アフガン・イラク・北朝鮮と日本

戦争も人権抑圧もNO!万国のプレカリアート団結せよ!

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 アフガン・イラク戦争も金正日もNO!!搾取・抑圧のない世界を目指して、万国のプレカリアート団結せよ!

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ゼレンスキー大統領の国会演説に対する違和感

2022年03月23日 22時22分03秒 | その他の国際問題
「国連改革が必要」ゼレンスキー大統領が国会でオンライン演説【ノーカット】
 
アジェンデ 最後の演説 チリ・クーデター (日本語字幕付) Salvador Allende ultimo discurso
 
先程放送されたゼレンスキー・ウクライナ大統領のオンライン国会演説を私も聞きました。聞いて非常に違和感を感じました。ゼレンスキー大統領に対してではありません。それをスタンディングオベーション(起立拍手)で迎えた岸田総理や衆参議長に対して、私は非常に薄気味悪い違和感を感じました。
 
客観的に見れば、この戦争は明らかにロシアによるウクライナ侵略戦争です。たとえ、どんなに双方に言い分があったとしても、先に手を出したのはロシアです。ウクライナが先に手を出したのではありません。
 
あくまでロシアが侵略者で、ウクライナはその被害者です。被害者の国の大統領が、世界各国に向けて、オンラインで侵略を非難するのも、当然の行為です。その非難する言葉の中に、多少行き過ぎた表現や誇張があったとしても、その為に侵略自体を免罪するような事があってはなりません。
 
問題はそれを聞く我々の側にあります。今回、ゼレンスキー大統領は、ロシアによる侵略を告発する被害国の指導者として、スタンディングオベーションで迎え入れられました。
 
侵略戦争に反対するのは当然の事です。まして日本は、過去に「大東亜共栄圏」の名目で、アジア侵略に走り、その反省の上に立って、平和憲法を制定した国なのですから。他国以上に、平和や自由・人権を擁護する立場に立たなければならない筈です。
 
しかし、日本政府は今までそのような立場で外交を行って来たでしょうか?日本国民も、そのような立場で他国民と交流して来たでしょうか?
 
例えばベトナム戦争の時はどうだったでしょうか?ベトナム戦争では、沖縄や岩国・厚木の米軍基地から、多くの戦闘爆撃機が飛び立ち、ベトナムの戦場を空爆しました。それに対して、日本の政府や国民は、当時のベトナム指導者ホーチミンに対して、スタンディングオベーションで応えたでしょうか?
 
確かに、「ベ平連」などの形で、反戦平和や侵略戦争反対の運動は盛り上がりました。横浜では市民が米軍の戦車輸送を阻止する戦いに立ち上がりました。でも大多数の国民は、それを対岸の火事として見ていただけではなかったでしょうか?酷い奴になると、戦争で一儲けしようと、「死の商人」に成り下がる輩も少なくなかったのではないでしょうか?
 
南米チリの反革命クーデターの時はどうだったでしょうか?選挙で民主的に選ばれたチリのアジェンデ社会主義政権に対し、米国は1973年に反革命クーデターをけしかけました。「9.11」は、米国では2001年のニューヨーク同時多発テロの日として記憶されますが、南米では、この米国による反革命クーデターの日として記憶されます。
 
アジェンデ大統領は最後の演説で米国の侵略を告発しました。このアジェンデ演説もゼレンスキー演説と同じ侵略に対する抗議です。それに対し、日本の政府や国民は、この決死の抗議に対して、スタンディングオベーションで応えたでしょうか?完全に黙殺しただけだったではないですか!
 
「当時はインターネットなぞ無かったから、スタンディングオベーションなぞ起こりようもなかった」と言いたいのでしょうか?別にインターネットなぞ無くても、ラジオ演説だけでも、流そうと思えば流せたのではないでしょうか?アジェンデ大統領が、最後にまだ唯一掌握していた放送局に託した、自決前の最後の演説を、テレビを通して全国放送する事も、可能だった筈です。
 
ミャンマーのアウンサン・スーチー氏に対してはどうだったでしょうか?軍事政権によって捕らえられた民主活動家のスーチー氏の演説も、オンラインで国会に流し、政府も国民も、スタンディングオベーションで応えるべきだった筈です。「平和・自由や人権・民主主義を守る側への支援を惜しまない」と、当時の政府は言っていたのですから。そして、当時はもう既にインターネットの時代に突入していたのですから。
 
しかし、日本はベトナム戦争、チリ反革命、ミャンマーの人権弾圧に対しては、沈黙したままでした。それどころか、ベトナム戦争では、米国に侵略の基地まで提供しました。ミャンマーの人権弾圧に対しても、形だけ遺憾の声を上げるのみで、裏では逆に軍事政権と血脈を通じているではないですか。
 
ミャンマーの軍事政権を育成したのは実は日本なのです。第二次大戦中に、当時ビルマと呼ばれたミャンマーでは、英国の植民地統治に対する独立運動が起こっていました。それを日本軍が、戦争遂行に利用しようとしました。「南機関」という軍直属のスパイ組織が、独立運動の指導者を拉致して、独立を認める代わりに日本への協力を迫ったのです。
 
そして、ビルマ独立義勇軍(BIA)を編成し押し立てて、ビルマを占領し、形だけの独立を義勇軍に与えました。しかし、実際は日本が英国に代わってビルマを新たな植民地にしただけでした。これが「大東亜共栄圏」なるものの正体です。やがて、その正体を見抜いた義勇軍は、親日から反日に転じます。その独立義勇軍の末裔(まつえい:子孫)がスーチー氏であり、南機関の一員だったビルマ人ネ・ウィンの末裔が、今のミャンマー軍事政権なのです。
 
この様に、ミャンマーについては、もはや日本は第三者ではありません。当事者でもあるのです。それに対して、日本の政府や国民は、どう振る舞ったでしょうか?親日か、反日か?米国寄りか、中国寄りか?そんな自国の都合で、ある時は独立運動や民主活動家を、またある時は軍事政権の側を、打算的に利用して来ただけだったではないですか!
 
ロシアのウクライナ侵略を非難しながら、米国のアフガン・イラク侵略は見て見ぬふり。ベトナム戦争に加担しながら、その反省もなしに、「今のベトナムは反中国だから応援する」と言う職場のパートや、ベトナム人労働者を低賃金搾取する事しか考えない日本のブラック企業。「ウクライナのゼレンスキー頑張れ!」とあれだけ言っていたのに、彼が日本軍の真珠湾攻撃を揶揄した途端に、ゼレンスキー叩きに変わる日本の右翼。
 
そんな日本が、自分に都合の良い時だけ、スタンディングオベーションで迎えても、最後には民主活動家の側からも、軍事政権や侵略者の側からも、見透かされ見捨てられるだけです。日本が真に平和・民主国家で、自由・人権の守護者であろうするなら、そこには一切のエコひいきや二枚舌があってはならない筈です。全ての侵略や人権侵害に抗議してこそ、初めて世界から尊敬される国になると思います。
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プーチンに戦争を止めさせる為の緊急署名

2022年03月15日 00時19分00秒 | その他の国際問題
 
どこぞの冷笑系の元サラ金顧問弁護士(橋下徹)が、「戦争反対なぞ叫んでも無駄。欧米諸国はエネルギーを依存している大国ロシアと妥協せよ」と言いながら、国民には「憲法改正で国防力強化」を説く二枚舌。
橋下が「国防力強化」で守ろうとしているのは、利権や政治権力であって、国民の命や人権ではない。だから、こんな「二枚舌」の詭弁も平気で言えるのだ。
しかし、現実は戦争反対の世論がベトナム戦争を終結に導いた。その後のアフガン戦争やイラク戦争はくい止められなかったが、核兵器の使用は今も全く許してはいない。
高校生が戦争反対の署名を集めると、日本ではすぐに「政治的」だの「左寄り」だのと批判する声が上がる。しかし、本来「戦争反対」に右も左もないはずだ。今、ロシアの国営放送中に反戦プラカードを持った女性が乱入した事がニュースで取り上げられているが、この女性に賛同しながら、高校生の反戦署名集めに眉をひそめるようでは、先に述べた橋下の「二枚舌」と同じだ。
「見て見ぬ振り」では虐めも戦争も絶対に無くならない。是非署名にご協力を!以下転載。
 
 
緊急署名 プーチン大統領、すぐに戦争をやめてください。
 
ロシア連邦政府によるウクライナへの軍事侵攻と核兵器使用の威嚇、原子力発電施設への攻撃に抗議します。

プーチン大統領、ただちに戦争をやめてください。

今回の国連憲章と国際法に違反したロシアの侵攻は、平和な世界を希求している私たちにとって許せるものではありません。

私たちが求めているのは、戦争も核兵器もない世界です。私たちは、世界で唯一の戦争被爆国であり平和憲法を持つ国の未来を担う主権者として、平和を求める世界中の人々と連帯し、「戦争反対」を強く訴えます。

