もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

150215 衆参両院の「テロ非難決議」を非難する!「テロの本質」を真面目に語る政治家はいないのか!

 真面目に「テロの本質」を考えれば、その原因が、決して宗教の違いにあるのではなく、世界的に広がる富の偏在、極端な格差拡大、差別構造の継承、及びパレスチナ問題、それらによる<若者たちの絶望>にあることは、実は誰もがわかっていることだろう! それを「世界には凶悪なテロリストが大勢いて、こいつらを叩き潰せばテロが無くなる」なんて話に無理やりすり替えている。誰も、「テロの本質が、日本・世界の社会構造が抱える富の偏在・格差の拡大及びパレスチナ問題の<野放し状態>にこそある」という本質を語らないし、見させようとしない。そして、凶悪なテロリストへの恐怖ばかりを煽りたてている。これはまさにオーウェルの「一九八四年」の世界と同じだ。今回の国会の「テロ非難決議」に社民党・共産党まで加わっていたのには、あきれ果てた。「誰も本質を見ようとしない。」「武力で世界中の<絶望した若者たち>を封じ込めるべきではないし、不可能だ!」

秋原葉月さん「Afternoon Cafe」ブログから

※(1)「もちろん、普通の人間は戦争を望まない。しかし、国民を戦争に参加させるのは、つねに簡単なことだ。とても単純だ。国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には、何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ」byヘルマン・ゲーリング ※(2)いつの時代も大衆をファシズムに煽動する手口は同じ。なのに同じ手口に何度も騙されるのは過去に学んでいないから。格差を広げ、セイフティネットを破壊し、冷徹な自己責任論が横行する社会を継続させるのは簡単だ。今よりもっと格差を広げ、セイフティネットを破壊する政策をとればよい。そうすれば人々に自己責任論がもっと浸透し、草の根から勝手に右傾化してくれる。

辺見庸さんのブログから

・権力をあまりに人格的にとらえるのはどうかとおもう。口にするのもおぞましいドブの目をしたあの男を、ヒステリックに名指しでののしれば、反権力的そぶりになるとかんがえるのは、ドブの目をしたあの男とあまり変わらない、低い知性のあらわれである。権力の空間は、じつのところ、非人格的なのだ。だからてごわい。中心はドブの目をしたあの男=安倍晋三であるかにみえて、そうではない。ドブの目をしたあの男はひとつの(倒錯的な)社会心理学的な表象ではありえても、それを斃せば事態が革命的に変化するようなシロモノではない。権力には固定的な中心はなく、かくじつに「われわれ」をふくむ周縁があるだけだ。ドブの目をしたあの男は、陋劣な知性とふるまいで「われわれ」をいらだたせ、怒らせるとともに、「われわれ」をして社会心理学的に(かれを)蔑視せしめ、またそのことにより、「われわれ」が「われわれ」であることに無意識に満足もさせているのかもしれない。ところで、「われわれ」の内面には、濃淡の差こそあれ、ドブの目をしたあの男の貧寒とした影が棲んでいるのだ。戦争は、むろん、そう遠くない。そう切実にかんじられるかどうか。いざ戦争がはじまったら、反戦運動が愛国運動化する公算が大である。そう切実に予感できるかどうか。研ぎすまされた感性がいる。せむしの侏儒との「ふるいつきあい」がベンヤミンのなにかを決定した。そう直観できたアレントほどするどくはなくても、研ぎすまされた感性がいる。けふコビトがきた。ミスドにいった。(2015/11/11)

12 022 和田秀樹「「自分から勉強する子」の親の言葉 男子編」(2017:大和書房)感想3+

2023年08月13日 02時27分00秒 | 一日一冊読書開始
8月12日(土):  

239ページ    所要時間4:35    ブックオフ220円

著者57歳(1960生まれ):

著者は多くの本を書いているが、突出した著作はない。一方で、全くの駄作もあまりない。
大体感想3~4が多い。本書の内容も、ほぼ常識+αの内容だった。読みやすかったし、
古本としてはまずまずの本だった。
巻末の「おわりに」で名前は伏せられているが、世襲政治屋安倍馬鹿の存在によって山口県
の受験学力が凋落したことが、指摘されたいた。「やはりそうだったか」の思いと、著者の
コモンセンスに対する信頼が高まった。

【内容紹介】「毎日遊んでばかりでちっとも勉強しない」「姿勢も悪いし、ノートも汚い。やる気があるのかしら」「どうすれば、勉強が好きになってくれるの?」だからといって、「勉強しなさい!」と怒鳴っても、意味がないのは、みなさん、ご存知ですね。では、どうすればいいのか?本書でじっくりお伝えします。

230611 朝日新聞(社説)改正入管法成立 信頼回復への険しい道のり

2023年06月12日 01時08分38秒 | 時代の記憶
6月11日(日):
朝日新聞(社説)改正入管法成立 信頼回復への険しい道のり
2023年6月10日 5時00分

 どんな国籍や民族であろうとその人の尊厳を重んじて遇し、保護すべき人は確実に守る。そんな入管行政への転換はいつ実現するのだろうか。
 外国人の収容・送還のルールを変える改正出入国管理法が、きのう成立した。審議の過程で難民認定や収容の現場での耳を疑うような問題が表面化したさなかの幕引きだった。
 法務・入管当局に向けられた社会の不信は深まったままだ。法案を押し切った政府と、参院で採決を強行した与党、行動をともにした維新、国民民主の責任はきわめて重い。
 ■見失われた原点
 法案の原点は、長崎県内の入管施設に収容中のナイジェリア人男性が19年、長期収容に抗議しハンストした末に餓死した、あってはならない死だった。
 刑事手続きの逮捕・勾留と違い、入管の収容に裁判所の許可は不要で、数年に及ぶこともある。07年からの14年間で、入管施設では17人が死亡していた。
 入管が人権保障の行き渡らない場であっていいはずはなく、入管行政のあり方を根底から問い直すべき局面だったはずだ。
 ところが、有識者の専門部会の議論を経て政府がつくった法案は、「送還を拒み、難民申請を繰り返す人々」の対策に焦点をあてていた。
 難民申請中の人は送還しない現在の規定は、法改正で、3回目の申請以降は適用外となる。その一方、適正手続きの保障の観点から多くの国が採る、収容や延長の可否に裁判所などが関与するしくみは入れなかった。
 在留を望む外国人を受け入れるかどうかの判断は、その国の事情や政策にもかかわり、どの国にとっても簡単ではない。ただし、少なくとも普遍的な人権という価値に立脚していることが厳正に求められている。
 法案が最初に提出された21年と再提出の今年のいずれも、国連人権理事会の特別報告者らは「国際人権基準を満たしていない」と見直しを求めた。法務・入管当局は「法的拘束力はない」と、取り合わなかった。
 収容や難民認定など、人の生命や自由にかかわることを、当局だけで決めるしくみが、さまざまな問題の根底に横たわっている。
 ■難民認定への疑義
 改正法の下では、保護すべき人は2回の申請までに難民認定することが必須になる。ところが、現状の認定手続きはそうなっていない疑義が、審議を通して強まった。
 難民と認定するかどうかは、まず入管が判断し、不服の申し立てがあれば民間有識者の難民審査参与員が3人1組でチェックしたうえで法相が最終判断する、という2段階で行われる。
 法務・入管当局は「申請者に難民はほとんどいない」といった参与員らの発言を法改正の根拠としてきた。だが、入管が迅速処理していいと判断した案件を一部の参与員にまとめて審査させている運用がわかり、難民認定の公正さが揺らいでいる。
 不認定が争われた行政裁判では、昨年までの5年間で109件中104件は国が勝訴したことを、斎藤健法相は適切な運用の象徴として挙げてきた。しかし、迫害のおそれのある国に誤って帰したら取り返しがつかない問題であり、裁判所が5件も不認定の取り消しを命じたことを重く見るべきだ。今年に入ってからも、不認定を取り消す判決がすでに複数出ている。
 立場が不安定な当事者が裁判を起こすこと自体難しいことにも思いをいたす必要もある。
 ■不信は解消できるか
 4月に衆院の参考人に招かれた研究者が「法案を通すことは、無辜(むこ)の人間に対して間接的に死刑執行ボタンを押すことに等しい」と強い懸念を表明したことを忘れることはできない。
 野党が政府法案の対案に盛り込んでいた、政府から独立した委員会による難民認定制度の導入の検討を続けていくべきだ。
 当事者の利益になりうる部分も、改正法にないわけでない。非正規滞在になっても収容せずに退去手続きを進め、家族や知人が監理人となって社会で過ごす「監理措置」という新制度を設けた。「原則収容」からの転換を進められるかが問われる。
 監理人は本人の行動について届け出ることを求められ、支援団体などを対象にしたNPOの調査では「なれない・なりたくない」との答えが多かった。市民の協力を得られやすい運用にすることが不可欠だ。
 法相による「在留特別許可」を、本人自ら申請できるようにもなった。すでに生活基盤がある人の在留を積極的に正規化していくべきだ。日本で生まれ育ったのに、両親に正規の在留資格がないため自らも退去を求められている子どもたちも少なくない。長じて言葉も分からない国籍国に帰すことが人道上、許されるとは考えられない。
 改正法をどう使うか、今後の入管行政に注がれる目はこれまで以上に厳しい。それぞれを人として尊ぶ実務を重ね、信頼を取り戻していくしかない。

