もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

210729 【寄稿】五輪利権のため国民の命賭けた政府 作家・中村文則さん

2021年07月30日 01時18分46秒 | 時代の記憶
7月29日(木):   中村文則さん
  なかむら・ふみのり 作家。1977年、愛知県生まれ。福島大卒。2002年に「銃」で新潮新人賞を受賞しデビュー。05年、「土の中の子供」で芥川賞。20年、中日文化賞。主な著書に「掏摸(スリ)」(大江健三郎賞)「教団X」「逃亡者」など。東京都在住。
東京新聞:【寄稿】五輪利権のため国民の命賭けた政府 作家・中村文則さん
2021年7月28日 06時00分

 1964年の東京五輪の開会式を見て、当時の国内の著名作家たちは、さまざまな文章をつづり、記録し、表現した。そして2021年の東京五輪は―。作家の中村文則さん(43)に、23日夜の開会式を見た後で、寄稿してもらった。

 戦時中、一人の女性の死がなければ、僕は生まれていなかった。その女性の婚約者だった僕の祖父は、彼女の妹と結婚することになる。僕の祖母だ。
 では僕は、自分の誕生を踏まえ、その女性の死を肯定するべきか。いや、僕は彼女に生きて欲しかった。では自分の命を否定するかというと、それも違う。僕は自分の命を(できれば)肯定したい。
 この世界には、時に因果をいったん分けて、それぞれで感じた方がいいことがある。どのような因果をそうすべきかは、場合にもよるだろう。
 今回の五輪について考える度、このことが頭に浮かぶ。五輪への態度は人それぞれだが、僕の場合は、開催に反対している。でも同時に、選手達は称えたいと思う。
 開催なら、来年に1年をかけ、競技ごとに小出しでやるべきと考える。関係者やマスコミも止めれば、一度に集まる人数を減らせ、管理も容易になる(感染状況次第で有観客も)。でも海外の放映権などの利権で、無理なのだろう。秋の選挙も念頭と疑う報道も多い。
 これほどの規模のパンデミックでの五輪・パラリンピックは、人類史上経験がない。どうしても「イチカバチカ」の賭けの要素があり、賭けられているのは国民の命になる。五輪利権のために国民の命を賭ける、史上初の政府を今私達は目の当たりにしている。
 選手達は、やり難い。この時期の開催だから、感染し不参加の選手が当然続出しており、既に五輪はフェアでなく失敗している。国民に希望を、の言葉も、社会に補償が行き届いていない今、五輪費用が補償に回った方が人々のためだ。「心を一つにコロナと闘う」も幼稚過ぎる。世界の人々が望むのはコロナの収束で、五輪は真逆。選手達と違い、ワクチンも国民に行きわたっていない(僕の地区も予約は停止)。現在の感染者数の急上昇も無関係と思えない。五輪開催なら自粛などばかばかしい、という気運の結果もある。
 最悪のタイミングの五輪。長年続いた政治の愚かさの総仕上げの感がある。開会式での選手達は、通常なら祝福する満員の客席に手を振る。でも今回は観客がいない。彼らの多くは会場で明るく振る舞っていたが、手を振る先にあるのはカメラであり、その向こうにいるのは、自分達をどう思っているか不明の人達である。
 僕は今でも五輪は中止・延期と考え、同時に内外の選手達の努力の結果を称えるつもりでいる。政治に毒されたスポーツを、自分の中だけでも取り戻したいと願う。この時期の開催に意義をつくっても欺瞞に過ぎない。選手達には自分達の競技に、つまりもうスポーツそのものと向き合ってほしいと思う。出場辞退を望む声はあるが、開催するなら出たいと思うのが選手だし、人間だろう。
 既に五輪は失敗と書いたが、そもそも、家族の預金を勝手に全て賭けた父親がその賭けに勝ったとして、父さん凄い! と褒めるのは愚行。国民の命は賭けるものではない。未来のためにも、政府とIOCは一度解体した方がいい。



毎日新聞日医など9団体が緊急声明「感染爆発避けるため、危機感共有を」
7/29(木) 23:10配信

 新型コロナウイルスの感染者急増によって医療提供体制の逼迫(ひっぱく)は間近だとして、日本医師会(日医)や日本病院会など9団体が29日、緊急声明を出した。声明は全国の感染者数が過去最多を更新したことに触れ、「今後の爆発的感染拡大を避けるための危機感の共有と対策が必須」と指摘。全国を対象に緊急事態宣言を出すことを検討し、40~64歳のワクチン接種を推進するよう政府に求めている。
 記者会見した日医の中川俊男会長は「(緊急事態宣言は)要請がないから発令しないというスタンスでは間に合わない。政府には早め早めに手を打ってほしい」と訴えた。開催中の東京オリンピックの影響について問われた東京都医師会の尾崎治夫会長は「(五輪の開催で)お祭り騒ぎをしているのに自粛してと言うのは難しく、間接的な影響はあったかもしれない」と語った。
 声明は、40~50代の中等症患者の増加で医療の逼迫が懸念されると指摘し、政府に十分で安定したワクチンの供給を要請。国民には徹底的にテレワークを実施することなどを求めている。
 声明は日医、日本病院会のほか、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、東京都医師会の連名で出された。【神足俊輔】
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