〈呼びかけ人〉
沖縄高校生平和ゼミナール 東京高校生平和ゼミナール 広島高校生平和ゼミナール
〔署名集約日〕 2022年3月20日

*私たちは各地で平和について学び交流している高校生の平和学習サークルです。
*この署名はロシア大使館に提出します。個人情報はこの要請目的以外には使用しません。
*これはネット署名です。賛同していただける方は、下の欄に入力して「送信」してください。重複をさけるため紙の署名用紙に署名した方は、このネット署名には署名しないでください。
 
コメント (2)
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ウクライナ問題の超分かりやすい解説

2022年02月27日 19時48分07秒 | その他の国際問題
 
ロシアが遂にウクライナを侵略した。21世紀にもなって、いまだにロシアは、昔の大日本帝国や、かつてのベトナム戦争、旧ソ連のアフガニスタン侵攻と同じ誤りを繰り返しているのだ。全然進歩がない。もはや呆れて物も言えない。
 
でも、ロシアにもロシアの言い分があるはずだ。それ以前に、ウクライナという国についても私はよく知らないので、図書館から「ウクライナを知るための65章」という本を借りて来て、一から勉強し直す事にした。
 
しかし、読み始めてもう一日で嫌になった。ウクライナの歴史を少し紐解いただけでも、何ちゃら大公国とか、何ちゃら大王とか、何ちゃらの戦いとかが、次から次へとひっきりなしに出て来て、頭の中がウニになってしまったのだ。
 
私は昔から地理や歴史の本を読むのが大好きだった。自慢じゃないけど、小学校から高校まで、社会科の成績通知表はオール5だった。その私ですら、もう一日でこの本を読むのが嫌になった。お陰で、社会科の苦手な人の気持ちが初めて分かった。
 
だから、細かい史実にはとらわれずに、ざっくりと私なりにウクライナの歴史について解説していこうと思う。
 
ロシアは何故ウクライナに侵攻したのか?ロシアの言い分はこうだ。いわく「ウクライナは他の国とは違い、ロシアの兄弟国だ。たまたま今は2つの国に分かれているが、昔は1つの国だった。それが本来の姿だ」と。
 
確かにロシアとウクライナはよく似ている。例えば、ロシアもウクライナも宗教は同じギリシャ正教だ。だから、ウクライナの大聖堂の写真を見ると、昔パルナスのCMに出てきたロシアの寺院とそっくりだ。言葉も非常によく似ている。使用している文字もほぼ同じだ。
 

ウクライナ一帯では8~13世紀にキエフ大公国(キエフ・ルーシ)が栄えた。「ルーシ」とは東スラブ人の総称でもあり、今のロシアの国名も、このルーシが訛ったものである。

ウクライナの首都キエフにある聖ソフィア大聖堂。世界遺産に認定されている。(図・写真はいずれも「世界の歴史まっぷ」から引用)

 
でも、今はロシアとウクライナは別の国なんだから、兄弟国だからと言って、ロシアの考え方、やり方を一方的にウクライナに押し付けるのは間違っている。
 
ロシアみたいな事を言い出せば、清教徒の移民が建国したアメリカも、元はイギリスと兄弟国なのだから、アメリカも自由にイギリスを併合出来てしまうではないか。そんな事、絶対に受け入れられないにも関わらず。
 
だから、ロシアの言っている事は完全に間違っている。兄弟愛や家族愛を装って、自分の考えを押し付けるのは、独裁者や権威主義者の典型的な手口だ。ロシアは今すぐウクライナから手を引け。
 
但し、ウクライナも反省すべき点は多々ある。例えば、今、ウクライナの東部で、ロシア系の住民が、勝手に独立宣言して、「もうウクライナ政府の言う事は聞かない。これからはロシアの指示に従う」と言い出している。
 
しかし、このロシア系の住民も、最初からこんなへそ曲がりだった訳ではない。今から30年ほど前に、ソ連が解散して、ウクライナがソ連から独立した時は、ロシア系住民も独立する事に賛成した。もうロシア人ではなくウクライナ人として歩んでいこうと決めたのだ。
 
そうであるにも関わらず、それから30年も後になって、何故また「ロシア人に返る」なんて事を言い出すようになってしまったのか?ウクライナ人達が、ロシア系住民の意見を聞かずに、ウクライナ人達だけで何事も決めて来たからではないか。
 
その最も分かりやすい例が、ウクライナのNATO加盟問題だ。NATO(ナトー)とは「北大西洋条約機構」の略だ。米国がソ連のワルシャワ条約機構に対抗して、フランスやイギリス、当時の西ドイツと一緒に組んだ軍事同盟の事だ。
 
しかし、今はもうソ連もワルシャワ条約機構もなくなった。だったらNATOも解散すれば良いだろう。なのに、何故NATOだけ後生大事に今でも存続させて、ロシアを仲間はずれにし続けるのか?これではロシアが怒るのも当然ではないか?
 
ロシアはもう共産主義国ではない。アメリカと同じ資本主義の国なんだから、ロシアも加盟させるのが筋だろう。それ以前に、そもそもロシアに対抗する意味すら無くなったのだから、さっさと解散して、今のEU(ヨーロッパ共同体)のように、軍事対立ではなく相互協力に基づく共同体に衣替えするのが筋ではないか。
 
何故そうしないのか?アメリカの支配が崩れるのが怖いからか?それではロシアと全く同じではないか?それでなくとも、ウクライナでは今でもチェルノブイリ原発事故の後始末で精一杯なのに。そんな戦争ごっこよりも、もっと先にやらなければならない事がいくらでもあるはずだ。
 
国内の民族対立も、元はと言えば経済格差が根っこにあるのだろう。その解消法を先に話し合うのが筋だろう。他にもコロナ対策など、先にやらなければならない事は山ほどあるはずだ。
 
それ抜きに、お互いが非難合戦を続けている限り、国も豊かにならないし、国民も幸福にならない。ロシアもアメリカも、ベトナム戦争やアフガニスタン戦争、チェチェン紛争、IS(イスラム国)との戦争で、それを嫌と言うほど味わったはずなのに。まだ懲りないのか。
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自衛隊は今すぐ中東から手を引け!非軍事の平和貢献こそ日本の歩む道

2020年01月07日 15時27分00秒 | その他の国際問題

 

新年早々1月3日に、米国のトランプ政権が、イラクのバクダッド空港で、イラン革命防衛隊の精鋭部隊コッズ部隊を指揮するソレイマニ司令官らをロケット砲で爆撃、殺傷した。これに対し、イラン政府は米国に報復を宣言、米国トランプ政権も「報復されたら更に文化施設を含むイラン国内の標的52ヶ所を攻撃する」と宣言した。文化施設まで攻撃するとは、もはや中東のテロリストと何ら変わらない。事件現場となったバグダッド空港を抱えるイラク政府も、これにはさすがに黙っていられなかったようだ。今まで散々アルカイダ、IS(イスラム国)掃討作戦で米国のお世話になったにも関わらず、今回の米国の攻撃をイラクの主権侵害と捉え、非難声明を出すに至った。

トランプは今回の攻撃を「予想されるテロ攻撃への予防措置」「戦争の為ではなく戦争防止の為に行った」と強弁しているが、そんな詭弁は成り立たない。何故なら、先に戦争を仕掛けたのは、常にイランではなくアメリカだったからだ。

イランでは早くも1953年に、石油国有化を掲げた当時のモサデク政権を英米の主導するクーデターで打倒している。英米がその後釜に据えたのが国王のパフラヴィー(パーレビー)だ。パフラヴィーは英米やソ連を後ろ盾に、「白色革命」と称する近代化を上から強行したが、潤ったのは一部の取り巻きだけで、国内には格差が広がり、国民は秘密警察によって自由を抑圧された。(BBCニュース動画参照

ちなみに、この時イランのモサデク首相を助けたのが当時の出光興産社長・出光佐三だ。禁輸網をかいくぐってイラン原油を日本に輸出し、百田尚樹の小説「海賊と呼ばれた男」のモデルにもなった。しかし百田は出光を日本人美談に利用するだけで、自衛隊派兵にも大賛成。安倍信者のネトウヨ作家にとってはイランも商売のネタでしかない。

やがて、国民の不満が高まり、1979年のイラン革命で国王は亡命を余儀なくされる。この革命で、イランは王国からイスラム共和国に移行するが、政治の実権を握ったのは国民ではなく宗教指導者のホメイニやハメネイだった。野党や労働組合が抑えつけられる中で、政府にまともに対抗できるのは宗教勢力しかなかった。それが革命後の国づくりにも影響を及ぼす事になる。

他方で、米国は革命以後も、国王の亡命を受け入れ石油国有化を拒否する事で、イラン国民に敵対を続ける。反米学生が首都テヘランの米国大使館を占拠したのに対し、イランに対し初の経済制裁を発動。その裏では、二股をかけ制裁対象であるはずのイランに武器を売りつけ、その金で中米ニカラグアの反共ゲリラを支援する芸当までやってのけた(イラン・コントラゲート事件)。