230415 岸田事件に思う。安倍銃殺事件は、大塩平八郎の乱になってしまったようだ。

2023年04月15日 13時04分32秒 | 今、思うこと&意見
4月15日(土):

1時間ほど前(午前11時30分頃)から、和歌山の演説会場で岸田首相に爆発物が投げられたと
騒動になっている。

昨年7月の安倍元首相銃殺事件の余波だろう。本質的な解決に取り組まず、お茶を濁して
愚かな国葬までやってきたことの答えが、これだ。岸田自民党は、あの事件の背景を無か
ったことにしたかったのだろうが、この10年の安倍政治によって多くの人々の生活が狂わ
され、破壊されてきた問題は厳然として存在しているのだ。自民党やその追随勢力(公明、
維新)にはその反省がないので、今後も事態は変わらない。最悪、常習化していくだろう。

昨年の安倍銃殺事件が、江戸時代の大塩平八郎の乱(1837)と重なって見えてきた。天保の
大飢饉の中、体制維持をはかって人々を見捨てた幕府に対して起こされた小さな反乱だった
が、瞬く間に影響が全国に広がり、各地で同様の事件が頻発していった。幕府は水野忠邦
という小者が天保の改革と称して人々への取り締まりを強化したが、すぐに失敗に終わった。

その後、黒船来航。大きな変化に対応する能力を欠いた幕府は消えて、近代国家を目指す
極めて好戦的な薩長の新政権に切り替わった。

今の岸田自民の政治では、統一教会問題一つをとってもまじめな改革は期待できず、類似
した事件は起こり続けるのだろう。世の中の不満のマグマが高まっていることと、その
不満の表出の仕方としてテロリズムがありうることを昨年の安倍銃殺事件は証明してしま
った。これから数年、十数年?日本はテロルの時代に入ったのかもしれない。

230414 内田樹の研究室「安倍政治を総括する 2022-09-01 jeudi」

2023年04月15日 02時47分17秒 | 時代の記憶
4月14日(金):転載。きちんとものを見て表現できる人。俺の思いもほぼほぼ適切に表現されている。
内田樹の研究室「安倍政治を総括する 2022-09-01 jeudi」
日刊ゲンダイに標記のような寄稿を依頼された。いまさら総括でもないけれど、とりあえず言いたいことを書いた。 
 この10年間で日本の国力は劇的に衰えた。
 経済力や学術的発信力だけではない。報道の自由度、ジェンダーギャップ指数、教育への公的支出の対GDP比ランキングなどは「先進度」の指標だが、そのほとんどで日本は先進国最下位が久しく定位置になっている。
 だが、「国力が衰えている」という国民にとって死活的に重要な事実そのものが(報道の自由度の低さゆえに)適切に報道されていない。安倍時代が残した最大の負の遺産は「国力が衰微しているという事実が隠蔽されている」ということだろう。
 国力はさまざまなチャートでの世界ランキングによって近似的には知られる。1995年世界のGDPで日本は17・6%だったが、現在は5.6%である。1989年の時価総額上位50社のうち日本企業は32社だったが、現在は1社。経済力における日本の没落は顕著である。だが、日本のメディアはこの経年変化についてはできるだけ触れないようにしている。だから、多くの国民はこの事実そのものを知らないか、軽視している。それどころか、政権支持者たちは安倍政権下でアベノミクスが成功し、外交はみごとな成果を上げ、日本は世界的強国であるという「妄想」のうちに安んじている。
 安倍時代における支配的なイデオロギーは新自由主義であった(今もそうである)。すべての組織は株式会社のような上意下達組織でなければならない。「選択と集中」原理に基づき、生産性の高いセクターに資源を集中し、生産性の低い国民はそれにふさわしい貧困と無権利状態を甘受すべきだ。そう信じる人々たちが法案を作り、メディアの論調を導いて来た。
 その結果がこの没落である。だが、誰も非を認めない。すべては「成功」したことになっている。それは、政権与党が選挙に勝ち続けたからである。安倍元首相は6回の選挙に勝利した。しばしば圧勝した。それは「国民の過半は安倍政権が適切な政策を行ってきたと判断した」ことを証し立てていると政府は強弁した。
 たしかに株式会社ではトップに全権が与えられる。トップのアジェンダに同意する社員が重用され、反対する社員ははじき出される。それが許されるのは、経営の適否についてはただちにマーケットが過たず判定を下すと信じられているからである。「マーケットは間違えない」というのはビジネスマンの揺らぐことのない信仰である。社内的にどれほど独裁的な権力をふるう経営者であっても、収益が減り、株価が下がれば、ただちに退場を命じられる。
 国の場合であれば「国際社会における地位」が株価に相当するだろう。経済力、地政学的プレゼンス、危機管理能力、文化的発信力などで国力は表示される。その点で言えば「日本株式会社の株価」は下落を続けている。しかし、安倍政権下で経営者は交代させられなった。もし、経営が失敗し、株価が急落しているにもかかわらず、経営者が「すべては成功している」と言い続け、それを信じた従業員たちの「人気投票」で経営者がその座にとどまりつづけている株式会社があったとすれば(ないが)、それが今の日本である。
 新自由主義者たちは「マーケットは間違えない」と言い張るが、彼らが「マーケット」と言っているのは国際社会における評価のことではなく、選挙結果のことなのである。選挙で多数派を占めれば、それはすべての政策が正しかったということなのだと彼らは言い張る。
 だが、選挙での得票の多寡と政策の適否の間には相関はない。亡国的政策に国民が喝采を送り、国民の福利を配慮した政策に国民が渋面をつくるというような事例は枚挙にいとまがない。政策の適否を考量する基準は国民の「気分」ではなく、客観的的な「指標」であるべきなのだが、安倍政権下でこの常識は覆された。
 決して非を認めないこと。批判に一切譲歩しないこと。すべての政策は成功していると言い張ること。その言葉を有権者の20%が(疑心を抱きつつも)信じてくれたら、棄権率が50%を超える選挙では勝ち続けることができる。
 安倍政権が最終的に終わったのはパンデミック対策に失敗したからである。人間相手なら「感染症対策に政府は大成功している」と言って騙すことはできるが、ウイルスに嘘は通じない。科学的に適切な対策をとる以外に感染を抑制する手立てはない。
 安倍政権下で政権担当者たちは「成功すること」と「成功しているように見えること」は同じことだと本気で信じ始めていた。だから、「どうすれば感染を抑えられるか」よりも、「どうすれば感染対策が成功しているように見えるか」ばかりを気づかった。東京五輪の強行に際しても、「感染症が効果的に抑制されているように見せる」ことが優先された。それを有権者が信じるなら、それ以上のことをする必要はないと思っていたのだ。今の岸田政権もたぶんそう思っている。
 パンデミックについても、気候変動についても、東アジアの地政学的安定についても、人口減少についても、トランス・ナショナルな危機に対してこの10年間日本はついに一度も国際社会に対してついに指南力のあるビジョンを提示することもできなかった。
 司馬遼太郎は日露戦争から敗戦までの40年間を「のけて」、明治の日本と戦後の日本を繋ぐことで敗戦後の日本人を自己嫌悪から救い出そうとした。その風儀にならうなら、安倍時代という没落の時代を「のけて」、10年前まで時計の針を戻して、そこからやり直すしかない。 (2022-09-01 11:20)


