5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

鳥の名前について

2010-05-12 23:26:23 | 自然
新緑の季節である。NHKTVでは、京都の古寺の座敷の床に、明るい庭の新緑が蒼く映るのを「床みどり」と云うと紹介していた。昔のひとはなんとも優雅で奥ゆかしい。

風もあってすこし寒いほどだが、街路や公園の木々にはみどりの若葉が萌えて、雨上がりのみずみずしさを感じさせる。枝上では小鳥が飛び交い、賑やかなさえずりは文字通り「春の声」だ。

5月10日から16日までは「バードウイーク」である。金田一春彦の「ことばの歳時記」を読んでも、この時期は「鳥」に係わるハナシが並んでいる。

まず、「日本はもともと鳥の国で、鳥の名も豊富だ」という話。

新井白石に言わせると「からす」の語源は「黒し」だというのだが、金田一先生は、「カラ」は鳴き声の模写で「ス」は鳥という意味だろうとする。カケスやホトトギスのスだから、「カケ」や「ホトトギ」も鳴き声模写ということになる。

鳥の名は鳴き声をもとにしたものが多い。「カッコウ」はそのものズバリだが、ヒヨドリやチドリなどの「ヒヨ」や「チ」も鳴き声だろうし、スズメやカモメなど「スズ」や「カモ」、シジュウカラの「シジュウ」も同じ鳴き声の模写だということだ。

公園のカラスはこちらが近づいても逃げようとしないし、「カラ」とも啼いてくれない。

二つ目の話は「ツバメ」だ。最寄駅の梁上には、すでにツバメの巣が出来ていて、夫婦のツバメが盛んにえさを運んでいる様子が覗ける。

ツバメにしろ、カモメにしろ、スズメにしろ、最後に「メ」のつく名の鳥も多い。これは、生き物、特に鳥の総称だったようだと金田一先生は言われる。古くはサ行の子音をチャ行に発音したという説もあるから、「チュンチュン」と鳴くのはチュジュメ=すずめ、「ツパッツパッ」と鳴くのはチュバメ=つばめということになったのでないかと云うわけだ。

栃木や茨城の農村では、獣や虫にまで「メ」を付けて呼ぶところがある(あった?)のだそうで、そこでは牛はウシメ、蚊はカメとなる。さしずめ、公園にはイヌメをつれて散歩するトシヨリメがならんでやってくるとなる。

「ホトトギス」が三つ目の話。

ホトトギスは昔から「テッペンカケタカ」と鳴くのだといわれているが、金田一先生にはどうしてもそうは聴こえない。ソファ、ソシソファといいう節まわしでは、どう聞いても「天辺懸けたか」にはならず、これは京都アクセントだろうという指摘。三河の鳳来寺山ではホトトギスは「特許許可局」と聞きなしているから、東国人にはこのほうが自然な聞き取り方だとおっしゃる。

このブログでも、愛知のアクセントは東京アクセントに近いのだと力んで書いたことがあるが、さすが金田一先生はそのあたりを押さえておられる。仏法僧の山として知られた鳳来寺山だが周辺開発もあって最近はとんと噂を聞かない。半世紀近くが過ぎた今でも、新緑の鳳来寺にはホトトギスの声が「ホトトギ、ホトトギ」と響いているのだろうか。







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