1980年代のイラン・イラク戦争でも米国はイラクに一方的に肩入れ。1988年にはイランの旅客機を米軍が撃墜している。2002年には当時の米国ブッシュ大統領が、イランをイラク・北朝鮮と並んで「悪の枢軸」と名指し批判。その米国の姿勢がイランを軍拡と核開発に追いやった。今や、イランはトルコ、サウジアラビアと並ぶ中東有数の軍事大国にのし上がるまでになった。

しかし、やがて転機が訪れる。米国オバマ政権主導下に、2015年にイランが「経済制裁解除と引き換えに国際原子力機関(IAEA)による核査察を受け入れる」と表明。この核合意で中東にも一時は平和が訪れるかに思えた。ところが、2019年に米国トランプ政権が核合意からの離脱を一方的に表明し、2020年に入った途端にイランの国民的英雄であるソレイマニ司令官を殺害。

今や中東が第三次世界大戦の発源地になろうとしている。米国大統領トランプは、朝鮮半島では米朝首脳会談を実現させ、あたかも平和の使者のように振る舞っているが、これとても米国前大統領オバマの朝鮮半島政策に対する意趣返しに過ぎない。

要するに、このトランプという男は、その時々の都合で、ある時は「平和の使者」、別の時には「強面の強硬派」としての顔を、それぞれ演じ分けているに過ぎない。彼の本質は、あくまでも米国第一主義のワガママなナショナリストだ。

それに対し、日本の安倍政権は、いたずらにトランプに尻尾を振るのみで、全然トランプの無法を諌めようとはしない。その上、歴史的に親日であったイランやイラクにも良い顔をしようと、八方美人を演じる事で、かえって両国からも不信を買う体たらくだ。安倍は、昨年6月にわざわざイランまで行きながら、トランプのメッセンジャーに終始した為に、イランのロウハニ大統領から「気遣い無用」とあしらわれ、スゴスゴと帰る他なかった。

そのくせ、安倍は12月27日に自衛隊の中東派遣を、防衛省設置法に定める「調査・研究」名目で、「アデン湾からオマーン湾に至る日本船舶の航行の安全を確保する為」と称して、法律や国会決議も経ずに一片の閣議決定だけで、年末のドサクサに紛れて強行した。本来なら省庁の役割分担を定めたに過ぎない法律を、無理やり海外派兵正当化に利用したのだ。一応「米国の主導する有志連合には加わらない」とされるものの、戦場となるホルムズ海峡とは目と鼻の先に派兵し、「米軍とも情報共有する」と言う。イランからすれば完全な利敵行為だ。

イランと米国の間で軍事緊張が高まるにつれ、年末までの株価高値が嘘のように、年明け早速、株価が急降下した。年末の株価バブルそのものも、アベノミクスによる官製相場に過ぎず、ボロ儲けしているのは一部の輸出大企業だけだった。庶民は消費税増税のダブルパンチに苦しんでいる。その上、更に、安倍やトランプ、一部の軍需産業の利益の為に、何故我々の自由が制限され、暮らしを破壊されなければならないのか?

戦争に踊らされているという意味では、イランやイラクの民衆も同じだ。せっかく革命で独裁者を追放しながら、その成果を宗教指導者に横取りされ、外国資本や帝国主義者の代わりに、宗教指導者による独裁に苦しめられる事になった。イランやイラクでも、昨年の夏から秋にかけて、失業反対・汚職追放のデモやストが広がった。しかし、その好機も、トランプが戦争の火種を付けた事で、かえってアルカイダやIS等のテロリストが息を吹き返す結果になってしまった。

世界の近現代史をひもとけば、アメリカこそが戦争の火付け役であり、テロの発震源だった。そんなアメリカにテロの被害者ヅラする資格なぞあろうはずがない。その中で、本来なら憲法9条で平和国家を宣言し、イラクやイランとも友好関係を保持して来た日本こそが、非軍事の外交交渉で和平の仲介を果たす事が出来るのに、いたずらにトランプに尻尾を振り続けた結果、両国からも憎まれる事になってしまった。

もはや残された道は唯一つ。一刻も早く安倍政権を退陣させ、自衛隊を中東から撤退させ、非軍事の外交交渉で平和国家本来の役割を果たせるようにするしかない。もはや紅白歌合戦やゴーン脱獄劇に目を奪われている場合ではない。ゴーンの事を取り上げるなら、脱出経路の詮索だけでなく非民主的な「人質司法の闇」も取り上げろ。これ以上、戦争や独裁、格差の犠牲になるのはゴメンだ。アフガニスタンの砂漠を沃野に変えたのも、戦争ではなく灌漑用水路だった。その中村哲医師の偉業に泥を塗るな真似をするな、させるな。自衛隊の中東からの撤退を呼びかける署名に是非ご協力を!戦争反対!

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日本人はフランス・韓国人の爪の垢でも煎じて飲め!

2017年05月11日 18時48分28秒 | その他の国際問題

フランスと韓国の大統領選の話題については、ブログに記事を書く時間が無かったので、ツイッターの私のつぶやきをそのまま、この下に貼り付けておきます。私がここで言いたかった事も表題の一文に尽きます。

「私を支持しなかった方々にも仕える大統領になる」と文在寅(ムンジェイン)韓国新大統領。仮にも公僕を標榜する以上はこうでなくちゃ。あくまで主権者は国民なんだから。常に「私が総理大臣なんだから」と俺様節全開で、はぐらかし答弁ばかりの安倍晋三とは偉い違いだ。この一言でもう「勝負あった」

プレカリアート (@afghan_iraq_nk1) 2017年5月9日

仏大統領選でも日本との差が歴然。マスコミは極右ルペンの伸長ばかり言うが実際は左派のメランション含め4陣営拮抗。決戦投票でも極右のポピュリズムを拒否。革命やレジスタンスの経験故か、単に保守回帰とはならず。民主がダメでやはり自民と、先祖返りで元の木阿弥に泣く日本とは大違い。
 
プレカリアート (@afghan_iraq_nk1) 2017年5月10日

今日貰った赤旗見本紙の韓国新大統領就任記事からも日本との違いが歴然。パク前政権の政治私物化を韓国民は拒否。日本では森友疑惑の安倍が未だに一強独裁。韓国民が新大統領に期待する政策1位が貧困解消、2位も青年の雇用推進。格差拡大拒否した韓国、格差容認で慰安婦叩きに走るしか能のない日本

プレカリアート (@afghan_iraq_nk1) 2017年5月10日

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とりあえず米大統領選挙について呟いてみた

2016年11月11日 22時36分43秒 | その他の国際問題


米大統領選の選挙人獲得状況。左が2008年、右が2016年。08年には青色(民主党オバマ支持)だった五大湖沿岸の工業地帯が悉(ことごと)く赤色(共和党トランプ支持)に塗り替わった事が分かる。もし民主党大統領候補がクリントンではなくサンダースだったら、この様な事にはならなかったのではないか?


(注)左からクリントン、トランプ、予備選挙で民主党候補の座を最後までクリントンと争ったサンダース。サンダースは、資本主義の牙城アメリカで社会主義者である事を敢えて名乗り、格差是正や給付型奨学金制度の拡充を訴えて若者の心をとらえた。

トランプが弱者の味方だと?NY一の不動産王、新興成金そのもので、経済政策もアベノミクスの引き直し。タックスヘイブンへの税逃れも華麗な節税と居直る。これの一体どこが弱者の味方か?トランプは立派な資本家階級の一員。彼に投票した白人貧困層は騙されて肉屋に投票してしまった豚みたいな物だ。

米大統領選と日本の都知事選。国こそ違えど選挙戦の構図は瓜二つ。米国は、サンダースでは勝てないとクリントンに一本化したのに貧困層の票はトランプに流出。日本も、宇都宮では勝てないと鳥越に一本化したのに小池に流出。格差批判票が左派ではなく極右に流れ、更に弱肉強食が強まる。何という皮肉か

残念ながら左派の中にもトランプ待望論があるのは事実。「トランプも反TPPで米軍撤退を望んでいる」と。でも、彼の根底にあるのはあくまで米国中心主義。だから実際の言動は「移民排斥、女性差別、核武装肯定」と、排外主義のオンパレード。こんな「米国の橋下徹」みたいな奴に何を期待するのか?

靖国参拝反対も米国頼み。憲法擁護も天皇発言頼み。こんな他力本願ではいけない。トランプなんかに期待している暇があるなら、左派リベラルとして「今、一体何が出来るのか?」を、もっと真剣に模索すべきでは?南米やギリシャ、スペインでの左派躍進も、そうやって初めて実現できたのではないか?

