5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

お祓いことば

2019-04-02 21:19:39 |  文化・芸術

女性のセクハラ告発「ミートゥー」は依然としてアメリカのニュースを賑わしている。まして元副大統領のジョー・バイデンが二人の女性から「次期大統領選の候補にするのはいかがなものか」と疑問符をつけらて、「不適切な行動ではなかった」という弁解と謝罪に懸命にならざるをえない状況となっているというのだから、アメリカ中の眼が注がれるというわけだ。

2009年と2014年の民主党の政治集会であったというバイデンの不適切な行動とは、後ろから女性を黙ってハグしてその髪の香りを嗅き、彼女の髪の毛に顔をうずめて長い間キスを続けたというもの。かねてから「女好き」という噂もあるらしい元副大統領だから、これは「父親的な愛情の表現だ」として彼を擁護する意見もあるのだが、告発した二人の女性は、セクハラではないとは言うものの「女性をモノとみなす態度だ」「侵されたような気分だ」とお怒りが続いている様子である。

このニュースが頭に浮かんだのは、今日の中日夕刊「世界の街海外リポート」でNY特派員が書いている「混雑時の強烈な一言」という記事が面白かったからだ。

NYCの地下鉄やバスは朝夕のラッシュアワーのときでも「ぎゅうぎゅう詰め」で運行するということにはならない。自分が留学していた70年代でも今でも変わりはないようだ。車内空間にまだ余裕があってもホームのサラリーマンたちは次の電車が来るのを自然体で待っている。スキマに割り込みたいと身体をぶつける日本人のひとりである特派員氏は「もう不可能よ!」と車内の女性客に睨まれたことがあるらしい。NYCの地下鉄ルール違反だと云われたわけだ。

他人との身体の接触をとても嫌がるアメリカ人は多い。濃厚なキスやハグなどの身体接触ができるのは夫婦や子供、それに恋人たちの間だけだ。混みあった車内へ突進する勇気ある者なら「セクハラ」リスクも覚悟せねばなるまい。

70年代のNYC地下鉄は照明も駅員も少なくて犯罪の巣のような場所だった。こちらも一人で通路を歩いていて危うくチンピラに襲われそうになったことがある。今ではずいぶん改善されたらしいが、他人とのチャージを嫌って自分をガードしながら地下鉄に乗るというニューヨーカーたちは依然として多いのだろう。

ある朝、乗った車両が大きく揺れて特派員氏の近くにいた女性が隣の中年女性にぶつかった。ムッとした中年女性の口から咄嗟に出たのは「私はあんたのテスリじゃない」という一言。大阪のおばちゃんみたいで、なかなか面白いなと思ったが、まじめな特派員氏は「冗談だったのか、本気だったのか」と悩んだという。

都会に住むアメリカ人たちは混雑した空間を抜けるときには必ず誰彼かまわず「失礼!」と声を発する。マナーの良さだともいえるが、これはやはり、他人との身体接触を極力避けたいが為の「お祓い」言葉だともいえなくはない。バイデンは愛情表現をするのに先ずかけるべき「言葉」をケチったのではないか。無言でごそごそやったのでは「スケベ心あり」と断罪されてもしょうがないではないか。





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