もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

187冊目 鈴木光司「バースデイ」(角川ホラー文庫;1999)  評価4

2012年03月30日 03時23分28秒 | 一日一冊読書開始
3月29日(木):

263ページ  所要時間4:45

著者42歳。「リング」「らせん」「ループ」シリーズの完結編。スピンオフ作品が3編掲載されている。

「空に浮かぶ棺」  49ページ:
・「らせん」で山村貞子を再生するための蛹(さなぎ)として処女懐胎し、ビルの排気溝で出産後、廃棄されねばならなかった高野舞の悲劇の死の様子が、本人の意識と共に克明に描かれる。
・それにしても再生した高山竜司の記憶が維持された理由は、「ループ」によって説明されたが、再生した山村貞子の記憶と意識が維持された理由は何だったんだろう。怨念?、ここはオカルトのままかな?

「レモンハート」  122ページ:
・1990年リング事件の24年前の1966年に小劇団・飛翔の新人女優山村貞子が消息を絶つ。当時18歳の山村貞子と愛し合っていた劇団・音響効果員遠山(23歳)が、1990年(47歳)M新聞記者吉野賢三の取材を受けて、貞子との不可思議な日々を思い出し、悪夢を再発する。当時貞子と遠山との交情の録音テープを聴いた5人がすべて、時間差こそあれ心臓病で死んでいた事実が明らかとなる。しかも、その録音テープは、貞子本人の念写によるものだった。貞子との交情を自分の耳で直に聞いている遠山にも死が迫る。期せずして、心臓病で路傍に行き倒れる47歳の遠山は、高野舞の子宮を通して再生した昔と全く変わらない若い貞子に抱かれて死ぬ。それは遠山の願いを果たすことでもあった。
・24年前の劇場・音効室にあった神棚の臍の緒は、一体誰の臍の緒なのか? 流れから言えば、貞子の臍の緒ということになるのだろうが、貞子が自分の臍の緒を持ち歩く理由は何なのか?
映画「リングΦ(ゼロ)バースデイ」の原作

「ハッピー・バースデイ」  80ページ:
・「彼女は、ループとは子宮のようなものであると考える。」という一節がある。「リング」「らせん」「ループ」シリーズは、映画「マトリックス」(1999・2003)との近似性を云々する話があるが、著者の着想と作品世界の独創性は明らかであり、マトリックスに匹敵・凌駕するものと断言できる
・前作「ループ」で、高山竜司の生まれ変わりである二見馨は、現実世界での転移性ヒトガンウィルスの危機と、仮想現実空間「ループ」でのリングウィルスの危機を解決して、二つの世界を救うために自らの身を犠牲にした。本作では、仮想現実空間「ループ」に世界を救う<神>として転生・降臨した二見馨の高山竜司としての活躍ぶりを、彼の子を妊娠した杉浦礼子の目を通してレポートしている。現実世界での二見馨の死を知り、当初深刻なショックを受けた礼子は、戸惑いながら、その事実を受け入れていく。
・本作では、高山竜司は、タカヤマ(リュウジ)となり、山村貞子も、ヤマムラサダコという風に半ばウィルスを呼ぶように記号化されている。遺伝子のテロメアによるサダコ駆除の着想もなかなかよくできている。

※鈴木光司は、やはり優れた作家だ。何よりエンターテインメントとして素晴らしかった!

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