 以上。ツイッターでの私のつぶやきを、そのままブログに載せたのでは印刷レイアウトが崩れてしまうので、画像の地図とツイートの文章をそれぞれ個別にコピーペーストした。
 ついでに、これもコピーペースト。ハフィントンポストからの引用で、「華氏911」で痛烈にブッシュを批判した米国の映画監督マイケル・ムーアが言った「選挙に負けた今やるべき5つの事」。ムーアの「民主党、共和党、オバマ、トランプ、選挙人団」等々の文言を、日本の「民進党、自民党、鳩山、安倍、小選挙区制」等々に置き換えても、そのまま通用する内容だ。彼は米大統領選向けに「マイケル・ムーアのトランプランド」という反トランプの映画まで作ったそうだ。早く日本でも劇場公開してほしい。

(注)選挙人団:米国の大統領選挙は間接選挙制で、有権者は選挙人しか選べない。その選挙人が大統領候補に投票する仕組みになっている。投票場まで何日もかかって歩かなければたどり着けなかった18世紀の名残をまだ引きずっているのだ。おまけに、ほとんどの州で、一人でも多くの選挙人を獲得した候補が、州全体の選挙人を獲得できる「勝者総取り方式」を採用してしまっている為に、実際には得票では負けていながら、選挙人の数では勝っている為に当選してしまう逆転現象が、今までも繰り返されてきた。マスコミが何かともてはやす米国だが、民主主義と言う点では決して先進国ではないという事は、読者も肝に銘じておくべきだろう。

 実際に米国市民は、選挙後も意気消沈する事無く、このマイケル・ムーアの言葉通りに、反トランプの抗議デモに続々と立ち上がっている。「アメリカ様のご命令だからTPP批准を」と迫る安倍に対して、「トランプ様も反対だからTPP批准撤回を」としか言えない山本太郎(自由党)や志位和夫(共産党)の他力本願と、何という違いか!勿論、「バスに乗り遅れるな」とばかりに安倍自民になびく奴隷・社畜どもや、棄権という形で安倍のペテンを黙って見過ごす怠け者どもは、もはや論外だが。

「一夜明けた朝のToDoリスト」

1. 民主党を乗っ取ろう。そして人々の手に戻すんだ。民主党の奴らは、我々の期待に情けないほど応えられていない。

2. 評論家や予想屋、世論調査員、その他メディアの中で、自分の考えを変えず、実際に起こっていることに目を向けようとしない奴らを首にしよう。偉そうに話をしていた奴らが今、「分裂した国を癒そう」とか「一つになろう」と俺たちに言うんだ。そんなクソ発言を、奴らはこれからもずっと言い続けるだろう。黙らせよう。

3. この8年間、オバマ大統領と闘い、抵抗し、闘ってきた共和党議員のように、これから闘う気概を持って今朝目覚めなかった民主党の国会議員は出ていけ。そのかわりに、これから始まる野蛮や狂気を止められる術を知っている奴らを、俺たちのリーダーにするんだ。

4. 「驚愕の結果だ」とか「ショックだ」と嘆くのをやめよう。そんな風に言ったって、自分の世界に閉じこもって、他のアメリカ人や彼らの絶望に目を向けていないだけだ。民主党・共和党の両方に無視された人たちの、既存のシステムに対する復讐心や怒りが大きくなっている。そこに現れたのが、両方の党をぶちこわして「お前はクビだ」というテレビスターだ。トランプが勝ったのは驚きじゃない。奴はただのジョークじゃなかったんだ。そして、支持を得て強くなっている。メディアに住む生き物で、メディアが作り上げた生き物だ。メディアは決してそれを認めないだろうが。

5. 今日会う人全員に、こう言わなきゃいけない。「得票数は、ヒラリー・クリントンの方が多かったんだ!」過半数のアメリカ人は、ドナルド・トランプじゃなくてヒラリー・クリントンを選んだ。以上。それが事実だ。今朝目覚めて「自分は最低の国に住んでいる」と思ったのであれば、それは間違いだ。過半数のアメリカ人は、ヒラリーの方が良かったんだ。トランプじゃない。彼が大統領になった、ただ一つの理由は、18世紀に作られた、難解でおかしな「選挙人団」と呼ばれるシステムだ。これを変えない限り、自分が選んでない、望んでもいない奴が大統領になる。この国に住んでいる人の多数が、気候変動を信じ、女性は男性と同じ賃金を払われるべきだと考え、借金をせずに大学に行くこと、他の国に武力侵攻しないこと、最低賃金を上げること、国民皆保険に賛成している。それは何一つ変わっていない。我々は、多数が“リベラル”な考えを支持する国に住んでいる。ただ、それを実現させるリベラルなリーダーがいないのだ(#1に戻って欲しい)。

http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/09/michael-moores-5-point-morning-after-to-do-list_n_12891776.html
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資本主義の貧困大国アメリカに広がる社会主義の波

2016年02月21日 21時46分26秒 | その他の国際問題


 前回記事の最後でつぶやいた上記ツイートの内容について改めて説明します。

 まず「今まで米国大統領選なんて茶番劇とバカにしていた」理由について。
 知っている人もおられるでしょうが、米国大統領選挙の仕組みは大変複雑です。単純に国民の直接投票によって大統領が選ばれる訳ではありません。

出典:オール・アバウト

 米国は二大政党制の国です。4年に一度、同時に行われる大統領選挙と上下両院選挙に出馬できるのは、事実上、民主党か共和党の人物に限られます。その他にも政党は一杯あるにはありますが、どの党も泡沫政党ばかりです。
 その二大政党の中で、各州の党員集会や予備選挙で最も多くの代議員を獲得した候補者が、その党の全国大会で大統領候補に選ばれます。そこまでが前半戦です。そして後半戦では、いよいよ二大政党の候補者二人による選挙が行われますが、そこでも有権者が選べるのは、あくまでも「大統領選挙人」という代議員だけです。誰を大統領に投票するかあらかじめ分かっている「大統領選挙人」が各州で選出され、その「大統領選挙人」同士の投票で、ようやく次期大統領が誕生します。

出典:同上

 なぜ、米国の大統領選挙がこんな複雑な仕組みになっているのか。それは、米国は国土が広く、連邦国家で各州の独立性も強いので、直接選挙ではなく州ごとに間接選挙を行うようになったのだと、よく言われています。しかし、馬車しか移動手段のなかった米国建国当初ならいざ知らず、航空機もあるこの21世紀に、なぜいまだにこんな昔の制度に固執しているのか。本当は、財界や軍需産業をバックに持つ政治家が、今まで通り政治を独占したいからです。
 この米国大統領選挙の問題点については、(1)二大政党以外からの立候補には様々な制限が加えられ、事実上、二大政党による政治のたらい回しになっている。(2)「大統領選挙人」の選出についても、最多得票の陣営がその州の全ての選挙人を獲得してしまう「勝者総取り方式」を採用している為に、場合によっては、総得票では上回っているにも関わらず、選挙人の数で負けて敗北してしまうという点で、極めて不公平な制度である。(3)その為に、「勝てば官軍」とばかりに金権選挙やネガティブキャンペーンが横行。(4)米国では住民基本台帳に相当するものがないので、有権者は選挙のたびに選挙登録をしなければならない・・・など、さまざまな弊害が指摘されてきました。
 そんな理由から、近年では米国大統領選挙の投票率も4割から5割に低迷し、選挙どころではない貧困層はほとんど投票にも行かなくなってしまっています。それが「茶番劇とバカにした」理由です。

出典:ウィキペディア

 そんな米国大統領選挙が今年も始まりました。今はまだいくつかの州で予備選挙が始まったばかりで、今度どうなるかまだ分かりませんが、今までと少し様相が違うようです。
 共和党陣営では、「メキシコ国境に万里の長城を築いて不法移民を入国させないようにする」「イスラム教徒は入国させない」などの発言で、保守強硬派から熱狂的に支持された不動産王のドナルド・トランプ(上の左端写真)が、保守乱立のあおりを受け、まさかの首位脱落。
 その一方、民主党陣営では、今まで最有力と目されてきたオバマ路線継承の元国務長官ヒラリー・クリントン(同、真ん中の写真)が、社会主義者を自称する高齢のバーニー・サンダース(同、右端写真)の猛追で、予想外の苦戦。民主党陣営内では、この二人がデッドヒートを繰り広げています。

 その中で私が注目するのは、何と言ってもバーニー・サンダースです。資本主義の総本山とも言える米国で、社会主義者を自称する大統領候補が、二大政党の一角から出て来て、首班指名を争う事なぞ、今までなら考えられませんでした。前述したように、米国にも共産党や社会党はありますが、いずれも泡沫政党で、市町村議会の選挙ですら当選する事ができない状態にあります。
 米国とはそんな国なので、先進国なら大抵の国にある公的な健康保険制度ですら、「社会主義」「アカ」の象徴のように思われ、導入に反対する人が大勢います。その為に、民間保険に加入できない貧困層は、盲腸の手術一つ受けるにも百万円以上も払わなければならず、その費用が払えない為に命を落とす人が後を絶たないのです。
 マイケル・ムーア監督の映画「SiCKO(シッコ)」には、そんな話が一杯出てきます。仕事中に指を2本切断した大工が、薬指だけなら1万2千ドルで縫合手術が受けられるが、中指も含めると7万2千ドルかかると言われ、中指の縫合を諦めざるを得なかった話とか。