230402 内田樹の研究室「岸田政権は何をしようとしているのか 2023-04-02 dimanche」

2023年04月03日 02時25分09秒 | 時代の記憶
4月2日(日):転載。こんなに見え透いた状況下で、何も変えられない、変えようとしない日本は異常だ。

内田樹の研究室岸田政権は何をしようとしているのか
 2023-04-02 dimanche
ある媒体からインタビューのオファーがあった。岸田政権の新年度予算成立を受けて、「なぜ政権はこれほど性急に防衛予算の拡大に進むのか」について訊かれたので、次のように答えた。     

 今回の防衛費増額の背景にあるのは岸田政権の支持基盤の弱さだと思う。
 彼にとって喫緊の課題は二つだけである。一つは国内の自民党の鉄板の支持層の期待を裏切らないこと。一つは米国に徹底的に追随すること。日本の将来についての自前のビジョンは彼にはない。
 今回の防衛予算や防衛費をGDP比2%に積み上げるのも、米国が北大西洋条約機構(NATO)に求める水準に足並みをそろえるためであって、日本の発意ではない。日本が自国の安全保障戦略について熟慮して、必要経費を積算した結果、「この数字しかない」と言ってでてきた数字ではない。アメリカから言われた数字をそのまま腹話術の人形のように繰り返しているだけである。
 国民がこの大きな増額にそれほど違和感を覚えないで、ぼんやり傍観しているのは、安全保障戦略について考えるのは日本人の仕事ではないと思っているからである。
 安全保障戦略は米国が起案する。日本政府はそれを弱々しく押し戻すか、丸呑みする。戦後80年、それしかしてこなかった。その点では日本政府の態度は戦後80年一貫しており、岸田政権は別に安全保障政策の「大転換」したわけではない。政権によって米の要求に従うときの「おもねりかた」の度合いが多少違うだけであり、そこにはアナログ的な変化しかない。だから、国民は誰も驚かないのである。
 岸田首相の党内の政権基盤は決して堅牢なものではない。だから、長期政権をめざすなら、米国からの「承認」がその政治権力の生命線となる。ホワイトハウスから「米国にとってつごうのよい統治者」とみなされれば政権の安定が保証されるし、少しでも「米国に盾突く 」そぶりを示せば、たちまち「次」に取って替わられ、政権は短命に終わる。
 岸田政権にはとりわけ実現したい政策があるわけではない。最優先するのは「政権の延命」だけである。喩えて言えば、船長が目的地を知らない船のようなものである。自公連立政権という「船」を沈めないことだけが目下の急務であり、岩礁や氷山が目の前にきたら必死に舵を切って逃げる。だが、どこに向かっているのかは船長自身も知らない。
「国民の声を聴く」とか「個性と多様性を尊重する」とか「新しい資本主義」とか公約を掲げていた時は、首相になれば少しはこのシステムをいじれると思っていたのだろうが、実際に船長になってみたら「お前が動かしてよい舵輪の角度はここからここまで」と言われ、ほとんど政策選択の自由がないことを思い知らされた。
 今回の防衛予算の積み上げも、まず米国からの要求があり、それに合うように予算が組まれ、さらにその予算枠に合うように、「中国や北朝鮮の脅威」なる「現実」が想定されている。
 ふつうの国なら、まず現実認識があり、それに基づいて国防戦略が立てられ、それに基づいて必要経費が計上されるのだが、今の日本はみごとにそれが逆立しているのである。
 日本政府が購入を決めたトマホークにしても、その前に「爆買い」したF35戦闘機にしても、米国内でははっきりと「使い物にならないほど時代遅れ(レガシー・プログラム)」の兵器とされている。
 中国との競争において、米国はAI軍拡で後れを取っている。もう大型固定基地や空母や戦闘機の時代ではない。AIに優先的に予算を投じるべきなのである。しかし、米国には軍産複合体という巨大な圧力団体があって、国防戦略に強い影響を及ぼしている。兵器産業にいま大量の在庫が残されている以上、それを処理しなければならない。だから、それを日本に売りつけるのである。日本に不良在庫を売りつけ、それで浮いた金を軍のヴァージョンアップに投じる。そういう「合理的な」メカニズムである。
 不良在庫を言い値で買ってくれるのだから、米国にしてみたら日本の自公連立政権ほど「使い勝手のよい」政権はない。だから、この政権が半永久的に続いてくれることを米国が願うのは当然なのである。
 日本国民は属国身分にすっかり慣れ切っているので、自国の政権の正統性の根拠を第一に「米国から承認されていること」だと思い込んでいる。「国民のための政治を行っていること」ではないのである。
 米国に気に入られている政権であることが何よりも重要だと日本国民自身が思い込んでいる以上、日本人が岸田政権に不満を持つはずがない。
 だから、岸田政権が防衛増税を進めても、インボイス制度やマイナンバーカードなどで、国民の負担を増大させても、国民はデモもストライキもしない。それは国民自身が「政府というのは、国民の生活のために政策を実施するものではない」という倒錯に慣れ切ってしまっているからである。
「政府はアメリカと、国内の鉄板支持層の方を向いて、彼らの利益を計るために政治をしている」ということを国民は知っている。でも、「政治というのは、そういうものだ」と諦めている。そうやって政府に対する国民の期待を下げれば下げるほど、棄権率は高まり、結果的に20%の鉄板支持層を持つ自民党が選挙には勝ち続けることができる。実際に、これからも自民党は選挙に勝ち続けるだろう。コアな自民支持層があり、浮動層の半数が「自民党以外に選択肢はない」と思っている以上、政治が変わるはずがない。
 問題は「政治はこれからもまったく変わらない」という諦念が広がると、国民の中から、このシステムを主権国家としてのあるべき姿に生き返らせることよりも、この不出来なシステムをどう利用するかをまず考える人たちが出てくることである。このシステムにはさまざまな「穴」がある。それを利用すれば、公権力を私的目的に用い、公共財を私財に付け替えることで自己利益を最大化することができる。今の日本がろくでもない国であることは自分にもよくわかっている。でも、そのろくでもない国のシステムのさまざまな欠陥を利用すれば簡単に自己利益を増すことができる。それなら、システムを復元するよりも、システムの「穴」を活用する方がいい。
 彼らはシステムを「ハック(hack)」する。死にかけた獣に食らいつくハイエナのように。彼らはこの獣がまた甦って立ち上がることを全く望んでいない。できるだけ長く死にかけたままでいることが彼らの利益を最大化するからである。今の日本では、そういう人たちが政権周りに集まり、メディアで世論を導いている。
 一方にはそれとは違う考え方をする人たちもいる。このシステムの内側で生きることを止めて、「システムの外」に出ようとする人たちである。地方移住者や海外移住者はその一つの現れである。彼らもまたもうこのシステムを変えることはできないと諦めている。そしてシステムの外に「逃げ出す(run)」ことを選んだ。
 若い人はいま二者択一を迫られている。hack or run。その選択がいま日本の若者に突きつけられている。そして、ここには、「システムの内側に踏みとどまって、システムをよりよきものに補正する」という選択肢だけが欠落している。(3月29日)(2023-04-02 09:47)

