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Uボート


監督 ウォルフガング・ペーターゼン
出演 ユンゲル・ブロホノフ、ヘルベルト・グレーネマイヤー

 潜水艦モノ映画もいろいろある。「眼下の敵」「クリムゾン・タイド」「海底二万哩」など。その中でも、この映画は最高傑作といっていいだろう。
 第2次世界大戦当時のドイツのUボート乗組員は4万人。そのうち3万人が戦死したとか。ものすごく過酷な任務だったのだ。どう過酷だったのか。たっぷりと、しかも大変にリアルに第2次世界大戦当時の潜水艦内部の様子を、この映画は見せてくれる。
 お話そのものは単純なモノだ。軍港を出港した1隻のUボート。任務は敵国の貨物船を撃沈して、敵の補給路を断つこと。しかし、敵も駆逐艦が護衛についている。爆雷攻撃を受ける。だいじょうか?
 映画を観る時は、主人公たちに感情移入して観る。カモシカが主人公なら、ライオンが迫ってくるとヒヤヒヤする。ライオンが主人公なら子育てのためにカモシカが捕れるよう応援する。これがヘタな演出なら、しょせん他人事、ヒヤヒヤも応援もしない。この映画の場合、艦長をはじめUボート乗組員たちが主人公。監督のペーターゼンが、ものすごくうまい。
 出港して何日も何日も大海原を航行してるだけ。いいかげん嫌気がさしてくる。やっと敵を発見。敵艦撃沈。目の前で死にゆく敵兵たち。敵駆逐艦に発見される。爆雷攻撃を受ける。
 70年前の潜水艦である。最新のそうりゅう型潜水艦や原潜ではない。ローテクである。「潜航」と号令がでると、どどっと走って艦首に固まる。艦首に重しをかけて艦首を下げる必要がある。「浮上」となると艦尾に走る。そんな潜水艦が爆雷を受ける。かろうじて逃げてもソナーが探ってくる。敵が放つソナーの音が死神のささやきのよう。できるだけ深く潜航しないと逃げられない。設計上の最大潜航深度は90m。200mを超える深さまで潜る。水圧で艦の各部がギシギシ音がする。あちこちから水が噴き出す。火災も起こる。なんとか敵は通り過ぎた。浮上できるか。排水タンクをブローする。200mを超えた深度計の針が動かない。
 たいへんな緊張感に満ちた映画である。潜水艦の戦いの恐ろしさ、というかある意味戦争そのものの恐ろしさを描いた、反戦映画の傑作といえる。
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