映画「SiCKO(シッコ)」の宣伝パンフレットより

 ところで、日本の現状はどうでしょうか。一応、公的な健康保険制度はありますが、以前は1割負担だった保険料が今では3割に引き上げられました。国民健康保険に至っては、年収200万円以下のワーキングプアや無職の人間でも、月に4~5万円もの保険料を払わなければならない仕組みになっています。でも、現実にはそんな高額な保険料なぞ払える訳がありません。この日本にも、そうやって病気になっても医者に通えない人が大勢います。現に、私の会社のバイトの中にも、ひざが痛いのに医者にも通えず、我慢して仕事を続けている人がいます。
 前回記事で取り上げたサンダースの演説の中にも、せっかく大学を卒業できたのに、低賃金で不安定な仕事にしか就けずに、奨学金の返済に苦しむ若者の話が出てきます。これなぞも、今の日本の現状と何も変わらないじゃないですか。とても他国の事とは思えませんでした。

 幸い日本では、米国とは違い、かつては社会党が野党第一党として大きな力を持っていました。そして、社会党が衰退した今も、共産党が一定の力を持っていて、戦争反対や格差是正の要求を掲げて、安保法制や弱肉強食の経済政策を進める自民党や財界と対峙しています。
 でも、今の共産党の演説を聞いていると、教育費の問題一つとっても、せいぜい「学費値下げ」どまりの要求に留まり、サンダースのような「公立大学の無料化」までは主張していないのではないでしょうか。

―多くの人々が立ち上がって”バーニーさん!大学行ったんだ、大学卒業したんだ、で、今、6万ドル、8万ドル、9万ドルの借金を抱えている”とおっしゃるのを聞きました。
 狂ってる。これは狂ってる。彼らはまともな教育を受けようとしただけです。罰せられるべきではない。これこそが 2016年に、公立大学は学費無料になるべきだと信じる理由です。この主張に対しては私の批判者たちはこういうでしょう「バーニーさんよ、そりゃいい考えだ。タダだってね。でもどうやって財源を確保するの?」と。財源の確保をどうするか言いましょう。ウオールストリートの投機筋に課税すりゃいいんですよ。貪欲で無軌道で不法なウオールストリートの振る舞いは、この国の経済を無茶苦茶にしました。国民はそのウォールストリートを助けたんです。今度は、ウォールストリートが中流層を助ける番です。(以上、アイオワ州予備選でのバーニー・サンダースの演説より)

 このサンダースが言うように、若者が知識を身に付け、立派な社会人として貢献できるようにする為には、少なくとも国公立大学については、どんな貧困層の学生でも通えるように、学費は無料にすべきだと思います。それは「バラマキ福祉」なんかではなく、むしろ将来への教育投資として積極的に推奨されるべきものです。そして、大学だけでなく公立高校の学費や給食費も無料にすべきだと思います。その為の財源は、小泉構造改革やアベノミクスによって今まで散々美味しい思いをして来た奴らが負担すれば良いのです。内部留保をため込んだ大企業とか、ワイロをもらった大臣とか、己は株買い占めに奔走しながら国民には偉そうに「戦場に行け」とほざくネトウヨ議員や、不倫で育児休暇を申請するような議員、黒人差別するしか能のないタレント議員などからドンドン取り立てたら良いのです。
 そこまでハッキリ言ってやってこそ、初めて、日本の国民もようやく権利意識にめざめるようになるのではないでしょうか。ところが、「学費値下げ」どまりの要求や公約に留まっていると、安倍首相も表向きは「子育て支援」とか、一見似たような事も言っている中では、逆にアベノミクスに取り込まれてしまうおそれがあります。同じ「子育て支援」なら、「野党の共産党より与党の自民党の方が頼りになる」と考える有権者がいてもおかしくはありません。

 もちろん、安倍が本心ではそんな事なぞツユほども考えていない事は明らかです。「大日本帝国の復活」しか安倍の頭の中にはありません。マイナス金利なぞという禁じ手に安易に頼ってしまうのも、アベノミクスが本当に景気浮揚や国民生活の事を考えて採用した経済政策ではなく、単に自民党が選挙に勝って憲法改正しやすくする為に、国家予算をつぎ込んで無理やり一時的にバブルを演出しているだけだからでしょう。
 でも、そこまで見抜く事のできる有権者はそう多くありません。そんな中で「学費値下げ」や「格差是正」だけの要求に留まっていると、共産党の意図とは逆に、アベノミクスの土俵に取り込まれてしまうだけではないでしょうか。だから、警鐘を鳴らす意味も込めて、「共産党よりもサンダースの方がよっぽど革新的ではないか。そんな事ではいつまで経っても安倍や橋下には勝てないぞ」と書いたのです。

 もちろん、サンダースとて完璧な人物ではありません。それどころか、彼が「社会主義者」と自称している点についても、私はどこまで本当か危ういものだと思っています。格差是正の世直しを主張するだけで社会主義者になれるのでしたら、安倍や公明党やナチスですら社会主義者になってしまいます。自民党の別動隊呼ばわりされた、かつての民社党も、表向きは「民主社会主義」を唱えていましたし、ナチスも「国家社会主義」を唱えていました。かつてナチスが引き起こしたホロコースト(ユダヤ人大虐殺)や第二次世界大戦、かつて日本の政府・軍部による韓国併合や2.26事件や太平洋戦争も、建前上は「失業者や貧しい労働者に職とパンを与える為に、それに見合う資源と領土をよこせ、金持ちの不労所得を没収せよ」と言って始めたものです。

―私は、以前、上院復員軍人委員会の委員長を務めました。そしてその職掌として、復員軍人の権益を守るために粉骨砕身しただけではなく、我々と我々の生活を守るために貢献した沢山の人々とお会いすることができました。そうした軍人たちが守ってくれたアメリカの民主主義は、一人一票であって金持ちが選挙を買収することではないはずです!(同上のサンダースの演説より)

 一見何の変哲もない、サンダースのこの演説の中にも、その危うさが見て取れます。サンダースの言う「軍人たちが守ってくれたアメリカの民主主義」によって、北米大陸の先住民や中南米の人々、広島・長崎の被爆者、フィリピンやベトナム、アフガニスタン、イラクの人々、米国の核実験場にされた南太平洋の島々の人々がどんな目に遭わされたのか。それを少しでも知っていたら、本当の社会主義者ならこんな言葉は吐けないはずです。

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 しかし、たとえ、そのような限界があったとしても、なお、サンダースの演説には、日本の共産党の演説にはない、ある種の力強さや人を引きつける何かが宿っているように思えます。その何かが、ひょっとしたらヒトラー張りのデマゴギーである可能性もないとは言えませんが。その魅力があるからこそ、今まで誰も格差是正の主張には見向きもしなかった資本主義大国の米国においても、史上初めて「社会主義者」の大統領が誕生する可能性が出てきたと言えるのではないでしょうか。
 これは日本にとっても他人事ではありません。かつて「天安門事件」や「ベルリンの壁」崩壊が起こった時に、「資本主義が社会主義に勝った」という宣伝が散々流されました。しかし、その資本主義が今やどうなっているかと言うと、その後何十年も不景気が続き、失業や格差が広がる一方です。そして今や、ピケティという経済学者の書いた「21世紀の資本論」が世界的ベストセラーとなり、中南米やギリシャ、スペイン、ドイツで新たな左翼勢力が躍進を続け、コービンという左翼の闘士がイギリス労働党の新党首に就任するまでになりました。その中で、ひとり日本人だけが、いまだに安倍や橋下の暴走を許し、橋下らの垂れ流す「貧乏なのは個人の自己責任」の洗脳術にまんまと乗せられてしまっています。本当に変わらなければならないのは、サンダースでも共産党でもなく、むしろ私たちの方ではないでしょうか。

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転載:2月1日米国アイオワ州でのサンダース演説全文(菅野完氏による翻訳)

2016年02月19日 21時36分50秒 | その他の国際問題
 ありがとう。アイオワ、ありがとう!