230216 永田町の裏を読む この卑劣漢ぶりは一体何なのだろうか。

2023年02月16日 19時00分27秒 | 時代の記憶
2月16日(木): 
いまや永田町は骸骨や亡霊が跋扈する「ゾンビ村」と化しつつある 永田町の裏を読む
2023/02/15 日刊ゲンダイ

 先週発売された「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)で安倍晋三が「財務省が私を引きずり下ろそうと画策した」、森友学園事件も「私の足をすくうための財務省の策略の可能性がゼロではない」と語っているのを知って、背筋が凍る思いがした。
 犯罪スレスレの疑惑を数々まといながら、「ああ言えばこう言う」ふうに言い逃れをし、それも面倒くさくなれば国会も記者会見も開かずに質問される機会を消し去ってしまうのが彼の常套手段であるとは認識していたが、ただ逃げるだけではなくて、窮鼠猫を噛むではないけれども、自分と妻の犯罪的失態を財務省の陰謀のせいにして自己正当化しようとするこの卑劣漢ぶりは一体何なのだろうか。
 それを自民党のベテラン秘書に問うと、彼の答えがふるっていた。
「あのね、いま永田町は岸田文雄村長の下で骸骨や亡霊や透明人間が跋扈する『ゾンビ村』と化しつつあるんですよ」と、こう続ける。
「岸田は安倍を国葬に付して無事送り出したつもりだったけれども、安倍はその程度では成仏しないで、『俺を撃ったのは山上徹也だが、財務省だって俺を殺そうとしたんだよ』とか恨み言をつぶやきながらこの辺を彷徨っている。そういうのをビシッと抑えて追い払うのが長老級の役目だが、麻生太郎も菅義偉もゾンビで、いずれも1年で首相の座を追われたのが悔しくて、あわよくば『もう一度』と魂を中空に漂わせている。二階俊博は年老いて、もはや自ら事を起こす気力がなく靄のように地面を這っているありさまだ」
 何だかんだ厳しい内部批判をしながらも何十年も自民党に仕えてきた秘書氏にしては、珍しく暗い物言いではないか。
「うーん。私が最初に仕えたのは田中派で、これは良いも悪いもあっけらかんと明るくて気持ちよかった。次に付き合った宏池会はみな知的で、きちんと説明できないようなことはしないという毅然とした気風があった。だから私は自民党というのはそういうものだと思って仕事をしてきた。そうでなくなってきたのは、やはり第2次安倍政権の8年間を通じてではないか。一言でいうと陰険になった。キチンと説明しない。ヤジるのは得意だが議論するのは苦手。他人のせいにして逃げて、責任を取らない。こういうのが『安倍文化』で、それが今も永田町を暗雲のように覆っているのですよ」とのことだ。


高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。

230210 #ブラックボックス共産党

2023年02月11日 00時01分56秒 | 今、思うこと&意見
2月10日(金):

また孤立したいのか? 市民の支持はもういらないのか?

朝日新聞(社説)共産党員の除名 国民遠ざける異論封じ
2023年2月8日 5時00分

 党勢回復に向け、党首公選を訴えた党員を、なぜ除名しなければいけないのか。異論を排除するつもりはなく、党への「攻撃」が許されないのだと言うが、納得する人がどれほどいよう。かねて指摘される党の閉鎖性を一層印象づけ、幅広い国民からの支持を遠ざけるだけだ。
 共産党本部の政策委員会で安保外交部長も務めたジャーナリストの松竹伸幸氏が一昨日、党を除名された。党トップの委員長を全党員による投票で選ぶことなどを提案した「シン・日本共産党宣言」の出版からわずか半月余り。党規約で「警告」「権利停止」「機関からの罷免(ひめん)」の上の最も重い処分だ。
 委員長は現在、2、3年に1度開かれる党大会で選出された中央委員会が決めることになっている。松竹氏は、開かれた党首選を行うことで、「異論を許さない怖い政党」という国民の見方が変わり、共産党を含む野党共闘への不安感も和らぐのではないかと指摘。他の野党が懸念する安保・防衛政策についても、その機会に議論を深めることができるとした。
 朝日新聞も昨年7月、共産党の結党100年にあたっての社説で、多様性を重視する若い世代をひきつけるには、「誤りを認めない無謬(むびゅう)主義や閉鎖的な体質から脱却する必要がある」として、党首選が「党を開く改革」になると主張した。
 共産党は、党首選は「党内に派閥・分派はつくらない」という民主集中制の組織原則と相いれないという立場だ。激しい路線論争が繰り広げられていた時代ならともかく、現時点において、他の公党が普通に行っている党首選を行うと、組織の一体性が損なわれるというのなら、かえって党の特異性を示すことにならないか。
 もっとも、今回の除名は党首公選など主張の中身ではなく、「党に敵対する行為はおこなわない」「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」などの党規約に背く「重大な規律違反」が理由とされる。
 小池晃書記局長は「共産党は意見を言う自由は認められている。問題は党の中で述べることなしに、突然攻撃してきたことが重要」と語った。しかし、党のあり方を真剣に考えての問題提起を、一方的に断罪するようなやり方は、異論を許さぬ強権体質としか映るまい。
 一般の党員や党所属の地方議員らが、どう受け止めるのかは、わからない。ただ、党内の結束が保てたとしても、これまで共産党の政策や活動に理解や共感を示してきた、党員以外の有権者や知識人の心が離れるなら、党勢は細るばかりだと思い知るべきだ。

