5月7日(火)
朝日デジタル:(社説)皇位の継承 国民の声踏まえ協議を
2024年5月7日 5時00分
皇族の数をどう確保し、皇位継承の安定につなげるか。近く各党の協議が始まる。
おおよその方向が見えている論点がある一方、根深い意見の対立もひそむ。憲法が定める国の重要な制度に関わる問題だ。広範な合意のないまま、数の力で押し切ることはあってはならない。
土台になるのは21年末の政府の有識者会議の報告書だ。
現状のままでは、将来、悠仁さま以降の世代で皇族がいなくなりかねないとして、(1)女性皇族が結婚後も身分を保持する(2)今は認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とする――の2案を示した。
これに対し社説は、男系男子による皇位継承に固執した案で、国民の幅広い理解を得られるものとは言いがたいと指摘してきた。
報告書を「妥当」とした自民党などの見解についても同じことがいえる。
たとえば、(1)の場合でも女性皇族の配偶者と子は皇族に加えないという。一般国民としての権利・義務を引き続き保持するためなどと説明するが、母方が天皇の血を引く女系天皇の芽を摘んでおこうという意図は明らかだ。
かたや、(2)によって皇族の養子になった者に男子が生まれれば、皇位継承資格を与えるとしている。
だがこうした考えは国民の意識と隔たりがある。朝日新聞の19年の世論調査(郵送方式)では、「女系天皇を認めてもよい」が74%で、男系維持の21%を大きく上回った。最近の共同通信の調査(同)も同様だった。
秋篠宮さまから悠仁さまへと続く継承順を変更するのは現実的ではない。しかし、その先も男系男子を墨守するのが「国民の総意」といえるのか、大いに疑問だ。
戦後70年以上民間で暮らした人を皇族とする(2)案に、社説はかねて疑義を唱えてきたが、仮にこの策を採ったとしても、皇室を苦しめてきた男子誕生の重圧は消えない。
一夫一婦制の下、男系男子で血筋をつなぐ考えに限界があるのは、歴史が教えるところだ。「皇室は国の礎」(自民党)などというが、制度の持続可能性を真剣に考えているのだろうか。
(1)(2)案とも、皇族や当事者の人生設計に大きな影響が及ぶ見直しになる。各人の意思を尊重し、皇籍の離脱・残留や縁組について強制にわたる行いがないようにすることにも意を砕く必要がある。
象徴天皇制は主権者である国民の支持があって初めて存立する。この基本に立って協議を進めなければならない。