アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

社長の欺瞞を粉砕する

2010年09月01日 10時38分42秒 | 職場人権レポートVol.1
 ブログ更新がまた遅くなり申し訳ない。実は、今職場で起こっている問題を、どうやって勤め先のバイトにも分かるようにまとめるか、悩んでいました。個別のアラばかり書き立ててもキリが無いので、とりあえず標記タイトルの下記内容で、「ワープア解放新聞」の「”総力祭”突入号外」として明日から配布する予定です。

■この落差は一体何なのか?
 
 私の勤め先の会社はよく体育会系だと言われます。何故そう言われるのかよく分かりませんが、ひょっとしたら社長のこんなパフォーマンスが影響しているのかも知れません。
 何と社長は、社長でありながら、時に民情視察(アラ探し?)を兼ねて現場の応援に入ってくれます。普段見慣れないオッサンが、会社の作業服を着てバイトと一緒に作業しているので、あの人は誰かと先輩のバイトに尋ねたら、何とそれが社長でした。
 これが主任クラスまでなら、他の会社でも珍しくはないのでしょうが、流石に社長ともなるとね。本来の社長業が疎かになっていないか、逆に不安に駆られます。実際に、色んな所で仕事の基本が疎かになっているのを、毎日見ているだけにね。
 人手不足で、いざ作業開始しようにも一ライン分の人員がまるまる確保出来ずに、急遽他のラインから応援に回すも、その応援者に段取りを引き継ぐ余裕すらなかったり。体調不良などで当日欠勤の連絡を会社に入れようにも、総務社員まで一ワーカーとして作業に組み込まれている為に、誰も事務所の電話に出れなかったり。給与明細の配布がいつも支給日当日までずれ込み、給与計算自体もたびたび間違っていたり。新人バイトの紹介が現場で一切為されない為に、勤務シフト表を見るまで新人の存在に気付かなかったり。新オープンの店舗名や配送コースの内訳といった最重要の情報ですら、事前に朝礼や掲示で全体にきちんと伝える手間を鬱陶しがり、一回こっきりの雑音交じりのマイク放送で済まそうとしたり、それすら無かったり・・・。
 こんな、まともな会社なら凡そ在り得ないような事態がまかり通っているのに、このアホ社長は何を考えているのかと思いますね。はっきり言って有難迷惑以外の何物でもない。若しかしたら、日産のゴーン社長気取りで「もっと削れる所はないか」と、鵜の目鷹の目になっているつもりかも知れませんが、本末転倒も甚だしいという他ありません。「もうヤラセはいいから、もっと当たり前の事を当たり前に出来る会社にしろよ」と言いたいです。

■今は毎日が「総力祭」
 
 私の勤め先の会社が物流センター業務を請負っている大手スーパーでは、毎月初めに「総力祭」という特売期間があります。特売といっても単なる安売りセールですが、特に3月と9月の「総力祭」にはテレビCMも投入されるので、この間は非常に忙しくなります。それが明日から本格的に始まる訳ですが、もう鬱陶しくて仕方がありません。
 今の新物流センターに移る前は、まだ何だかんだ言っても、特売日などの繁忙期とそうでない時のメリハリがついていたので、繁忙期でも頑張ろうという気になれました。しかし、新センター移転を機に、自分の勤め先の業務請負会社が一次下請けから二次下請けに格下げされてからというもの、時給は下げられた上に毎日の出勤人数まで減らされた為に、もう普段の毎日が「総力祭」と化してしまいました。
 コスト削減で出勤日や残業時間こそ削られたものの、逆に労働密度が強められて、今の方が遥かにしんどくなりました。繁忙期も閑散期も酷使される度合いは同じで、ただそれが定時までに終わるか、定時を過ぎて残業に繰り越すかの違いでしかなくなった。だからもう、「繁忙期と言っても労働密度は普段と変わらないじゃないか」と、逆に居直っています。

