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司馬遼太郎著「箱根の坂」中は、早雲が守護を狙う敵を倒し竜王丸=今川氏親を駿府城に迎えるまで

2018年09月20日 | 斜読

book471 箱根の坂 上中下 司馬遼太郎 講談社文庫 2004  

中巻
  伊勢新九郎、千萱はそれぞれ伊勢氏の支流の庶子だが血縁ではない。千萱は8代将軍義正の弟義視家に奉公することになった。義視は千萱を申次衆の新九郎の妹分にした。新九郎、千萱は惹かれながらも形の上の兄妹のため自制する。
 室町幕府は政治的に混乱しているうえ、相続の駆け引きが渦巻いていた。8代将軍義正は駿河国の守護今川義忠を上洛させる。義忠は千萱と臥所をともにする。千萱は駿河国で竜王丸を生むが、義忠は戦死する。
 駿河国の守護を狙う陰謀から千萱、竜王丸を守ろうと、新九郎=早雲が駿河に向かう。ここまでが上巻で、中巻は、早雲が竜王丸に仕え、興国寺城主となり、守護職を狙う陰謀を打ち砕き、竜王丸が駿府城主となるまでが描かれる。しかし、早雲はもっと広い世界を見通していた。

征途 
 早雲は田原郷を訪ね、大道寺太郎、小次郎、兵馬を家来とし、小川法栄の蔵がある伊勢の津で新たな家来を探す。司馬遼太郎の博識が上中下に渡って披露されるから、話はあちらに飛び、こちらに飛び、物語はゆっくり展開する。

富士が嶺 
  早雲以下7名は、法栄の船で伊勢から駿河国小川湊に入る。駿府城には今川新五郎範満が守護然として構えていて、跡継ぎの竜王丸と母の北川殿=千萱は法栄の別屋に住んでいた。

 関東は箱根以東の相模、武蔵、安房、上総、下総、上野、下野、常陸の8ヵ国で、室町幕府は伊豆と甲斐を加えた10ヵ国の支配を鎌倉を政庁とする関東公方に任せていた。ところが関東公方も跡継ぎ紛争がこじれ、足利成氏が古河に移り古河公方を称した。8代将軍義正は紛争を抑えるため弟足利政知を送ったが、政知は現在の韮山にとどまり堀越公方と呼ばれた。つまり関東に2人の公方がいる。
 公方には兵力が無い。実質は関東管領の名門上杉氏が武力を持つが、いまや扇谷の上杉定正と山内の上杉政憲が競い合っていた。
 駿河国の跡継ぎに目を付け、堀越公方足利政知の派遣した上杉政憲軍と上杉定正家臣太田道灌軍が駿府近くに駐屯してきた。
 早雲は「物事は心を虚しくして」、時代の流れと関東の情勢を読み、駿河国を公方、管領の支配ではなく駿河に住むすべての人の国にしようと決意する。
太田道灌
  早雲は駿河国の守護然としている今川新五郎に挨拶にうかがうも、たたき出されてしまう。早雲は、竜王丸、北川殿を法栄の館から山あいの朝比奈太郎の館に移す。

 早雲が農業に詳しいことから次第に国人≒在地領主の信望を得ていく。あわせて司馬遼太郎は当時の農業を語る。
 早雲は堀越軍に出向き、跡継ぎについて一任を受ける。ところが、
今川新五郎の母が扇谷上杉出身のため、扇谷上杉軍は虎視眈々である。その扇谷上杉定正の軍を率いているのが江戸城などの普請で知られた太田道灌であった。早雲は太田道灌と会い、竜王丸成人までは今川新五郎を後見人とすることで話が付く。
興国寺城
  守護今川義忠に仕えてきた譜代衆・国人は、戦いに出るのは自分の所領を守護に守ってもらうためと考えていて、嫡子竜王丸が守護になることを期待したが、北川殿の兄早雲=竜王丸の叔父の判断である竜王丸成人まで今川新五郎の後見を了承した。

 早雲は竜王丸の家来になり、駿河国の東=関東からの箱根越の要衝に位置する興国寺城主となる。北川殿と竜王丸は防備にかなった泉谷に館をつくり、移る。
 今川新五郎は密かに京に使いを出し、守護職になる工作を始める。国人たちの多くも今川新五郎の顔色をうかがうようになる。1467年、司馬遼太郎いわく無益な応仁の乱が終わる。
 早雲は今川新五郎に加担する勢力に何度か襲われた。早雲を亡きものにすれば竜王丸、北川殿はもろい。今川新五郎が守護になれば、玉突きのようにおこぼれが回ってくる。早雲は戦いを決意する。
伊勢の弓
  伊勢流は室内の礼、小笠原流は弓馬の礼を得意とするが、早雲は小笠原流も会得していて、流鏑馬も得意であり、敵方の洞弾正次を弓矢で倒す。

歳月
 小笠原 早雲は質素な格好で領内を見回り、さらには密かに箱根を越えて関東も見て歩く。

 早雲に縁談が起きた。京の公方の御番衆小笠原備前守の息女真葛で、夫が討ち死にし、家に戻っていた。竜王丸=今川氏親が書状をしたため、縁談がまとまる。
空よりひろき
 
真葛が興国寺城に入ったとき、早雲は関東の情勢を確かめるため留守だった。帰城後、ただちに婚礼となった。

 扇谷の上杉定正には太田道灌がいたが、上杉定正は自分より実力、声望とも際立つ太田道灌を上意討ちにしてしまう。今川新五郎は上杉定正の加勢も頼んでいたから、早雲は危険を感じる。 
丸子と駿府 
  早雲は今川氏親に「駿河一国は地侍、国人、小百姓の持ちたる国」と諭す一方、氏親の館の防御を固める。応じて、今川新五郎も駿府館の守りを固める。

 今川範忠・義忠に仕えた茶阿弥は今川新五郎に嫌われ、いまや駿府館の掃除番にされていた。茶阿弥は氏親を義忠様の忘れ形見と考えていて、駿府の館の内情を早雲に報せていた。
 真葛が男児を生み、早雲は氏綱と名付ける・・のちに2代北条・・。
急襲
  早雲は興国寺城での籠城の準備を進める一方、兵を小川に集結させていた。そんなとき、茶阿弥が殺され、辻に放置された。願阿弥が現れ、茶阿弥を辻で火葬にする。早雲軍は葬列の一行に紛れ、機をうかがう。火葬を止めさせようと門が開いた瞬間、早雲軍がなだれ込み、ついに今川新五郎を討ち取る。

 早雲は今川氏親を駿府館に迎える。
面目の都や
  早雲は京で時代の変化を確信する。

 今川氏親が駿河国の守護になるまでが中巻である。

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