230205 毎日新聞:中村哲さんら手がけた緑の農地、死去後も拡大続く アフガン東部

2023年02月05日 09時38分28秒 | 日記
2月5日(日):  中村哲さんの襲撃現場近くに建てられた碑を訪れた村上優会長(左から3人目)らペシャワール会メンバーと、現地のPMS職員ら=アフガニスタン東部ジャララバードで2022年12月29日(同会提供)
毎日新聞中村哲さんら手がけた緑の農地、死去後も拡大続く アフガン東部
2023/2/3 07:00(最終更新 2/4 05:18)

 農地は広がり、暮らしが水で潤っていた――。アフガニスタンで医療などの人道支援にあたる福岡市のNGO「ペシャワール会」のメンバーが2022年末、現地を訪れた。19年に現地代表で医師の中村哲さん(当時73歳)が凶弾に倒れた後、会の日本人メンバーが訪れるのは初めて。農地での収穫作業や新たな用水路建設を目指す場所などを視察した村上優会長は「水が流れるまちで人が暮らす光景は『平和』そのもの。中村哲のスピリッツ(精神)が息づいていることが感じられた」と語った。

ペシャワール会が現地で確認
 村上会長らがアフガンを訪れたのは10年が最後。その後は治安の悪化やビザ(査証)の発給停止などで訪問できず、中村さんだけが現地に残って活動を続けてきた。19年12月に中村さんが襲撃され亡くなった後は、現地の実動組織である「平和医療団(PMS)」の職員とオンラインでやり取りし、写真や動画で事業の進捗(しんちょく)状況を確認してきた。
 現地の長老から歓待され、握手を交わすペシャワール会の村上優会長(手前左)=2022年12月26日(同会提供)
 今回は現地の治安状況が落ち着いたことを受け、村上会長や藤田千代子・PMS支援室長ら8人が22年12月中旬にパキスタン経由でアフガンに入り、約2週間滞在した。アフガン東部のナンガルハル州ジャララバードで22年10月に完成した、中村さんの顔写真が掲げられた記念碑を訪れたほか、医療や農業、かんがい事業の現場を視察して回った。

 村上会長は「集落に水が届き、子どもが走り回り、バザール(市場)が並ぶ様子を見て、随所で中村哲が言っていた通りの『平和』を感じることができた」と話す。用水路の開通で潤った集落を訪れると、長老から歓待されたという。

果樹や麦、養蜂や牧畜も
 会はこれまで、中村さんが手がけたかんがい事業で約1万6500ヘクタールが農地になったとしてきたが、中村さんの死後も農地は広がり、約2万4000ヘクタールになっていることが分かった。琵琶湖(滋賀県)の面積の3分の1超に当たる耕地にサトウキビやミカン、麦が実り、養蜂や食用子牛の飼育もされていた。

 メンバーは新たな用水路建設の候補地も視察し、実務的な打ち合わせや、水流などを確認するテストも実施した。病院設備を拡大したいという提案も現地の職員からあり、今後検討していく。村上会長は「現地との人的交流を増やし、事業を続けていこうという気持ちを改めて強くした。なかなか手が差し伸べられない地への支援をこれからも続けていきたい」と話している。【山口桂子】

230129 再掲: 180515 日刊ゲンダイ:鈴木邦男氏が明言 「私は愛国者」「国のため」と声高に言う人は偽物 ※すごく当たり前のこと!(もみ)

2023年01月29日 11時17分35秒 | 日記
1月29日(日): 鈴木邦男氏のご冥福をお祈り申し上げます。

2018年05月15日 22時33分42秒 | 時代の記憶

2018年)5月15日(火):   「今の政権には反省がない」と鈴木邦男氏(C)日刊ゲンダイ
日刊ゲンダイ鈴木邦男氏が明言 「私は愛国者」「国のため」と声高に言う人は偽物 注目の人 直撃インタビュー 2018年5月14日 

本当に自信があれば謙虚になれるはず
  世の中が右傾化しているといわれる。安倍政権を支持する勢力には、排外主義をあらわにする極右的な思想の持ち主も少なくない。政権側も右翼的な政策を推し進めてきた。安倍政権の5年間で日本はどう変わったのか。今後、どうなるのか。民族派右翼の重鎮、「一水会」元最高顧問の鈴木邦男氏に話を聞いた。
  ――安倍政権や、そのコアな支持層は果たして「右翼」なのでしょうか。保守というより反動のようにも感じますが。
  今の政権には反省がない。歴史を見る目がないというか、直面する勇気がないんでしょう。それは保守的な態度ではないと思います。例えば、東京裁判を見直すという。見直してどうするのか。もう一度、戦争をするとでもいうのでしょうか。
  ――ヘイトスピーチや排外主義的なデモも目立つようになりました。
  僕は日本が好きだけど、そんなに立派な国だとは思っていない。どうしようもない失敗もしてきましたからね。それでもこの国が好きだと思うのが本当の愛国心ではないですか。今は政権中枢が率先して「侵略も虐殺もなかった」と過去から目をそらし、歴史をフィクションで糊塗しようとしている。民族間の憎悪をあおり、韓国や中国をバカにした本が書店に並ぶ。韓国を褒めたり、日本政府を批判すれば、非国民のように叩かれる。そんなものは愛国心でも何でもありません。
  ――安倍政権イコール国ではないのに、ちょっとでも政府を批判すると、国賊扱いですからね。
  しかし、「国のため」とか「私は愛国者」とか声高に言う人は偽物だと思いますよ。そういうのは、心の中で思っていればいい。行動を見て、周りが判断すればいいのです。外に敵をつくって支持を固めるのは、運動家の常套手段。政府や政党がそれをやるべきではない。
  ――この春から、小学校で「道徳」が教科化され、道徳心や愛国心に成績がつけられます。どうやって愛国心の有無を判断するのでしょう。
  愛国心に右翼も左翼もない。周りに迷惑をかけず、人に優しくしている人が一番の愛国者です。無理して「日本は素晴らしい」と言わなくてもいいと思う。物を贈る時も「つまらないものですが」と言ったり、愚妻や愚息という言い方をするのが日本の精神ですよね。本来は謙虚な文化なのに、今は自分で自分を褒めてしまう。自国のことも「愚国」「弊国」くらい言ってもいいのにね。会社だって、弊社と言うでしょ。本当に自信があれば、謙虚になれるはずですよ。
  ――そういうことを言うから、「自虐的だ」と右翼界隈から目の敵にされる?
  僕は母が宗教団体の「生長の家」に出入りしていた関係で、青春時代は生長の家の運動に情熱を燃やし、今の日本会議の連中とも一緒に学生運動をやっていた。対立して追い出されたけど、今はよかったと思っている。あのまま日本会議にいたら、視野狭窄になっていたでしょうね。
  ――日本会議の運動は、左翼に対する敵視が凝縮されたものに見えます。鈴木さんも「サヨクに転向した」と批判されていますね。 
  右でも左でも、同じ考えの人が集まると暴走する。批判は排除され、過激なことを言う人が支持を集めます。アナキストの竹中労の「人は弱いから群れるのではない。群れるから弱くなるのだ」という言葉を聞いた時、僕は最初、意味が分からなかった。「何言ってるんだ、弱いから群れるのだろう」と思っていた。でも、やはり群れるから無力になるんだということが分かってきた。
  ――日本会議は安倍政権を支える一大勢力基盤だといわれ、集団的自衛権の行使容認も、憲法改正も日本会議の悲願だと聞きます。
  彼らは「三島事件」の絶望を味わっている。三島由紀夫が憲法改正を求めて自衛隊に決起を呼びかけ、後に自決したことがトラウマになっているのです。安倍政権の間にしか憲法改正のチャンスはないから、何としても成し遂げなければならないという強迫観念があるのでしょう。

