5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

ノーカントリー

2008-03-26 23:27:49 | 映画・テレビ
2008年のアカデミー賞4部門を獲得した映画『ノーカントリー(フォー・オールドマン)』を津島のTOHOシネマで見る。近くの映画館では上映されていないのでちょっと遠いが遠征。

TVの朝バラ番組で映画評論のピー子がお墨付きを出していたので、ミーハーとしても、評判のアカデミー賞映画は見ておかねばと思ったことが一つ、コーマック・マッカーシー(原作者)の別の本”Cities of the Plain”を読みかけて、その表現(カウボーイ語や特殊なイデイオムの多さ)に音を上げて中断しているが、マッカーシーが描く新しいアメリカ西部の世界がどんな様子で映像化されるのかに興味があったのがもう一つの理由だ。

テキサス西部の荒野をカメラはパンし、ライフルを構えたカウボーイの映像に移っていく。昔の西部劇がスタートしそうだが、そうはならない。Brown Dopeと呼ばれるメキシコ渡りの麻薬の代金を巡って、逃げる男を追う不死身のヒットマンと年寄りのシェリフ、『偶然、意志、宿命』をモチーフにした三人の死のチェイスは、メキシコ国境のリオグランデ川に沿った、オデッサ~デルリオ~エルパソを繋ぐ三角形の中で進行する。

80年代のテキサスの雰囲気をうまく出し「乾いているが埃っぽくない」感じが、コンテンポラリーな西部劇である。

ロードサイドモーテルが数回違った場面で出てくるが、こちらが知っている70年代の中ごろのものよりは、内装や備品などが立派なような気がする。こっちが泊まったのが安宿だったのだろうか。

スクリーンにサスペンスを求める監督の目論見はいろいろなところで見つけられる。出演者にことさらTEXアクセントで語らせないのもその一つ。喩は悪いが、コテコテの大阪弁でしゃべるヒットマンではイメージも違ってきそうだ。原作とは少し違うのだろうが、英語を母語としないこちらにも判る点でもありがたい。

トミーリー・ジョーンズのシェリフが云う軽口ユーモアには笑えるし、ヒットマンの冷酷な口調にはゾクリとする場面も多い。どちらもセリフがは少ないが、これが逆に効果的である。BGMも最小限に抑えられ、ガンファイトだけがリアルだ。

「顔を見たものは殺す主義」のヒットマン、牛をするためのエアガンでつぎつぎに善意の人々が殺される無差別殺人の不条理は見ていて胸がつまるようだ。老シェリフに「最近の犯罪はわからない」といわせ、エルパソの同僚には「This country is hard on people」と嘆かせるアメリカの心の荒廃。

23日には、茨城のJR駅前で無差別殺傷事件が起っている。ノーカントリーはもはやアメリカのことだけではないようだ。エアガンを使った殺傷事件など絶対に起きないように祈りたい。



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1 コメント

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またもや (ゆうぜんさん)
2008-03-26 21:15:02
25日にはJR岡山駅で18歳の少年による突き飛ばしで中年のサラリーマンが死亡した。「誰かを殺したい。誰でもよかった。」という少年のことば。理不尽で不可解な事件が続いている。
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