4月20日・21日に広島県の秘境駅・備後落合と、その先の絶景スポット・奥出雲おろちループを訪ねて来ました。以下はその旅の中でつぶやいたX(旧Twitter)投稿です。
鉄オタ憧れの秘境駅、備後落合。遂に出発の日が来たが時刻表を見る度に頭を悩ます。芸備線で現地の駅や近くの旅館に向かうまではまだ何とかなっても、木次(きすき)線に乗り換え奥出雲おろちループや出雲坂根の三段式スイッチバックに行こうとしても3本しか列車がないのでは。亀嵩(かめだけ)そばを味わうのはもう無理かも。
大阪から岡山経由で新見まで来た。昼食は新見駅前のきくや食堂で備中そばを注文。鳥南蛮に玉葱を加えた感じのそばで、これで670円はお得。駅の横には地元の公立大学が運営する休憩スペースも。誰でも入れて携帯充電も可。保育・看護系の大学で約180名の学生が学ぶ。過疎化や無医村対策の決め手となるか。
遂に芸備線の車両に。1両に15名程の乗客も大半は鉄オタ。沿線には「やっぱり芸備線がええよのう!」の垂れ幕も、行き違い設備撤去の跡や、落石時に直ぐ止まれるよう時速25キロの徐行運転を強いられ、備後落合までの44キロ12駅を1時間半もかけて走らなければならない所に、鉄路維持の難しさを改めて知る。
備後落合に遂に降り立つ。14時半前後は3方向からの列車が一斉に停車。転車台や貯炭庫の跡、広い構内にかつての賑わいの名残が。今も元OBボランティアが駅の清掃やガイド業務をこなしている。だからこそ今でも週末にはこれだけ大勢の人がやって来る。ここまで愛される秘境駅を廃止してしまって良いのか。
芸備線も昔は山越えの重要ルートとして急行列車が多く走っていた。駅ホームの売店では乗客が名物のうどんをすすり、駅前には松本清張が小説「砂の器」を書き上げた旅館も。当時の賑わいを偲ぶ写真が駅舎に所狭しと。備後落合はもはや秘境駅と言うより鉄道博物館。これを赤字の一言で切り捨てて良いのか。
備後落合の駅そば名物だった「おでんうどん」が、今でも近くのドライブインで食べられると聞き訪ねたが、まだ準備中で叶わず。仕方なく今夜泊まる宿まで6キロの道のりを歩く。国道を道なりにたどれば良いと思っていたが実際は結構な山道だった。ようやく旅館に着き、温泉に身を委ね夕餉に舌鼓を打つ。
昨夜泊まった旅館の方が車で最寄りの油木駅まで送ってくれた。なかなか風情のある旅館だった。駅ノートに素晴らしい絵が描かれていたが1日3本のダイヤでは目にする人もほとんどいない。このまま広島に抜ければ14時台に大阪に着くが日本海回りだと18時台に。それでも奥出雲おろちループに行くべきか否か。
9時35分発木次行きまで大分間があるので、8時52分発備後落合行きに乗り秘境駅で時間を潰そうとしたが、停車時間が5分しかないので諦めた。近くに自販機がないか聞こうと駅前の簡易郵便局に行ったら缶コーヒーを売っていた。駅前の万屋が郵便局も兼ねているようだが売っているのはこの缶コーヒーだけだった。
JR木次線最大の絶景ポイント。奥出雲おろちループと出雲坂根のスイッチバック。やはり来て良かった。スイッチバック区間では進行方向が3度切り替わる。動画も撮影したが、ツイッターには容量オーバーで送れないし、トンネル内では私や乗客の顔もカメラに映り込んでしまっているので残念ながら掲載出来ず。
亀嵩そばを味わうのは諦めた。わずか1日3本のダイヤでは一旦下車したら半日近くも駅で待ちぼうけを食らう。但し貴重な経験も。終点の木次でもそのまま乗っていたら次の終点の宍道(しんじ)まで行ける事が判明。時刻表上の列車名が変わるだけで実際は同じ列車だから。旅程まず先にありきでよく嵌る落とし穴だ。
宍道にお昼頃着いたが売店の類は皆無。このままではお昼ご飯も食べれないので米子まで行く事に。米子駅で一旦清算し、改札出た先の土産物屋で駅弁を慌てて買う。米子駅改札で油木駅の整理券出したら駅員大慌て。普段そんな切符なぞ見ないから。米子から乗った特急やくも車内でようやく遅い昼食。
もし今年も奥出雲おろち号が走っていたら、こんな苦労なぞせずもっと楽に旅が出来た。本当は昨年秋のラストランまでに私も一度乗りたかった。でも最後まで予約で埋まり乗れなかった。木次線は赤字だと言うが、もっと乗りやすいダイヤにすれば乗客は増える。その努力もせず赤字を廃止の口実にするな。
芸備線も然り。沿線には帝釈峡などの観光地もある。備後落合駅も週末になれば鉄オタで賑わう。だったらもう少し運行本数を増やしたらどうだ。駅ボランティアの善意に甘えるだけでなく、せめてJRの嘱託職員として雇ったらどうだ。幾ら赤字のJRでもそれ位の金はあるはずだ。赤字を廃止の口実にするな。
過疎化やモータリゼーションは鉄道赤字の直接要因であっても根本要因ではない。国が高速道路や新幹線にばかり予算を注ぎ込み、地方在来線を蔑ろにし、保線も怠りダイヤも間引きし、時速25キロの徐行運転でしか列車を走れなくして来たから、地方が過疎化・高齢化し、車なしでは生活出来なくなったのだ。
このままでは芸備線や木次線の廃止だけでは済まなくなる。枝が枯れれば幹も枯れる。やがて伯備線も廃止されるようになるだろう。国は輸出大企業ばかり助け、農地を荒れるに任せ、高速道路やリニアにばかり力を入れているのだから。そのくせ赤字のツケを地方にばかり押し付け、非効率だと罵る。
何が再構築協議会か。そんなに地方の自助努力ばかり言い募るなら、今まで地方に押し付けて来た原発を次からは東京のお台場や大阪の夢洲に作れ。今まで赤字ローカル線で運んでやった北海道の野菜も食わずに東京の野菜だけで食べていけ。国民を食わせるのは政府の責任だ。それを地方にばかり押し付けるな。
注:再構築協議会とは、改正地域交通法(地域公共交通活性化再生法)によって新たに設置される事になった赤字ローカル線存廃協議の場。地元自治体・鉄道事業者のどちらかの申し出により協議を開始する。3年間の議論の中で結論を出さなければならない。JR芸備線備中神代(びっちゅうこうじろ)・備後庄原間がその最初の対象区間に選ばれた。
大阪に帰って近所のスーパーで買い物中に、ふと広島のもみじ饅頭が目に付いた。製造元を見たら何と!広島県庄原市東城町のメーカーだ。モロ芸備線の沿線だ。このもみじ饅頭を銚子電鉄の濡れ煎餅と同じ様に宣伝出来ないか?その努力もせずに、赤字を鉄道廃止の口実にするな。