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2023.11西本智実指揮ドヴォルジャークを聴く

2023年12月14日 | よしなしごと
2023.11 西本智実+日本フィル ドヴォルジャークを聴く

 2023年11月、ソニックシティ大ホールで、西本智実の指揮で日本フィルハーモニー交響楽団が演奏する第140回さいたま定期演奏会が開かれた(写真web転載)。2018年12月、ソニックシティ大ホールで、西本智実が総合プロデュース+指揮し、佐久間良子が熱演した『ストゥーパ~新卒塔婆小町~』を観て、大いに感動した(HP「2018.12 新卒塔婆小町を観る」参照)。
 第140回さいたま定期演奏会も指揮が西沢智実だったので、すぐにチケットを購入し、演奏会に出かけた。曲目はいずれもドヴォルジャーク作曲で、最初に、チェロ協奏曲 ロ短調 op.104 B.191(およそ40分)、
2曲目に、交響曲第9番<新世界より>ホ短調 op.95 B.178 (およそ40分)である。どちらも西沢智実はダイナミックな指揮で期待に応えてくれた。


 プログラムには「郷 失われた故郷 燃え上がる郷愁」と題され、ドヴォルジャークと表記されている。教科書などではドヴォルザークと表記されていたが、チェコ語の発音はドヴォルジャークが近いそうだ。
 現在のチェコ共和国の前身は12世紀に王国に昇格したボヘミア王国(=チェコ王国)にさかのぼる。首都はプラハである。その後、ポーランド王国、ハンガリー王国の支配を受けた。

 アントニン・レオポルド・ドヴォルジャーク(1841-1904)が生まれたころはオーストリア帝国、没年のころはオーストリア=ハンガリー帝国だった。その後、ハプスブルク家が支配し、第1次大戦後の1998年にチェコスロバキア共和国が復活し、1993年、チェコとスロバキアが分離してチェコ共和国になった。首都はプラハである。
 ドヴォルジャークは、ボヘミアで生まれ、プラハで音楽的な経験を積んでいくが、当時はオーストリア帝国である。首都ウィーンは音楽の都といわれ、モーツアルト、シューベルト、ハイドンなどが広く知れ渡っていた。ドヴォルジャークもウィーンにブラームスを訪ね、親交を深めた。一方で、オーストリアではチェコ人を白眼視する風潮があったようで、ドヴォルジャークはウィーンには馴染まず、プラハを拠点に活動を続け、1892年、新興国アメリカに渡る。


 アメリカ滞在中にドヴォルジャークはホームシックに陥りながらも、新たな音楽に出会う。一方、チェコではオーストリアから独立しようとする民族運動が起きていた。交響曲第9番「新世界より」は、まさに「新世界アメリカより」チェコ=ボヘミアに思いを寄せた結晶だったのである。
 プログラムの解説では、第2楽章の郷愁にあふれたテーマ、随所に幻のように現れる儚く幸せな楽想、第4楽章の長く引き伸ばされた和音が静かに消えてゆく終結部など、音楽を通じて旧い世界に新たな風穴を開こうとしている、と締めくくっている。


 ドヴォルジャークはホームシックが進行するなかでチェロ協奏曲を作曲するが、ホームシックに耐えられずボヘミアに帰国する。帰国後間もなく、ドヴォルジャークが思いを寄せたことのある義姉が他界する。チェロ協奏曲の第1楽章第2主題のメロディはやるせく、第2楽章の昼間部には突然ほの暗いテーマが現れ、第3楽章の最終部に第1楽章が回想される。これらは、アメリカでのホームシック、義姉の死後の大改訂をうかがわせるそうだ。
 
 音楽には疎いので、○楽章の主題とか、回想された旋律とか、和音が消えていく終結部とかは聴き取ることができなかったが、新世界アメリカにいてタイトルの「失われた故郷 燃え上がる郷愁」のようにボヘミア=チェコに思いを馳せるドヴォルジャークを思い浮かべて演奏に浸った。とくに「新世界より」は何度も耳にしている曲なので全体の構成が理解できたし、西本智実のダイナミックな指揮で改めて感動をおぼえた。 
 (2023.12)


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