toty日記

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休暇

2008-06-25 21:25:01 | 映画
コーラスのあと、気になっていた映画「休暇」を見てきた。

実は、先日NANAEさんのブログに「ジャバ・ザ・ハットは死神か?
と題して、鳩山発言に対する話があった。

いつか見た映画の予告編で「休暇」が
妙に心に残っていたので、コメントを書いた。
そして、時間がとれたので見に行った次第。


吉村昭原作の短編小説の映画化。

遅めの結婚にこぎつけた刑務官。
母の葬儀等で休暇を使い果たし、
新婚旅行もままならなかったのだが、

死刑執行時に「支え役」を引き受けることで、
一週間の休暇をとることができることから、それを志願する。
精神的に過酷なことを引き受けて、
それで新婚旅行が楽しく過ごせるのか?

吉村の原作は、モチーフといってもいいほど短い。
今回の映画では、かなり人物それぞれが詳しく描写されている。

死刑囚が黙々と描く鉛筆画、
結婚相手の子供(余り周囲になじまないようだ)もいつも絵を描いている、
その対比。

蟻の描写、

死刑囚の妹が面会に来たときの長い沈黙。

死刑囚が遺書を書こうとするときのやはり長い躊躇。
そしてそれを、主人公に差し出す場面。

どこもたんたんと時間が流れる。

まるで、感情を抑えるのが常になっている
刑務官の日常を想像させる。

結婚の披露宴で、酔っ払った親戚が
「こいつは正義感の強い男で…、悪い奴を懲らしめて欲しい」
(きちんとしたセリフでは覚えていないが、ニュアンスとして)

に、死刑執行を身近に感じている刑務官たちの白けた表情。
(披露宴のご馳走も、殆どが手をつけられない。)

執行予定を気付かせないように、いつも通りを心がけながらも
死刑囚に何かやってあげたいという情を感じて

音楽を聞かせようとするが、
それがかえって、彼に気付かせてしまう場面。
(あの曲はなんだったんだろう?)

脚本がよく作りこまれている。

同じセリフ
「慣れれば、どうにかなる」(正確ではなく、ニュアンスとして)
が、言う相手を変えて出てくるのも、見ていてうまいと思う。


死刑が良いとか悪いとかを、言ってもいない。
ただ、執行官の苦悩は大いに伝わってくる。

死刑制度を考える時、こういう職場があること、
そしてそれぞれの人にも、生活があることに、改めて思わされる。


今回、映画を見てから、原作を買った。
よく、原作を見てから映画を見ると失望することが多いが、

今回は、原作からよくこれだけ肉付けして
映画にしたものだと思った。

原作には名前がでてこない。
それぞれの人物は、「彼」とか、「子供」とか
「初老の上司」等でおわっているが、
映画ではそれぞれが名前を与えられている。

かんじんの死刑囚の犯罪がどんなものだったかは
見ているものが想像するしかない。

終わってからも、あの場面、この場面
反芻することの多い映画だった。


最後に、さがさんにも話したが
死刑囚の名前が、もう亡くなられたミュジシャンの名前で、
それには衝撃的だった。

彼は、病気での死期を悟った後、それでも
最後まで生き続け、音楽を深めようとしていた人物だったからだ。

それも、つい2~3日前、旧おとまきさんが、
こんなHPを見つけました。凄い人ですと紹介してあったのを
目にしたばかりだったからだ。

映画で命名した人は、この人を知っているのだろうか。
全くの偶然なのだろうか。そんなことまで、気になってしまった。


映画自体は、この感想を書くにも時間を要したように
考える時間をいっぱい作ってくれる、そういう映画だった。


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写真は、コーラスの先生宅前のざくろ
大きな木に満開!