走る営業公務員、奮闘記!!

地方分権が進展する中での地方からみた木っ端役人の奮闘記です。

一通の手紙

2010年03月29日 23時55分21秒 | 職場の出来事
 今日、臨時嘱託職員の立石康先生の送別会があった。
 同先生は2年前に松山市立生石小学校を退職されたのだが、それと同時に熱烈ラブコールを送り、始めて社会教育部門に教員OBを受け入れることができた。
後日談ではあるが、当課よりも条件のいいところへ決まっていたのにも関わらず、しんどく収入も安い当課を選んでくれた。

 先生との出会いは、先生がまだ生石小学校の校長先生をしている時に文部科学省の先端教育プログラム開発事業に携わってもらったときからである。
そのプログラムのよさを現場の視点からわかりやすく説明してくれた。

 そして、今、教育現場で基礎教育が低下しているといった説明を受けた。
 その要因が学校教育というよりも格差社会の広がりにあることもわかった。
 私は教育政策についてとやかく言うつもりはない。
 ただ、わが国には所得別教育政策がないところに問題の本質があるような気がする。
その犠牲になるのは、いつも子どもである。

 当時、先生はその基礎学力を強化する手法として、放課後の学習に目をつけられていた。
学校教育の時間では、これをしようとすると現実的には無理だとも言われた。
なんと現実的な先生なのだろうかと。
 また、子どもたちのことを熱心に語られた。
 「経済的理由で教育格差が生まれていることをこのままにしておいていいのでしょうか。子どもに何の罪があるのですか」と。
 さらに、「この教育プログラムを活用すれば、シロウトでも子どもたちの勉強を観てやれるんです。これを使えば地域のボランティアの人でも子どもたちの面倒を見てやれるんです。」と。

 「じゃあ先生、このプログラムを使えば放課後に地域のボランティアの人たちが子どもたちの勉強を観てやれるんですね。できるだけ無料になるような仕組みを作ればいいのですね。」
 「そうです、そういう仕組みをぜひ作っていただきたい。」

 この話はこれだけでは終わらなかった。

 この文部科学省の事業終了のお礼に上がったとき、校長先生だった立石先生は机の中から一通の手紙を出された。
 「課長さん、読んでみてください。」
 「いいんですか?」
 「はい、どうぞ。」
 その手紙を読み進むうち、目頭が熱くなってきた。

 母子家庭の母親からの手紙であった。
 内容は、塾に通わせることができない経済状態であること。
 この授業に参加したことによって子どもの成績が上がったということ。
 家庭で勉強の話を明るく話すようになったこと。
 そして、ぜひ、この事業を引続きやって欲しいということ。

 私は、自分の人生の中で経済的な問題で学問を諦めかかったことが二度ある。
 この母親の気持ちが痛いくらいわかった。
 「先生、やりますか!!」
 「やりましょう」

 翌年度の下期、「放課後子ども教室」ということで実現した。
 預かり時間は5時でおやつを出さないが、月謝は要らない。
 そして、最初のモデル校に生石小学校と久枝小学校がなってくれた。
 さらに、翌年の四月から立石先生が着てくれ、翌々年には野田先生が加わり二人体制で教室の普及活動に努めていただいた。
 欲張りな私は、最初に立石先生にむかって「教室の数を増やすだけでなく、成果も出していただけませんか」と。

 そして、立石先生は二年間で17教室を開設し、そして2割の子どもたちの算数と理科の成績を上げてくれた。

 先生がいなければ、この放課後子ども教室は短時間でこんなに広がっていない。
 未来ある子どもたちのためにがんばってくれた立石先生にもう一度お礼を言いたい。

 ありがとうございました。