自由のない自主憲法より、自由のある押し付け憲法
  ――現政権が目指す憲法改正についてはどう考えていますか。
  僕は、安倍首相の憲法改正には反対です。本来、憲法には夢や理想が必要なはずなのに、思想性もなく、ただ戦前に戻ろうとしているように見える。戦争であれだけの犠牲を払ったのに、教訓を生かせず、軍備を増強して国民の人権を抑圧するなんて愚かすぎます。僕は現行憲法は米国による「押し付け憲法」だと思っていて、自主憲法の制定には賛成だけど、自由のない自主憲法より、自由のある押し付け憲法の方がずっとマシだ
  ――改憲派は家父長制の復活を目指しているように感じます。
  夫が働き、妻は家に尽くして、子どもを産み育てるという戦前の構図をつくりたいのでしょう。個人の自由を抑圧するこのシステムは、為政者にとって都合がいい。そのうち選挙権も一家で一票という形にしたいのかもしれない。そういう家の集合体を統治するのが「国家」という大きな家であり、トップの言うことに国民は従うべしという考え方です。
  ――道徳を教科化するなど、愛国心を植え付ける教育方針も、国家への忠誠心を養うためですね。
  実は、三島由紀夫は自死の2年前に朝日新聞で「私は愛国心という言葉が嫌いだ」と書いていました。「愛というなら分け隔てないはずで、《人類愛》というなら分かるが、《愛国心》というのは筋が通らない。愛国心は、国境で区切られてしまう」というのです。三島は徴兵制にも反対していて、「国防は国民の名誉ある権利であり、徴兵制にすると汚れた義務になる」と言っていた。50年前の三島の言葉は、今の我々に向かって言っているように感じます。

歴史を学ばず反省がないから戦前に戻ろうとする
  ――愛国心は、上から強制するものではないということですね。
  韓国や中国に敵愾心を抱くとか、ヘイトスピーチの類いなんてのは愛国心とは別物です。1905年、日本が日露戦争に勝利した際、全権代表としてポーツマス条約の締結に臨んだ小村寿太郎外相は、賠償金も取れない勝利で帰国後に批判されることは分かっていた。しかし、「ここで戦争を終結させられるなら、帰国して殺されてもいい」「売国奴と罵られてもいい」という覚悟があった。こういう人が本物の愛国者でしょう。ところが、日本は日露戦争に「勝ったこと」にしてもらい、一等国に仲間入りして舞い上がってしまった。それで、ロシアよりはるかに強い米国に戦いを挑んでいった。愚かですよね。
  ――戦争を知らない世代ばかりになって、「戦争だけはしてはいけない」と言う政治家も減っているように感じます。
  反省がないから、戦前に戻ろうとする。慰霊は当然ですが、歴史を検証してただすのは危うい。天皇陛下は激戦地をめぐる慰霊の旅をなさっています。憲法も守っている。保守を名乗る人々が「憲法改正で天皇陛下を国家元首に」などと主張するのは、陛下のお気持ちをおもんぱかっているとは思えない。むしろ、ないがしろにしているのではないか。
  ――安倍政権が終われば、戦前回帰を望むような妙な空気は消えるのでしょうか。
  仮に安倍首相から次のトップに交代しても、自民党政権の間は“強い明治”への回帰路線は変わらないでしょう。国民もそれを求めているのだと思います。
  ――国民が求めている?
  自信を持てない人たちは、国家が強くなれば自分たちも強くなるような錯覚を抱いている。それで、「中国や韓国は許せない」と拳を振り上げたり、ゲーム感覚で「北朝鮮をやっつけろ」と戦争をあおるようなことまで言い出す。政治家は、そういう国民受けを狙って、強い言葉で隣国や外国人を非難するようなことを言えば愛国者として支持されると思っている。お互いの相乗効果で、憎悪にまみれた偽物の愛国心が幅をきかせているのが現状ではないでしょうか。
(聞き手=本紙・峰田理津子)
▽すずき・くにお 1943年福島県生まれ。早大政経学部卒。学生時代から右翼運動に関わり、72年に民族派右翼の「一水会」を結成。99年まで代表を務めた。著書に「新右翼<最終章>」「失敗の愛国心」「言論の覚悟 脱右翼篇」など。



12 002 おおたとしまさ「受験と進学の新常識」(新潮新書:2018)感想4

2023年01月04日 17時16分07秒 | 一日一冊読書開始
1月4日(水):  
222ページ      所要時間4:20      アマゾン323円(23+300)
著者48歳(1973、東京生まれ)。育児・教育ジャーナリスト。麻布中学・高校出身で、東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。中高の教員免許を持ち、リクルートから独立後、独自の取材による教育関連の記事を幅広いメディアに寄稿、講演活動も行う。著書は50冊以上。

著者がこれまで著した5~6冊の内容をコンパクトにまとめなおしたもの。そのうち何冊かを俺は読んでいる。例えば、塾歴社会や東大生と公文式の関係など。中学受験を中心に、高校受験、大学受験に対する思い込みと現実のずれについて気付かせてくれる。コスパは良いが、二番煎じなのでその分、熱は感じない。特に、終りの海外大学受験やインターナショナルスクールの話は、どうでもよかった。2021年の大学入試改革の行方に対する違和感の表明は、著者の目線の真っ当さを証明していると思う。たくさん付箋はしたので折に触れてまた見直していこうと思う。

【内容紹介】子供の受験が脳裏をかすめたら、真っ先に読むべき本
激変を続ける受験の世界。国公私立に海外進学、幾多の塾・予備校……親子の目の前に広がる選択肢は多様化の一方だ。いま勢いのある学校や塾は? 東大生の3人に1人が小学生でやっていたこととは? 受験に勝つ子の「3条件」とは? 東大医学部合格者の6割超が通った秘密結社のような塾がある……? 子供の受験・進学を考えるようになったら真っ先に読むべき入門書、誰も教えてくれない"新常識"が明かされる。