 9月前、私たちはこの美しい州にやってきました。地盤も鞄も看板も何もありませんでした。そして、アメリカ合衆国最強の政治的組織を相手どったのです

 そして、今夜。まだ結果ははっきりしませんが、どうやら、ほぼ互角という結果を収めました。

 そして、まだ。。。

 (聴衆より“バーニー!バーニー!”の連呼。演説中断)

 そして、まだ結果は全部出ていませんが、どうやら我々は、アイオワの代議員の半数を獲得したようです。

 この機に、クリントン元国務長官と、どなたか。。。そう、極めて精力的な選挙活動を展開した彼女の選対に、祝意を申し上げたい。

 そして、オマリー知事にも感謝を申し上げたい。敗北はいつも過酷なものです。私も、一度ならず選挙に負けた経験があリます。しかしオマリー知事は、議論に多大な貢献をし、政策議論中心の選挙戦を展開し、そしてそのことによってアメリカの人々からの尊敬を獲得したのです。

 今夜の出来事を考えると、アイオワの人々は、極めて明確なメッセージを、政界のエスタブリッシュメントたち、経済界のエスタブリッシュメントたち、そして、(ここで記者席を指差す)メディアのエスタブリッシュメントたちに叩きつけたのだと思うのです。

 この国が直面する巨大な危機を考え合わせると、もはや状況は政界のエスタブリッシュメントたちや経済界のエスタブリッシュメントたちでは間に合わないのです。アメリカの人々が主張するのは、そしてこれは、何も進歩主義者からだけではなく、保守派からも中道派からも私は聞きました、“もうこれ以上、壊れきった選挙資金制度に我慢できない”ということなんです。

 私は、以前、上院復員軍人委員会の委員長を務めました。そしてその職掌として、復員軍人の権益を守るために粉骨砕身しただけではなく、我々と我々の生活を守るために貢献した沢山の人々とお会いすることができました。そうした軍人たちが守ってくれたアメリカの民主主義は、一人一票であって金持ちが選挙を買収することではないはずです!

 全国各地の人々が、350万人もの人々が、我々の選挙活動を支えてくれたという事実に、私は、圧倒され感動しています。BernieSanders.comを訪れたそうした人々による献金額の平均をご存知でしょうか? なんと、平均27ドルなんです! 我々は、富裕層やウォールストリートや「アメリカ株式会社」の利益を代表しません。彼らのお金なんていらないんです。

 誇りを持って申し上げますが、我々は民主党唯一のスーパーPAC(訳者注:特別政治活動委員会 各候補者の企業献金や個人献金の窓口となる組織。政治献金を無制限に集めることができることから近年、批判の的となっている)を持たない陣営です。そして、我々がアイオワで健闘し、おそらくはニューハンプシャーでもそれに続く各州でも健闘するであろう理由は、アメリカの人々が不正な経済にNOを叩きつけているからです。もうこれ以上、平均的なアメリカ人が低賃金で長時間働いているにもかかわらず、新たに創造される富が富裕層の1%に集中するような経済を必要としていないのです

 アメリカの人々は、この国が、公正さの上に築き上げられた国だと理解しています。トップ1%の中のわずか1/10の人が、その他90%の人の合計よりも多くの富を所有しているのは公正ではありません。この国最大の金持ち20人が、この国の底辺半分の人々の合計よりも多くの富を持っているのは、公正ではありません。

 みなさん。革命的なアイデアへの準備はいいでしょうね?

 その革命的なアイデアとは、我々が、富裕層だけでなく、勤労世帯にも機能する経済体制を作るということです。

 そして、数百万もの人々が貧困ライン賃金で働いている状況で、我々は、最低賃金を15ドルに引き上げるということこです!

 そして、そうです、女性にも同一賃金を支払うのです!

 アイオワ中を駆け巡りました。我々の陣営は集会に次ぐ集会で7万人近い人々とお話ししました。

 多くの人々が立ち上がって”バーニーさん!大学行ったんだ、大学卒業したんだ、で、今、6万ドル、8万ドル、9万ドルの借金を抱えている”とおっしゃるのを聞きました。

 狂ってる。これは狂ってる。彼らはまともな教育を受けようとしただけです。罰せられるべきではない。これこそが 2016年に、公立大学は学費無料になるべきだと信じる理由です。この主張に対しては私の批判者たちはこういうでしょう「バーニーさんよ、そりゃいい考えだ。タダだってね。でもどうやって財源を確保するの?」と。財源の確保をどうするか言いましょう。ウオールストリートの投機筋に課税すりゃいいんですよ。貪欲で無軌道で不法なウオールストリートの振る舞いは、この国の経済を無茶苦茶にしました。国民はそのウォールストリートを助けたんです。今度は、ウォールストリートが中流層を助ける番です。

 そして我々がアメリカの変革を語る時、どの国よりも沢山の人々を刑務所に入れているという不名誉な現実に行き当たります。それもアフリカ系とラテンアメリカ系に偏って。我々は、刑務所や拘束ではなく、雇用と教育を若者に提供します。

 ちょっと驚くべき話をしましょう。

 私は上院エネルギー委員会と上院環境委員会に所属しています。世界中の科学者たちと話をしました。議論の結果は明白。気候変動は、真実です。そして我々には、世界中の国々と共同して、我々のエネルギーシステムを化石燃料から省エネそして持続可能エネルギーに変えていくべき、倫理的な責任があるのです。

 びっくりするのは、本当にびっくりするのは、共和党のどの候補者も、世界中の科学者が同意するこの話に触れないということです。なんで彼らが触れないかわかりますか? 彼らが気候変動の現実を認め変革を主張した途端、何が起こるかわかりますか? 彼らはコーチ一族(訳者注:カンザス州に拠点を置く全米第二位の規模を誇る私企業・コーチ工業の創業家一族)や化石燃料業界からの献金を失うんです。選挙資金ばかり心配するな、自分たちの子や孫に残していくこの星の事を心配しろと、共和党の候補者には申し上げたい。

 この選挙期間中、私は、何度もなんども批判され続けてきました。いいんです。大丈夫です。

 でも、私が信じていることを繰り返し申し上げましょう。世界のすべての主要国が健康保険を国民の権利として提供しているのだから、アメリカ合衆国も同じようにすべきだと。ウオールストリートジャーナルやワシントンポスト、そして、「アメリカ株式会社」とかにいる私の批判者には、健康保険は権利であって特権じゃない!とはっきり申し上げます!

 そしてそれが、公的医療保険制度こそがすべての人々に医療を提供し、医薬品によるぼったくりをなくし、中流世帯の年間数千ドルに上る医療コストを削減すると信じる理由です。

 他の大統領候補が言わないことで、この演説を締めくくりましょう。

 それは、どの大統領でも、バーニーサンダースでも、誰であれ、若年層や高齢者が必要とする変革をもたらすことはできないということです。大統領一人の力は限られています。次々と献金してくるウォールストリート、「アメリカ株式会社」のような大きな選挙資金提供者は強大なので、どの大統領も、やらねばならぬことを一人ではやれないのです。

 だからこそ、今夜アイオワがやったことは、政治革命なのです!

 もうすでに政治に興味を失った人々、ワシントンで行われていることに失望し不満を持っている人、これまで政治に興味を持っていなかった若者を含む数百万の人々が一緒に、若者や労働者や高齢者がともに立ち上がり、「もう沢山だ!」と、我々の政府は、この偉大な国の政府は、少数の金持ちではなく我々みんなの政府なのだ!と声をあげる政治革命。この革命が起こるとき、我々は、この国を変えることができるのです。

 ありがとう!

 http://hbol.jp/83029

 以上が、ハーバー・ビジネス・オンラインに掲載された、米国大統領選アイオワ州予備選挙での、民主党サンダース候補の総括演説です。菅野さんという方が日本語に翻訳してくれました。それを読んでの、私のとりあえずの感想が下記のツイート。なぜそう感じたのかについては、今日はもう時間が遅いので、また稿を改めて書きたいと思います。

コメント (1)
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イスラエルのガザ・パレスチナ侵略糾弾!

2014年07月23日 22時45分04秒 | その他の国際問題


 この間、職場の下らない話題でブログ記事を費やしてしまい申し訳ありませんでした。この話題も私にとっては大事な人権問題には違いないですが、余りにも程度が低すぎます。やる事為す事全て「行き当たりばったり」で「余計な仕事」ばかり増やしながら、やれ「モギリを貼り置きするな」とか「棚に貼り跡を残すな」とか。その余りの程度の低さに、当の私自身も半ば呆れながら書いていました。その為に、下らない職場ネタよりも遥かに重大な、ガザ空爆緊急抗議集会の参加報告が今頃になってしまいました。
 その抗議集会「イスラエルのガザ攻撃即時停止を求める7.20緊急行動」は、7月20日(日)に全国主要都市で取り組まれました。大阪でも16時から約1時間、JR大阪駅前のヨドバシカメラの店の前で行われました。行動を呼びかけたのは「ATTAC(アタック)関西」「関西共同行動」「パレスチナの平和を考える会」の三団体。そこに何故、外野の私が参加したのか。今からそれを書きます。

 今までも中東では長年に渡り、ユダヤ人主体のイスラエルとアラブ人主体のパレスチナが血みどろの争いを繰り広げてきた事は、皆さんもニュース等でご存知だと思います。「イスラエル」も「パレスチナ」も同じ地域です。ユダヤ人が「イスラエル」と呼んでいる地域を、アラブ人は「パレスチナ」と呼んでいるのです。
 元々アラブ人が住んでいた「パレスチナ」に、第一次大戦後から第二次大戦にかけて、ナチスドイツに迫害されたユダヤ人が大量に逃げてきます。しかも、当時そこは英国の植民地でしたが、英国がユダヤ人にもアラブ人にも良い顔をしようと、両方に将来の独立承認を約束してしまったものだから、もう話が完全にこじれてしまいました。その結果、ユダヤ人の「イスラエル」だけが建国を認められ(1948年)、「パレスチナ」側の人間は難民として生きていく他なくなりました。上記の地図からも、パレスチナの領土(緑色)がイスラエル(白色)によって奪われていく様子がよく分かるでしょう。その中から、ファタハやPFLP(パレスチナ解放人民戦線)等のパレスチナ・ゲリラ諸派や、それらを中心としたPLO(パレスチナ解放機構)、イスラム教徒主体のハマス(正式名称は「イスラム抵抗運動」)が生まれ、それぞれがイスラエル打倒の武装闘争を行ってきました。

