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2024.1東京 歌舞伎「平家女護嶋」を観る

2024年04月19日 | よしなしごと

日本を歩く>  2024.1東京 「平家女護嶋」を観る

 新橋演舞場で初春歌舞伎公演「平家女護嶋」を観た。原作は教科書でも習う江戸時代の人形浄瑠璃、歌舞伎作者の近松門左衛門(1653-1725)である。近松門左衛門の浄瑠璃は110作以上、歌舞伎は40作ほどが知られているらしい。曽根崎心中、国性爺合戦、心中天網島などのタイトルは記憶にあるから断片的に見聞きしたのかも知れないが、平家女護嶋は始めて聞く。
 平家女護嶋は1719年に初演された5段構成で、2段目の「鬼界ヶ島の段」=通称「俊寛」の人気が高く、よく上演されるらしい。
 今年の初春歌舞伎では、近松門左衛門没後300年となるので、「恩愛麻絲央源平(おやこのきずななかもげんぺい)」と添え書きし、2段目「鬼界が島の場」に3段目「朱雀御所の場」を加え、新たな解釈と演出で練り直したそうだ。
 
 1177年、平家転覆を企んだ鹿ヶ谷の陰謀が発覚し、(平清盛の命令で、77代後白河院の側近である西光は斬首され)、真言宗俊寛僧都(市川團十郎、常磐御前、斎藤実盛の3役)、後白河法皇近侍・藤原成経(市川九團次、荒熊団右衛門の2役)、後白河法皇近康頼(片岡一蔵、姉川平次の2役)の3人は鬼界が島に流される。

 3人が島流しされたあと、俊寛の妻・東屋(片岡孝太郎)は清盛の寵愛を拒んだため、清盛配下の妹尾兼康(瀬尾とも表記される)に斬殺される(自害だったかも知れない)。
 舞台は俊寛、成経、康頼の3人が鬼界ヶ島に流されて3年たった鬼界が島に変わる。死ぬまでこの島にいなければならない、食べるものも乏しい、と絶望の日々を送っていたある日、成経が島の海女・千鳥(大谷廣松、伊勢三郎と2役)と結婚することを打ち明ける。俊寛、康頼は、成経、千鳥を祝福し、形ばかりの祝言の杯を交わしていると、大きな船が島にやってきた。

 船から上使・妹尾兼康(市川男女蔵)が降りてきて、80代高倉天皇の后・建礼門院(平清盛の娘・徳子)が懐妊し安産祈願で大赦が行われたので成経と康頼を迎えに来た、と赦免状を読み上げるが、俊寛の名はない。

 俊寛がうちひしがれ、泣き叫んでいると、新たな船が着き、丹佐衛門尉基康(市川右團次、武蔵坊弁慶の2役)が俊寛の赦免状を読み上げる。喜んで3人が船に乗り込み、千鳥が続こうとすると、妹尾が赦免状は3人なので、千鳥は乗せることはできないという。

 3人と千鳥が嘆きあっていると、妹尾は追い打ちをかけるように、俊寛が流されているあいだに清盛の命で妹尾が東屋を殺したと憎々しげに話す。妻と再び暮らす夢を打ち砕かれた俊寛は、絶望に打ちひしがれ、妻のいない都にもはや未練はない、自分は島に残るから代わりに千鳥を船に乗せるよう妹尾に訴える。

 しかし妹尾はこれを拒絶し、俊寛を罵倒する。俊寛は、妹尾の差していた刀を奪って妹尾を斬り殺し、妹尾を殺した罪により自分はここに留まるから、千鳥を船に乗せるよう基康に頼む。

 成経と千鳥、康頼を乗せて船が出て行く。1人残った俊寛は孤独感にさいなまれ、半狂乱で船の手綱をたぐりよせ、船を止めようとするが船は遠ざかる。船が見えなくなるまで船に声をかけ続け、なおも諦めずに岩山へと登り、船の行方を追い続ける。ついに船がみえなくなり、俊寛が絶望的な叫びをあげ、「鬼界が島の場」が幕となる。悲壮感漂う俊寛を演じた市川團十郎に拍手喝采である。

 幕が開いて、「朱雀御所の場」が演じられる。源頼朝の妻・常磐御前市川團十郎の2役目)は頼朝との子・牛若丸(=義経、市川新之助)の命と引き替えに平清盛の愛妾になる。常磐御前は清盛の目を盗み、自分の住む朱雀御所に夜な夜な男を引き入れているとの噂が立つ。
 命を助けられ鞍馬寺に預けられていた牛若丸が行方をくらます。間もなく、朱雀御所に女童の笛竹が奉公し始める。笛竹は女童に変装した牛若丸だった。

 もともとは源氏の武将でいまは平家に従っている斎藤実盛市川團十郎の3役目)が朱雀御所での常磐御前の動きを調べるよう命じられる・・清盛は、常磐御前の本心とともに実盛の忠誠心を確かめようという魂胆らしい・・。

 実盛は町人に扮して朱雀御所に現れ、笛竹と問答していて立ち回りになり、笛竹は牛若丸の変装と気づく。

 牛若丸は常磐御前に別れを告げ、奥州藤原氏に旅立とうとするが、平家の軍勢が現れ、牛若丸と平家の兵士と大立ち回りになる。
 実盛には源氏筋の妻と娘のひな鶴市川ぼたん)がいたが、実盛が平家に従うとき離別していた。ひな鶴は顔を知らない父・実盛に会おうと1人都に向かい、舞台に現れる。
 荒くれの武蔵坊弁慶(市川右團次)が現れる。
 牛若丸の仲立ちで実盛とひな鶴が再会する。
 馬に乗った牛若丸、弁慶、源氏の郎党が勢揃いし、雪の降るなかで気勢を上げ、奥州に向かうところで幕になる。

 團十郎が常磐御前から斎藤実盛に早変わりするのも見ものなら、実盛の團十郎と牛若丸の新之助の父子の掛け合い、團十郎とひな鶴演じるぼたんの父娘の掛け合いも見ものである。 

 恩愛麻絲央(おやこのきずなな)と添え書きされた初春歌舞伎「平家女護嶋」で、團十郎とぼたん、新之助の熱演を観た。亡き麻央も子どもの成長に安堵していると思う。ぼたん、新之助にはまだ演技に成長の伸びしろを感じるが、新春+おやこのきずなに穏やかな気分で観劇を終える。  (2014.1)

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