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とつぜんコラム№127 目を覚まそうニッポン

 まもなく3月11日だ。この日は、日本が、国として新しいステージに移行すべき日だった。ところが、まだ、この国、日本は、旧来の日本のままだ。歴史の流れ、世界の潮流は日本を別のステージへと運んでいた。それでも、日本は今までの流れの中にいると思って、その流れに身を任せていた。そして3月11日東日本大震災。期せずして日本の半身を襲った大きな災厄は、それまでの流れの中の日本のターニングポイントとなるべき災害であった。
 日本は敗戦後の、何もない焼け跡から立ち上がった。その時、日本はそれまでの価値観とは180度違う価値観を基盤にひたすら進んできた。軍事最優先で個人の幸福よりも全体の繁栄を優先した。それが経済最優先で、国民一人一人の収入を上げて豊かになり、底辺を底上げして、「中流」を大量生産した。こうして、ほどほどに豊かでほどほどに幸せな国民が都市部を中心に、日本人の多数派となった。とはいいつつもそれに異を唱える連中もいた。ゲバ棒ヘルメット火炎ビンで異を唱えた。その中で特に先鋭的な分子が、まだ見ぬ祖国「日本人民共和国」を夢見て、革命への戦いを始めた。ところが「革命」はしょせんは彼らにとっての「革命」でしかなかった。彼らにとっての戦争は、たんなる「犯罪」へと成り下がり、革命の士は、犯罪者となってしまった。こうして幻の「日本人民共和国」は幻になった。そして彼らが理想とした「北」のかの国は「革命」どころか、世襲によって権力がつながる、革命の士にとっては唾棄すべき薄汚い「王国」と成り果ててしまった。
「日本人民共和国」がパラレルワールドでしか存在しなくなった日本人は「日本国」を世界で冠たる経済大国に仕立て上げた。自動車でも、半導体でも、電気製品でも、日本製は世界を席巻した。プロジェクトXで象徴される、寝食を忘れた新製品の開発と、仕事を終えても、そのまま職場に残り、夜おそくまでQC活動に取り組む(QC活動は業務ではないとの解釈で時間外手当を出さない企業があった)現場の労働者の努力によって、どこの国にも負けない優秀な品質を築き上げた。
 こうした勤勉さによって世界第2位の経済大国となった日本は、期せずして起こったバブル経済によって、日本中が毎日お祭り騒ぎであった。しかし「ハレ」の日はあくまで「ハレ」であった。ふと気がつくと「ケ」の日に戻っていた。狭い国土、ほとんど山の国土に1億を越える人間が暮らしている。石油が出ない。レアメタルも産出しない。経済と防衛ははかっての敵国アメリカだのみ。近隣の中国、韓国とは先の戦争のけじめがついていない。領土問題を三つも抱えている。さしたる資源もない。同じ敗戦国のドイツはヨーロッパ最強の経済国として、1国で倒れる寸前のヨーロッパ経済を支えている。同じ敗戦国の日本とドイツ。なぜこうも違うのか。
柳生一族の陰謀」で、萬屋錦之助扮する柳生但馬守が「夢じゃ夢じゃ、おのおの方、これは夢でござるぞ」といっていたが、日本もそう思った方がいいだろう。高度経済成長、所得倍増、ジャパン・アズ・ナンバーワン、世界第2位の経済大国、日本の半導体世界を席巻、こんなモノは、それこそ「夢でござるぞ」とはっきりと認識して、これからの日本の行く末を見定めるべきだろう。その夢を見ている日本の目を覚ませたのが東日本大震災ではないだろうか。揺らぐはずのない大地が揺れ、生命の母たる優しい海が牙をむいて襲いかかる。壊れるはずのない原子力発電所が壊れる。日本の「ハレ」は東日本大震災によって終った。これからは「ケ」の日をいかに生きていくべきか考えるべきだろう。
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