■他でも似たようなものなのか
 
 「じゃあ、そんなブラック会社なんて辞めれば良いじゃないか」と、以前の私なら当然そう思ったでしょう。しかし、もう若くはないのに、辞めて転職出来る保証は何も無く、仮に転職出来たとしても、今よりも更に低待遇に落ちる事はあっても上がる事はまず無い。そんな職場で、右も左も分からないまま翻弄された挙句に、またそこでも早晩同じ目に遭う位なら、まだ多少は勝手知ったる今の職場で、人権回復の可能性に賭ける方を選びます。次のような新聞記事を目にすると、特にそう思います。

・すき家にナイフ強盗、店員1人を狙い3回目 (読売新聞 - 08月24日 12:27)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100824-OYT1T00559.htm
 24日午前2時45分頃、埼玉県草加市八幡町の牛丼店「すき家草加店」で、男がカウンターの女性店員(51)に刃渡り約20センチのナイフを突きつけて「金を出せ」と脅し、レジと店の金庫から現金計約10万円を奪って逃げた。
 店内にいたのはこの店員のみでけがはなかった。草加署が強盗事件として調べている。
 発表によると、男は20~30歳代とみられ、身長約1メートル70。いずれも黒い縁付き帽子にTシャツ、ズボン姿で黒の手袋をはめていた。同店は5月と6月にも強盗の被害に遭っており、いずれも同じ店員が1人の時だった。
 店員は未明時間帯に週5回程度勤務しているという。男の容姿や犯行の手口が似ているため、同署が関連を調べている。(以上引用)

 この記事で俄然注目すべきなのが、この「店内にいたのはこの店員のみで」という箇所。いくら来店客の少ない深夜でも、女性一人だけで働かせて、よくも平気でいられるなと思いますね。昨今はコンビニでも当たり前のようにこんな働かせ方が横行していますが、若しこれで従業員が殺されても、多分、会社は何も責任を取らないでしょう。
 何せこのすき家(ゼンショー)は、業界きってのブラック企業ですから。従業員に残業代を払わず、それに怒ったバイト従業員が組合を結成すると、「我が社の従業員はみな個人請負であり、すき家とは何の雇用関係にもない」などと大嘘をつくだけでなく、原告に賄い無銭飲食の罪を擦り付けてまで、裁判を引き伸ばしにかかる会社ですよ。
 実際に私も、数年前の正月に「すき家」の某店舗で、女性従業員がたった一人で、接客も調理も会計もこなしているのを目の当たりにしました。幾ら客の少ない正月松の内とは言え、何かトラブルや事故があったらどうなるだろうかと、牛丼食べていても気が気でなかったのを覚えています。
 また、「週刊プレイボーイ」8月23-30日号にも、「現役店員がバラす!吉野家×すき家×松屋 終わりなき「値下げバトル」の汗だくなウラ側」という特集記事で、牛丼チェーンの安売り競争が、上記の様な従業員の犠牲を踏み台にして展開されている様子が載っています。
 
■この搾取はどこから来るのか
 
 何故こんな働かされ方が蔓延るようになったのか。もう最後になったので手短に書きますが、国内外で企業間の生き残り競争が激化する中で、新自由主義の考え方が、政治家や財界人を通して庶民にも蔓延るようになったからです。
 新自由主義というのは英語の「ネオリベラリズム(略してネオリベ)」の訳語で、市場原理主義とも呼ばれています。要するに、「この世は弱肉強食、全てカネ」の考え方に立つ資本主義の事です。そもそも資本主義そのものが「お金(資本)」中心の考え方ですが、それでも70年代頃までは、「労働者を殺してしまったら元も取れない」という事で、労働者の権利や社会保障もある程度まで確立していました。しかし、80年代以降、経済の国際化・IT化によって国内外の企業間競争が激しさを増して来ると、「一番取りやすい所からふんだくれ、それで死んでしまうような奴は元々そいつが悪いのだ」という、まるで戦前の「女工哀史」や「蟹工船」の頃に先祖返りしたような考え方が、再び息を吹き返して来ました。そして、政治家や財界人によって、そんな新自由主義の考え方がマスコミや学校教育を通して巧妙に広められました。
 それに対して、労働者や庶民の側も、「すき家」のバイトのように闘う人が出てくる一方で、それを運命か何かのように捉え(奴隷根性)、「そうだ俺が悪いのだ」(自己責任論)と無理やり自分に言い聞かせた挙句に、それに耐え切れずに自殺してしまったり、自分だけは助かろうと、政治家や財界人の尻馬に乗って奴隷根性や自己責任論を吹聴する人も出てきます。
 だから、あんな「すき家」や、私の会社の「毎日が総力祭」のような、人を人とも思わず、まるでモノ扱いするような働かされ方が、日本でも世界でも蔓延るようになったのです。