【目次】はじめに
序章 小・中・高のどこで受験すべきか:中学受験か高校受験か/不透明な内申点/東京23区では4人に1人が中学受験/中学受験をしない小学生がすべきこと/小学校受験をするのは何%?/教育費の差は最大3倍以上
第1章 勢いがあるのはどんな高校か?:「東大合格者数」の正しい読み方/公立"躍進校"の「塾並み」指導/親世代が知らない私立の躍進校/「偏差値バブル」のカラクリ
第2章 大学受験の塾・予備校選びの注意点:実際より2000人以上多い東大合格実績の謎/塾・予備校の合格者数は単純比較できない/成績が良ければタダ同然/たった半日の受講でも「合格者数1」/「特待生」の授業料は誰が負担?
第3章 最難関大学への"王道"あり:東大医学部の6割以上を占める塾/東大合格の秘訣は何か?/最難関中学受験でひとり勝ち「サピックス」/塾があるから学校は学校でいられる/「受験エリート」の3条件
第4章 9歳までの"最強"学習法:東大生の3人に1人が公文式を経験/受験強者がすくすく育つ/3学年先に進まないと意味がない/「魔法の教室」ではない
第5章 難関化する公立中高一貫校:早慶付属校に匹敵する難易度/「塾なしで大丈夫」は過去の話/「教科書+100~200%」の知識が必要/公立中高一貫校と併願しやすい私立
第6章 中学入試が多様化している:拡がる「思考力型入試」/国際バカロレアやPISAと共通の理論/「正解」ではなく「思考のレベル」を評価する/レゴブロックで
入試!?/「思考コード」で見る大学入試改革
第7章 私立大学付属校が人気になる理由:実はコスパがいい/付属校から他大へのハードルが下がる/日東駒専は今後人気に/内部進学基準に教育観が表れる
第8章 いま見直される男子校・女子校の教育:男子校・女子校はもはや絶滅危惧種/運動会でわかる男女の「集団」の違い/アメリカでの論争の結論は?/「ジェンダー・バイアス」が少ない/男子校・女子校は「オタク」の楽園?/ジェンダー論とは区別すべき
第9章 地方では公立高校が強い:東大、京大、国公立大医学部は同難易度/首都圏で中学受験文化が発展した理由/「都立復権」は本当か?/「母数」のトリック/格差是正のジレンマ
第10章 受験エリートでなくても医師になる方法:「東大」より医師免許/ハンガリーで医学を学ぶ/日本の偏差値は参考にならない
第11章 海外大学受験の実際:「純ジャパ」はむしろ有利/年収715万円以下なら学費免除/日本より過酷なアメリカの受験競争/月謝2万5000円の海外大学受験塾/海外大学進学なら海外でキャリアを
第12章 インターナショナルスクールにご用心:どこの国でも困らないように/比較的安価なインド系/「バイリンガルに育てる」はナンセンス
終章 大学入試改革の行方:センター試験が変わる/結局、トーンダウン/優秀な受験生には「ファストパス」/英語民間試験採用はどうなった?
おわりに


221227 わかりやすいクジラの利用イラスト図(KEIZINE様ブログより)

2022年12月27日 12時33分49秒 | その他
12月27日(火): 過去の歴史として「捕鯨」を考える。

ヒゲクジラ類:肉を加工したり刺身にしたり、食品としての利用が多いですね。ハリハリ鍋なんて食べたことないですが、美味しいんでしょうねー。



マッコウクジラ類:ヒゲクジラ類と違って工業製品が多いようですね。香水の原料で有名な龍涎香(りゅうぜんこう)もとれます。


12 001 おおたとしまさ「なぜ中学受験するのか?」(光文社新書:2021) 感想4+

2022年12月25日 20時03分26秒 | 一日一冊読書開始
12月25日(日):  

201ページ     所要時間3:15       図書館

著者48歳(1973生まれ)。東京都出身。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退。上智大学英語学科卒業。1997年、リクルート入社。雑誌編集に携わり2005年に独立後、いい学校とは何か、いい教育とは何かをテーマに教育現場のリアルを描き続けている。新聞・雑誌・Webへのコメント掲載、メディア出演、講演多数。中高の教員免許、小学校での教員経験、心理カウンセラーとしての活動経験もある。

著者は、教育関連(特に中学、高校受験)で、今最も手堅いジャーナリストである。これまで公文式や塾歴社会など様々な教育産業と社会の在り方を分析・報告して来たが、本書の内容は、一周回って中学受験の意義について俯瞰的に論じた内容になっている。決して、受験技術などを論じたものではない。中高一貫教育を、昔の旧制高校の伝統を引き継ぐ良き制度として捉えている。6・3・3制による高校受験は、子どもの健全な反抗期を邪魔するものになっている。中学受験を必ずしも強く推すわけではないが、子どもと親のやり甲斐ある冒険として位置付けられれば、それはそれで良き取り組みになる。

うまく内容を伝えることができないが、よくよく事情の分かった人間による中学受験に対する極めて常識的な内容がきちんと記されている。俺は、著者の考え方にほぼすべて同意することができる。

なお、本書には中学受験に関するテクニック的なことは書かれていないので、大局的に考えたい人が読むのが良いと思う。

【目次】はじめに
第 一 章  12歳でやるか15歳でやるか 〜中高一貫教育の意味
第 二 章 シラバスよりハビトゥス 〜私学に通う意味
第 三 章  バットを持つか鉛筆を持つか 〜塾で学ぶ意味
第 四 章 偏差値よりも生きる指針 〜親子で取り組む意味
おわりに
【内容紹介】延々とくり返されてきた中学受験の是非論に、気鋭の教育ジャーナリストがファイナルアンサー‼ 私立中高一貫校の六年間で得られるものは何か、中学受験勉強の約三年間で得られるものは何か……。著者曰く「そもそも中学受験にメリットもデメリットもない。むしろ中学受験で得られるもののうち、何をメリットと感じ、何をデメリットと感じるかにそのひとの教育観、幸福観、人生観などの価値観が表れる」。ただし「中学受験はやり方次第で良薬にも毒にもなる」とも。中学受験を良薬にする方法とはこれいかに……。膨大な取材経験を背景に、ときに歴史を遡り、ときに海外にまで視野を広げ、さまざまなジャンルの参考文献に触れながら、中学受験をする意味とそこから得られるものの正体を、壮大なスケールで描き出す。/発売直後から続々重版、5刷出来の中学受験小説『翼の翼』の著者・朝比奈あすかさん推薦! 「単純な中学受験の指南書というより、人がよく生きるためにはどうしたらいいかについて書かれた本」(朝比奈さん)

221219 岸田退陣、自民党カルト政権(創価学会、統一教会、神道)リセットの時。

2022年12月19日 00時13分24秒 | 時代の記憶
12月18日(日):
岸田内閣支持率25% 政権発足以降で最低 毎日新聞世論調査
12/18(日) 14:40配信

 毎日新聞は17、18の両日、全国世論調査を実施した。岸田内閣の支持率は25%で、11月19、20日の前回調査の31%から6ポイント下落し、2021年10月の政権発足以降最低となった。不支持率は69%で前回(62%)より7ポイント増加した。岸田文雄首相が防衛費増額の財源について、1兆円強を増税で賄う方針を示したことが支持率低下につながったとみられる。
  防衛費を大幅に増やす政府の方針については、「賛成」が48%で、「反対」の41%を上回った。「わからない」は10%だった。政府は防衛力強化のため、23~27年度の防衛費の総額を計43兆円とする。男女別でみると、男性は「賛成」が56%、「反対」が38%だったが、女性は「賛成」が35%、「反対」が46%だった。年代別でみると、50代以下は「賛成」が「反対」より多かったが、60代以上は「反対」が「賛成」を上回った。
  防衛費増額の財源として、増税は「賛成」が23%で、「反対」の69%を大きく下回った。社会保障費などほかの政策経費を削ることについては「賛成」が20%で、「反対」の73%を大幅に下回った。国債発行は「賛成」が33%、「反対」が52%だった。
  防衛費増額について「賛成」と回答した層でも、「増税」と「政策経費の削減」は、いずれも「反対」が5割を超えた。「国債発行」は「賛成」が5割を上回った。
  政府は防衛費増額に伴い、27年度時点で財源が約4兆円不足するとして、うち1兆円強を増税で賄う方針。残りの約3兆円については、歳出改革や、決算剰余金、税外収入などで賄うと説明している。
  政府が相手国のミサイル発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を決めたことについては、「賛成」が59%で、「反対」が27%だった。質問の仕方が異なるため単純に比較できないが、5月21日の調査では、保有について「賛成」は66%、「反対」は22%だった。
  政党支持率は、自民党25%(前回29%)▽日本維新の会12%(同12%)▽立憲民主党11%(同12%)▽共産党5%(同3%)▽れいわ新選組5%(同4%)▽国民民主党5%(同4%)▽公明党3%(同3%)▽NHK党2%(同1%)▽参政党2%(同3%)――などで、「支持政党はない」と答えた無党派層は29%(同26%)だった。
  調査は、携帯電話のショートメッセージ(SMS)機能を使う方式と、固定電話で自動音声の質問に答えてもらう方式を組み合わせ、携帯602件・固定411件の有効回答を得た。【伊藤奈々恵】

221012 政府は「“統一教会”解散命令請求」を真摯に受けとめ、実行せよ!