 その後、イスラエルとパレスチナの間で和平協定が結ばれ(1993年のオスロ合意)、パレスチナも「自治権」獲得に至りましたが、「自治政府」とは名ばかりで、イスラエルがその後も好き勝手な振る舞いを同地域で行ってきました。今回の空爆のきっかけとなった衝突もその中で起こりました。まず、イスラエル人3名が拉致され、ヨルダン川西岸で遺体で見つかります。それをハマスの仕業とみたイスラエルの過激派によって、今度は何の関係もない16歳のパレスチナ人青年が東エルサレムで拉致され、生きたままガソリンを飲まされ身体にも浴びせかけられ火をつけられて焼き殺されるという凄惨な事件が起こります(日テレNEWS参照)。それが契機となって今回の衝突が始まり、今や空爆だけでなく地上戦にまで拡大してしまったのです。

 その中で、何故、私もその抗議集会に参加しようと思い立ったか。第一の動機は、何の罪もない人間を生きながらにして焼き殺すという、凄惨な事件に対する言い様のない怒り。第二の動機は、その空爆をガザとの境界にある高台からまるで花火見物でもするかのように眺めている鬼畜イスラエル人たちの写真を観て(AFP BBNEWS参照)。第三の動機は、前述でも少し触れた、もはや「報復の連鎖」とも「戦争」とも呼べない、イスラエルによるパレスチナ人への一方的虐殺の歴史を改めて知って。主にこの三つです。 

 前置きはこの位にして、まずはその抗議集会の写真を観ながら少し説明して行きます。

  
 会場には16時半位に着きました。着いたらあいにく土砂降りの夕立で、当初はヨドバシ前の路上で私も飛び入りでビラ配布に参加するつもりだったのが、急きょ聴衆としてビルの下から参加する事に。それでなくても急な雨で通行人がごった返す中で、ヨドバシカメラのガードマンが露骨にビラ配布の妨害に出てきました。
 しかし、主催者側も負けてはいません。緊急という事で行動参加者は20名位も、「表現の自由は憲法でも保障されている」「この間もイスラエルによる大量虐殺が行われているのに、それに抗議するのとヨドバシの金儲けと、一体どちらが大事か!どちらが人間としてあるべき姿か!」と、ますます宣伝に力が入る。在日パレスチナ人の方も何人か参加され、黒・白・緑に赤の「パレスチナの旗」の前で、片言の日本語やアラビア語で連帯の挨拶。

  
 イスラエルの蛮行に抗議する神戸大、奈良女子大学生有志の横断幕・宣伝ビラに「イスラエルによるガザ侵略・人民大虐殺糾弾!」とある様に、これはもはや「報復の連鎖」でも「戦争」でもない。イスラエルは国境を全て封鎖してガザを兵糧攻めにし、人道物資や医薬品の受入れも拒否しながら、住宅密集地に無差別爆撃を加えている。それに対してハマスは、手製のロケットで絶望的な反撃に出ているだけなのだ。イスラエル側の民間人犠牲者は多くても数名。それに対しパレスチナ側の犠牲者は既に数千人を数える。その大半が女性や子どもだ。どちらが本物の「テロリスト」なのか、もはや一目瞭然だ。

  
 「日本はイスラエルに武器を売るな」とある様に、これは日本にとっても他人事ではない。それは、今まで「武器はどんな国にも原則的には売らない」と言っていたのを、今後は「国連決議に違反した国には売らない(その他の国には売る)」と変えてしまったからだ。この新しい原則によっても、今までたびたび国連決議を踏みにじってきたイスラエルには武器は売れない筈だが、安倍政権は早々にイスラエルに武器輸出を約束してしまった。この事からも分かる様に、集団的自衛権とは、単に「日本が外国の戦争に巻き込まれる」だけでなく、侵略国の一員として「他国に戦争を吹っ掛けていく」役割を自ら買って出るという事なのだ。

  
 シュプレヒコール「空爆反対、虐殺反対、封鎖やめろ、アパルトヘイトやめろ、ネタニヤフ恥を知れ、安倍恥を知れ、イスラエルに武器売るな、紛争国に武器売るな、ソーダストリーム売るな、入植地製品売るな、ガザ解放、パレスチナ解放」。「アパルトヘイト」とは南アフリカでかつて行われていた人種差別・人種隔離政策で、黒人から土地を奪い荒れ地やスラムに閉じ込めた事を指す。正に今イスラエルがパレスチナに行っている事と同じだ。「ネタニヤフ」はイスラエルの首相。「ソーダストリーム」とはイスラエルの炭酸飲料メーカーで、パレスチナの入植地(イスラエル占領下でユダヤ人がアラブ人から奪い取った土地)で、無権利状態のパレスチナ人を安くこき使っているブラック企業だ。欧州では不買運動の広がりで商品が売れなくなって、中国・韓国・日本に進出して来たのだ。ヨドバシも、阪神阪急や高島屋、そごう・西武、東急ハンズとともにソーダストリームの商品を扱っている。だから今回の抗議集会もヨドバシの前で行ったのだ。

  
 ここまで書いてもまだピンと来ない人は、パレスチナ人の置かれた境遇を自分のそれと置き換えて考えて見たらよく分かると思う。
 イスラエルの面積2.2万平方キロは、近畿地方から兵庫県を差し引いた面積と大体同じだ。
 それに対し、隣接するパレスチナ自治区の面積は、ヨルダン川西岸とガザを合わせて約6千平方キロ、ほぼ三重県と同じ広さだ。
 その中でガザの面積は約365平方キロ、大阪市と堺市を合わせた位だ。こんな狭い地域の中で、イスラエルが空爆前に避難勧告のビラをまいた所で、一体どこに逃げろと言うのか。
 昔は兵庫県を除いた近畿地方全域が自分たちの土地だったのに、国連決議によって一方的に他国人の土地と二分され、何度も戦争に負けた結果、今や三重県と大阪市・堺市を合わせただけの狭い「自治地域」に押し込められてしまった。しかも「自治政府」も名前だけで、他国人は自治地域の中でも好き勝手に入植地を拡大し、本国との間に道路まで作り、分離壁まで作って我々を三重県の山中や大阪湾岸に閉じ込めてしまった。
 その中で自治政府の選挙をしても、他国人の気に入らない政権が出来ると「テロリスト」と一方的に言われ、有無を言わさず無差別攻撃されるのだ。たとえオモチャみたいなミサイルでも、撃って反撃したくなる気持ちが分かるだろう。

 どうです?よく分かるでしょう。
 第一に、何でも上の言いなり奴隷根性のうちの会社も、正に今のパレスチナやその中のブラック企業ソーダストリームと同じだと言う事が。第二に、その中でもパレスチナ人民は解放を目指して闘っているという事が。第三に、それに引き換え我々は、「モギリがどうたらこうたら」とか「ラベルの跡を残すな」とか「上が決めた事だから仕方ない」とか、自ら家畜・奴隷状態に甘んじている事が、世界情勢から見てどれだけ遅れているか、どれだけ全世界人民の足を引っ張っているか、という事が。
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台湾革命、万歳!