■社長の応援パフォーマンスも小泉・橋下劇場と同じ

 その日本における新自由主義の代表的な信奉者が、かつて一世を風靡した堀江貴文・元ライブドア社長(ホリエモン)や、郵政民営化を強行した小泉・元首相や、今も学力テスト強行や大阪府リストラ計画を進める橋下徹・大阪府知事です。
 ホリエモンが代表者である事は誰が見ても分かるでしょう。小泉元首相や橋下知事の唱えた「規制緩和」や「行政改革」にしても、特権官僚の天下りや談合利権や派閥・世襲政治の是正などは口先だけで、実際にやったのは福祉予算を毎年2200億円づつ削減したり、ホワイトカラー・エグゼンプションで管理職の残業を只働きにしようとしたり、後期高齢者医療制度で75歳以上のお年寄りを姥捨て山に囲い込もうとしたり、要するに「一番取りやすい所からふんだくる」やり方そのものでした。
 
 郵政民営化も、当時はまるで郵便局がコンビニみたいになって便利になるかのように言われましたが、何のことはない、儲けにならない地方の郵便局はとっとと統廃合して、美味しい郵貯・簡保を日米の大手保険会社に市場開放するのが狙いでした。郵政民営化と同時に、アリコやアフラックのCMがテレビにどっと流れるようになりましたが、そのアリコやアフラックのような保険会社が、当の米国でどんな阿漕な商売をやっているかなんて、映画「SiCKO(シッコ)」でも観ない限り日本の有権者には分かりません。
 橋下知事の進める大阪府リストラ計画(最終的に関西州に統合)も、中心部の京阪神にのみ予算を重点配分し、近畿の山間部や北部・南部などの過疎地帯は丸ごと切り捨てるのが目的です。狙いは地域主権ではなく財界主権の確立です。受験偏重の学力テストにあんなに執着しているのも、義務教育の段階から一握りのエリートとその他大勢のバカを篩い分けるのが目的です。それで大儲けするのが受験産業のベネッセと個人情報を握るNTT系企業です。そもそも、幾ら受験競争を煽っても「本当の学力」や「自主的に物を考える力」など身につく筈もない事ぐらい、少し考えれば誰でも分かるでしょう。
 でも、小泉や橋下が、ひたすらワンフレーズで改革、規制緩和と叫び、それをマスコミが大々的に垂れ流していると、何も知らない人でも、何となく彼らが救世主に見えてくるでしょう。これらは全て世人を欺くパフォーマンスです。
 社長とて、幾ら下請企業と言えども同じ財界・資本家仲間、彼の応援パフォーマンスも基本的には小泉・橋下の手法と同じです。二階の事務所で次なるリストラや搾取強化の算段に耽っている事なぞおくびにも出さずに、さも自分が大岡越前や水戸黄門であるかのように取り繕っているだけです。そうでなければ、冒頭に挙げた人員充足などの「当たり前の事」が機能するように、もっと早くから手を打っている筈です。

 
 (注)生きるべきか、死ぬべきか―アメリカではそれを決めるのは保険会社。そのウラには、治療費を払えないという理由で命を落とす多くの国民たちがいる。そして、ムーア(注:映画監督のマイケル・ムーア)は語りかける、本当にこんな社会でいいのか?何か間違っていないか?今こそ立ち上がれ!と。
 仕事中、事故で指を2本切断された中年の大工。健康保険を持っていない彼に、医師は聞く。「親指をくっつけるのは1.2万ドル。中指は6万ドル。どっちにしますか?」安いほうを選んだ大工の手に、中指はない。―映画「SiCKO」のパンフレットより
 
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