふつうは藤原よりも湯桧曽・土合方面の方が雪が深く、津南や湯沢はこれよりもさらに深い。

でも、今回は様相が違う。
群馬県の雪情報

ニュースのなかで、「発達した雪雲の高さがあまりに高かったため、(三国)山脈を越えた群馬の藤原や水上でも大雪となった。」と解説していたけど、なるほどそうなのかもしれないし、地形的な要因もあると思う。

実際、さきほど自宅から見た上越国境方面、山々がほとんど雪雲に覆われていて雪雲が太平洋側まで出張ってきているのがわかる。
(本日テレワーク中)


これ(新潟県雪情報)みると、信濃川沿いの津南、松之山よりも魚野川沿いの湯沢の方が50cmほど多い。(ふつうは逆)
魚野川沿いに雪雲が押し込み、谷川岳で一気に吹き上がってそれが風下の藤原・水上に流れ込んだのではないか。
立ち往生がつづく関越自動車道もやっぱり魚野川沿い。

こういう異常降雨・異常降雪はしばらくクセになるといわれるので、このエリアはとくに当面要注意では?

12月の雪は日照時間が少ないのでなかなか溶けない。
積雪が多ければ換気はしにくくなるし、本当に試練の冬がやってきているのだと思う。

GoTo騒動があって、年末年始の客足は読めないし、それに加えてこの豪雪。
水上、谷川、湯桧曽、宝川、湯ノ小屋、鎌田、片品、戸倉・・・。
何回となく通った温泉たち。なんとか持ちこたえてほしいと思います。
群馬-3 (北毛・新治) 温泉リスト
群馬-4.1 (尾瀬・赤城/片品村の温泉) リスト

※ いろいろな意見が出てますが、正直なところ、推進策がいいのか否かよくわかりません。
立場によって人それぞれ状況が違うから・・・。
でも、推進策をとれば当然リスクは高まるし、クラスターでも発生したらその施設の致命傷になるかもしれない。

いちばん効きそうなのは、期間を絞った休業要請+粗利補償(対昨年)のような気もするけど、予算とのからみあり・・・?。
対策費予算70兆円も真水じゃないといわれてるし、ほんとうによくわかりません。
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