2022年10月12日 15時45分04秒 | 時代の記憶
10月12日(水):


 


221002 260万PV超:

2022年10月03日 11時38分34秒 | 閲覧数 記録
10月2日(日):  記録ですm(_ _)m。ブログの開設から4012日。

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 安倍国葬に便乗する統一教会の半旗(安倍はあの世で文鮮明と一緒にサタンと戦ってるそうだ)

9月27日(火)の国葬当日のメモ書きを掲載します。
安倍の国葬で、2~3万人と、そう多くはないが献花に並ぶ人々が感謝を述べる様子を見ていて、
「どうして?」と素朴に不思議に思い、ふと気が付いた。
「この中に統一教会、創価学会、日本会議等(神道系宗教団体)の人々が相当数いるのだ」と、
そう考えれば違和感がおさまる。軽く2万人ぐらいの動員はあるだろうし、それを見て影響される
自分で考えられない人々も大勢いるはずだ。そうだとすれば、むしろその数は少な過ぎるぐらいだろう。
安倍は死してなお虚偽の演出に使われている。<虚偽のピエロ政治屋>としては、まさに一貫している。
マスコミもわかっていて、見え透いた感動を押し付けてくる。簡単に騙される大衆がいる。騙される
ことを自己主張と勘違いしている馬鹿がいる。この国はガキンチョの国だ。
優れた指導者の出現を求め過ぎるのも危険だが、当たり前の原理・原則は守られる国であってほしい。

150329 タガ外せば歯止め失う 長谷部恭男・早稲田大学教授/「未来志向」は現実逃避 杉田敦・法政大学教授

 杉田 先日ドイツのメルケル首相が来日しました。戦後ドイツも様々な問題を抱えていますが、過去への反省と謝罪という「建前」を大切にし続けることで、国際的に発言力を強めてきた経緯がある。「建前」がソフトパワーにつながることを安倍さんたちは理解しているのでしょうか。  / /長谷部 そもそも談話が扱っているのは、学問的な歴史の問題ではなく、人々の情念が絡まる記憶の問題です。記念碑や記念館、映画に結実するもので、証拠の有無や正確性をいくら詰めても、決着はつかない。厳密な歴史のレベルで、仮に日本側が中国や韓国の主張に反証できたとしても、問題はむしろこじれる。相手を論破して済む話ではないから、お互いがなんとか折り合いのつく範囲内に収めようと政治的な判断をした。それが河野談話です。  / /杉田 談話の方向性や近隣との外交について「未来志向」という言い方がよくされますが、意図はどうあれ、それが過去の軽視という「見かけ」をもってしまえば、負の効果は計り知れない。安倍さんたちは、未来を向いて過去を振り払えば、政治的な自由度が高まると思っているのかもしれません。しかし政治の存在意義は様々な制約を踏まえつつ、何とか解を見いだしていくところにあります。政治的な閉塞(へいそく)感が強まる中で、自らに課せられているタガを外そうという動きが出てくる。しかし、それで万事うまくいくというのは、一種の現実逃避では。  / /長谷部 合理的な自己拘束という概念が吹っ飛んでしまっている印象です。縛られることによってより力を発揮できることがある。俳句は5・7・5と型が決まっているからこそ発想力が鍛えられる。しかし安倍さんたちは選挙に勝った自分たちは何にも縛られない、「建前」も法律も憲法解釈もすべて操作できると考えているようです。  / /杉田 俳句は好きな字数でよめばいいのだと。  / /長谷部 あらゆるタガをはずせば、短期的には楽になるかもしれません。しかし、次に政権が交代したとき、自分たちが時の政府を踏みとどまらせる歯止めもなくなる。外国の要求を、憲法の拘束があるからと断ることもできない。最後の最後、ここぞという時のよりどころが失われてしまう。その怖さを、安倍さんたちは自覚すべきです。 =敬称略(構成・高橋純子)朝日新聞『考論』

0015 オルテガ「大衆の反逆 (桑名一博訳;久野収解説)」(白水社イデー選書;1930)評価5

以下は、オルテガ所論の久野収による抜粋の抜粋である:///  オルテガによれば、政治のなかで「共存」への意志を最強力に表明し、実行していく政治スタイルこそ、自由主義的デモクラシーである。共存は、強い多数者が弱い少数者に喜んで提供する自己主張、他者説得の権利である。敵、それも最も弱い敵とさえ、積極的に共存するという、ゆるがない決意である。/その意味で、人類の自然的傾向に逆行する深いパラドックス(逆説)であるから、共存を決意した人類が、困難に面してこの決意を投げ出すほうへ後退したとしても、それは大きな悲劇ではあっても、大きな不思議とするには当たらない。/「敵と共存し、反対者と共に政治をおこなう」という意志と制度に背を向ける国家と国民が、ますます多くなっていく1930年代、オルテガは、「均質」化された「大衆」人間の直接行動こそが、あらゆる支配権力をして、反対派を圧迫させ、消滅させていく動力になるのだという。なぜなら、「大衆」人間は、自分たちと異類の非大衆人間との共存を全然望んでいないからである。略。///  「大衆」人間は、自分たちの生存の容易さ、豊かさ,無限界さを疑わない実感をもち、自己肯定と自己満足の結果として、他人に耳を貸さず、自分の意見を疑わず、自閉的となって、他人の存在そのものを考慮しなくなってしまう。そして彼と彼の同類しかいないかのように振舞ってしまう。/彼らは、配慮も、内省も、手続きも、遠慮もなしに、「直接行動」の方式に従って、自分たちの低俗な画一的意見をだれかれの区別なく、押しつけて、しかも押しつけの自覚さえもっていない。/彼らは、未開人―未開人は宗教、タブー、伝統、習慣といった社会的法廷の従順な信者である―ではなく、まさに文明の洗礼を受けた野蛮人である。文明の生み出した余裕、すなわち、贅沢、快適、安全、便益の側面だけの継承者であり、正常な生存の様式から見れば、奇形としかいいようのないライフスタイルを営んでいる新人類である。略。///  「自分がしたいことをするためにこの世に生まれあわせて来た」とする傾向、だから「したいことは何でもできる」とする信仰は、自由主義の自由の裏面、義務と責任を免除してもらう自由にほかならない。/われわれは自由主義の生みだした、この「大衆」人間的自由、自己中心的自由に対し、他者と共存する義務と責任をもった自由を保全しなければならないが、一筋縄でいかないのは、この仕事である。(160626:イギリスEU離脱について思うところ=もみ=)