2014年03月28日 09時46分59秒 | その他の国際問題

運動のシンボルであるヒマワリを持つデモ隊。このため、台湾では太陽花學運との呼び方もある。(以上、wikipediaより転載)

 台湾における反TPP運動の高まりについて書かれた下記二つのレポート記事を緊急転載します。
 同国での学生による国会占拠のニュースについては私も聞いていましたが、詳細については、メディアが殆ど取り上げない事もあって、今までよく分かりませんでした。下記のレポートを読んでよく分かりました。中国を米国に、台湾の馬英九政権を日本の安倍政権に、サービス貿易協定をFTAやTPPに、その強行採決を日本の秘密保護法採決のそれに当てはめれば、台湾での闘いがそのまま日本にも直結する事は明らかです。
 但し残念ながら、今の日本には台湾の様な学生運動の盛り上がりは見られませんが、かつては日本でも同様の盛り上がりがありましたし、今もそれは反原発運動などの形で現れています。それに対する政府の弾圧のやり口もそのまんまです。台湾での反搾取闘争を当ブログも断固支持します。


サービス貿易協定は1%の大資本による99%の富の収奪(IWJ)

 占拠の発端となった「サービス貿易協定」とは、台湾と中国の間で、金融、保険、広告、宅配、汚水処理、ホテル、レストラン、娯楽・スポーツ施設、運送、クリーニング、美容、葬儀施設など、幅広いサービス分野で、「互いの市場を開放する」協定である。しかし実際には、中国側の開放は地域が限定されていたり、台湾企業の中国への事業参入のハードルが高いなど、極めて台湾に不利な不平等条約となっている。

 例えば、中国の起業家は台湾の銀行にお金を払うことで、3年間台湾に移住でき、ビザの更新も無制限に行うことができる。一方、台湾の起業家も中国への移住が可能だが、その場合は会社の株式の50%以上を中国政府に渡さなくてはならない、などの条件が盛り込まれている。豊富な資本を持ち生産から小売りまでが一体となっている中国企業が、台湾の中小企業の生存を脅かすのは必至だ。

 こうした内容から、日本の報道では「台湾が中国に飲み込まれる事に反発した学生らの行動」という報じ方がなされている。確かに抗議には台湾独立派の姿も多くみられる。しかし、この問題の本質は少し異なる。

 18日に立法院を占拠した学生らは宣言の中で、「同協定への反対は、『相手が中国なら何でも反対』ということではない。同協定の最大の問題は、貿易自由化が大資本にだけ利益をもたらすことにある」と訴えている。さらに、「同協定は、中国と台湾が統一するか独立するか、という問題ではなく、少数の大資本家が多くのの農民と労働者と中小工業者を飲み込む階級問題であり、台湾の若者の未来を奪う生存問題だ」と語っている。

 馬総統は23日の記者会見で、「同協定の遅れは、台湾のTPPやRSEP(東アジア地域包括的経済連携)参加にも影響をおよぼす」と訴えた。つまり、馬政権にとって「サービス貿易協定」は、TPPやRSEPへの通過点に過ぎない。その先にあるのは、1%の大資本による99%の富の収奪である。

 学生らも宣言の中で、「協定の本質は、WTO、FTA、TPPと同じだ」と指摘している。台湾が直面するこの事態は、TPPで米国に不平等条約を迫られる日本、米韓FTAで不利な条件を飲まされた韓国、そして国内1%の超富裕層が残りの99%の富を食い物にする米国など、世界中で行われている「多国籍資本による経済植民地化」という構図で共通している。

http://iwj.co.jp/wj/open/archives/131463


教育学者・佐藤学先生による台湾速報(2014.3.24-25)。(内田樹のTogetter)

台湾にたまたま招聘中の佐藤学先生から生々しい速報が届きました。日本のメディアではあまり報道されていないこともありますので、ネット経由で現地の情報をお知らせ致します。

「台湾からの速報です。昨日から台北に来ていますが、こちらでは馬英九が中国との貿易協定を強行採決する動きを示したことから、中国資本によって台湾が植民地されることを怒った何万人もの学生たちが、立法院(国会)に押しかけて占拠し、立法院の中に100人が常駐してその外を1万人の学生が守る状態がすでに一週間続いています。一週間とはいえ、国会は学生の支配下にあります。学生たちの中心は台湾大学と精華大学の学生で、この二つの大学の学長と教授の多くは学生支持を言明し、二つの大学は学生が自由に行動を行えるよう、1週間の休講を昨日宣言しました。

さらに23大学の学長が学生支持を表明しています。機動隊が全国から動員されているのですが、その機動隊も非公式ながら学生支持を表明しています。すごいことが起こっています。

ところが今日になっておそらくは国民党の謀略ですが、市民と学生の過激派が暴力的に行政院を占拠し、これを口実に武力による制圧が必至という危険な状態です。私は、二つの大学の招待講演と大学院の集中講義で昨日から台北に滞在しているのですが夜は立法院を訪れて学生に支援のエールを送っています。(注:この行政院占拠は過激派によるものとの評価に対しては別の識者から異論が提起されている)

学生たちは整然と行動していて、佐藤先生はその秩序立った行動に歴史の転換点に比すべき意義を感じておられるとのことでした。大学が学生の行動を公的に支援するということは日本では絶対に考えられない事態ですが、それについての報道は僕はまだ見ておりません。報道されているのでしょうか?

台北の佐藤学先生から続報が入りましたので、お知らせします。「22日土曜日から台北教育大学大学院の集中講義、淡江大学と台北教育大学と台北市教育局の招待講演で台北に来ています。到着直後、学生が占拠している立法院に出かけ、その後3日間情報の収集をつとめました。まず報告したいのは日本の報道はこの事件に無関心ですし、「学生の暴動」として誤った報道を行っています。この事件は、もともと馬英九大統領が独裁的に中国との自由貿易協定(TFA)を結ぶことを強行採決したことに怒った学生たちが立法院を包囲し、かつ100人の学生が立法院内に入って占拠したことです。

中国との貿易協定が締結されれば、中国資本が台湾を乗っ取るのは必至で、この闘いは文字通りの「売国奴」(馬英九・国民党)と「愛国者」(学生・市民)の対決になっています。22日に立法院を訪問して感銘を受けたのは、学生たちの冷静で誠実で思慮深い闘い方でした。

彼らの中心は台湾大学と精華大学の学生たちで台湾のトップエリートたちです。立法院の内部には学生が100人、そして学生の統制下で機動隊が40人が入り、一定時間で交代しています。機動隊も学生たちの行動には非公式ですが賛同を表明していて、お互い交代時には拍手で相手をねぎらう関係でした。

この立法院の周囲には、日によって異なりますが、数千人から5万人の学生と市民が座り込んでおり、立法院の学生たちを守っています。この状態で、月曜日から立法院の占拠が開始され、国会は機能停止になり、すでに1週間になります。静かな緊張状態が続いていましたが、一昨日の日曜日に馬英九が国際記者会見を行い、学生たちを違法者と批判し、まったく対話に応じないと宣言したことから、その夕刻、学生の一部が行政院への突入を呼びかけ始め、立法院の学生たちは制したのですが、馬の対応に憤った過激な学生たちが強行突破于して行政院を占拠しました。

その夜11時から機動隊の実力行使によって行政院の学生たちの逮捕と排除が7派にわたって暴力的に行われ、朝には、行政院の占拠は解かれました。その間に学生の160人以上が負傷しています。この行政院の占拠には、私の見たところ、明らかに暴力団の一部が紛れ込んでいたと思います。

その一部の暴力団が行政院の内部の破壊行為を行い、それがテレビや新聞で報道されました。内部の破壊は断じて学生の行動ではありません。そのことは行政院と立法院の内部の学生たちから情報をえています。この行政院の制圧からこちらでもメディアの報道は「学生の暴動」というニュアンスを強めています。

昨日、テレビ局が世論調査を行って報告したのですが、貿易協定には台湾国民の63%が反対。行政院の学生の途中には58%が反対し31%が支持、行政院の学生たちの機動隊による実力行使による排除は58%が反対し31%が支持です。

重要なのは、この世論調査で学生たちの立法院の占拠に対しては51%が支持し反対は38%であり、さらに立法院の学生の要求に応じて馬英九大統領は学生との対話に応じるべきだという意見は835(注:83%の誤りか?)に達していることです。すなわち、過激な学生たちの行政院の占拠について国民は支持していないが、 それに対する機動隊の実力行使に対しては反対しており、立法院の学生の占拠は国民の多数が支持し、学生の対話の要求は国民の大多数が賛同していることです。

さらに、台湾大学と精華大学は学長が学生支援を表明し、すべての授業を一週間休講にして学生たちに国会(立法院)の集会とデモに参加するよう呼びかけましたし、国内23大学の学長が学生支持を表明し、著名大学の多くが大学を休講措置にして学生の行動を支援しています。(注:23大学→53大学に訂正との追記あり)

「台湾を愛する」という旗が集会では無数に掲げられています。休講措置を学長がとっていない大学では、教授たちが立法院で授業を行って学生を支援しています。私のいる台北教育大学も月曜日から水曜日は学生が校内にほとんどいなかったようです。

ほとんどの学生たちが、立法院の集会とデモに参加していたのです。おもしろいのは、集会の周りに台北の風物の夜市の屋台が並んでいることですが、これらの屋台も夜市の業者の学生支援の行動で、無料で食べ物を提供しています。

立法院の学生たちは、実に思慮深く誠実に行動していて、誰もが「学生たちを尊敬する」と語っています。こうして7日目を迎えました。日本の報道そして一昨日から台湾のテレビ報道も行政院の機動隊の実力行使の場面を中心に報道していますが、行政院の占拠は一部学生の突発的行動であり、政治的には意味がありません。政治的に意味があるのは行政院ではなく立法院であり、大多数の学生と市民は立法院の学生たちの賢明な行動を見守り支援しています。今後の推移は予測がつきません。

立法院を占拠している学生たちに実力行使が行われると、国民に潜在している歴史的な怒りに火がついて台湾は内乱状態と革命状態になるでしょう。そのことを馬も国民党も知っているので、このままの膠着状態が続くでしょう。最後に、学生たちの賢明で勇気ある行為を讃えたいと思います。」(以上)

http://togetter.com/li/646735

コメント (3)
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