lizardbrain

だらだらぼちぼち

オルタモントの悲劇(1)

2018年06月17日 10時55分49秒 | 音楽


ローリング・ストーンズ イン ギミー・シェルター(The Rolling Stones Gimme Shelter)という映画を観たのは、中学生の頃で。
あの頃は、小遣いも乏しかったはずなのに。
映画を観るだけで精一杯の経済情勢だったはずなのに。
一体、どうして、パンフレットまで買おうと思ったのだろうか?我ながら、不思議でならない。
その上、(単に、引き出しの隅っこに残っていたと言ってしまえばそれまでだが)よくもまあ、今まで保存していたものだと思う。
このパンフに書かれている事を検討してみた。



 


伝説のイベント、ウッドストック・フェスティバルが開かれたのが、1969年8月。
同じく1969年、当時はまだイギリスを活動拠点としていたローリング・ストーンズが1964年に次いで2回目となる全米ツアーを行った。
フォート・コリンズのコロラド大学、オークランド、サンディエゴ、フェニックス、ラスベガス、ダラス、オーバン、シャンペン、アラバマ、シカゴ、ニューヨーク、カリフォルニア州オルタモント・レースウェイ、と駆け巡ったこの1969年の全米ツアーの模様をフィルムに収めたのが、この映画だ。




映画のメインとなる、最後のオルタモント公演が開催されたのが同年12月6日。
当初は、別の場所で予定されていたのが変更となり、オルタモント・レースウェイでのコンサート開催が決まったのが、なんと、前日の12月5日だった。
その上、オルタモント公演はフリーコンサート、つまり無料のコンサートとなった。
こうして、急遽決まったオルタモント・レースウェイでの公演にもかかわらず、会場につめかけた聴衆は、30万人を超えたという。
いや、50万人という説もあるらしい。
例えば、1人あたり¥1,000くらいの入場料金でも徴収しておけば大儲けできたのに、と思ってみたが、無料だからこその集客とも言える。




このオルタモントでのフリーコンサートでは、会場内、そしてバックステージでもトラブルが頻発した。
その原因は、(会場警備を警察に拒否されたらしく)主催者がヘルス・エンジェルズに警備を依頼したからだ。
ワタクシは、ヘルス・エンジェルズについては、ハーレーを乗り回す暴力的な暴走族といった程度の理解をしていたのだが、とんでもない。
今さらながら読み返してみたこのパンフによると、1947年頃に、モーター・サイクル・クラブとして結成された一種の暴力団だと明言している。
500ドル分のビールを飲ませる、という約束で主催者に雇われたヘルスエンジェルズのメンバーが、秩序だった会場警備をするわけがなかった。
演奏中のステージ上をも平気で歩き回り、エキサイトしてステージによじ登ろうとする観客を引きずり下ろし殴り倒し、前座で登場したジェファーソン・エア・プレインのメンバーまでもが、演奏中に彼らに殴られるという混乱に陥っていた。




ストーンズの登場とともに、いったんは落ち着いたかに見えた会場内だったが、観客席の聴衆の中で暴動が発生したのをきっかけに、ヘルス・エンジェルズ達が、さらに過激なスタイルの警備を始めた。
それに反発する観客との間で、さらにあちこちでもみ合うトラブルが発生していた。
ミック・ジャガーは、ステージ上から、「静かに聴いてもらえないのならば、演奏を中止する。」とまで訴えざるをえなかった。
そして、ついに悲劇が起きてしまった。
『Under My Thumb』の演奏後に、メレディス・ハンターという18歳の黒人が、ヘルスエンジェルズのメンバーにナイフで刺された上に踏み殺されてしまったのだ。
この黒人青年が殺されるシーンを、偶然にもカメラが捉えていた。
混乱する観客席の中を映した画面の隅っこの方だったし、鮮明な画像でもなかったが。
映画の中で、撮影されたフィルム、しかもこのシーンのプレイバックを見るミック・ジャガーの姿が映し出される。
プレイバック画面を前にして、『フリーズした』あるいは『固まった』表情で画面を見つめるミック・ジャガー、、、、、、
当時、幼かったワタクシは、なぜか、「ロック・ミュージシャンは、みんな暴力的な人達だ。」と決め付けていたフシがあって、悲しそうな表情でこの場面を見つめるミック・ジャガーの姿が印象的であった。
当時から、ブッ飛んでいたファッションセンスは別として、ロック・ミュージシャン、いや、ストーンズのメンバーは、「意外と、いい人達なのかもしれない。」とも感じたのだ。
後に、ヘルス・エンジェルズの一人が語ったところによると、この時の会場内での暴動騒ぎの原因は、ステージ脇に置いてあった(命よりも大事な)バイクを誰かに壊されて火を付けられた事が発端となったのだという。

【演奏曲目】
Jumping Jack Frash
Satisfaction
You Gotta Move
Wild Horses
Brown Sugar
Love In Vain
I've Been Loving You Too Long
Honkey Tonk Woman
Street Fighting Man
Six Days On The Road
The Other Side Of This Life(Jefferson airplain)
Simpathy For The Devil
Under My Thumb
Gimme Shelter

幼いワタクシの中の、『ロックミュージシャン=暴力的』という図式は崩れ去ったが、対照的に、『Wild Horses』や『Love In Vain』といったストーンズのバラード曲の美しさが、ず~っと記憶に残っている。

もちろん、この時のストーンズのメンバーは、

Mick Jagger
Keith Richards
Bill Wayman
Charlie Watts
Mick Talor  

だった。