日本ホリスティック医学協会では年に4回会報を発行するのだけど、そのうち2月に発行される「マガジン」と呼ばれる1冊は、ひとつのテーマを掘り下げてボリュームアップした特別号だ。
今年のマガジンのテーマは「更年期のケア」。主に女性の更年期に注目したものだけど、男性にも更年期症状が表れることから、私が担当している関連図書紹介では男性更年期にまつわる書籍もピックアップした。
女性の更年期は一般に45歳から約10年間にわたる期間をさし、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの減少が引き金となって、肉体的にも精神的にも頭のてっぺんから足の爪先まで、ありとあらゆる症状が出る。現在では20代、30代の女性でも更年期同様の症状を訴える人も多いらしい。
書評を書くために十数冊の更年期関連の本を読んだら、事例として掲載されている患者さんたちの声に呼応して、私にもありとあらゆる症状が出そうな気になってきた。目はしょぼしょぼするし、肩は凝るし……。ううむ、よろしくない。
そんななか、しみじみ笑える本と出会った。漫画家・高橋陽子さんの『50歳前からのココカラ手帖』。これは高橋さんが50歳を目前にしてさまざまな不調を自覚し、心療内科や睡眠外来、女性の頭髪専門外来、婦人科のトータルヘルスのクリニックなどを次々に訪ね、その経験を描いたコミックエッセイだ。
「最近、何かがおかしい」と思った高橋さんが最初に訪ねたのが、心療内科だった。高橋さんは「数字を間違えずに連続して書けなくなったし、文字も正しく書けなくなった」と訴えた後、「間違えないように気をつけているのに、間違える自分に驚いているんです!」と叫ぶのだが、……分かる。しみじみと分かる。
「あれ? 何しにこの部屋に来たんだっけ?」ということが、私にも、ある。
いくつかのクリニックを訪ねたあと、外見にも気を配るべくエステサロンやスポーツジムにも通って、プロからアドバイスを受けたりもする。専門家から言われた言葉も味のある言葉を拾っていて、とても面白かった。オススメの1冊。
心に響くエッセイとして取り上げたのは、落合恵子さんの『メノポーズ革命』。「メノポーズ」という言葉をタイトルで用いた先駆的な1冊ではないかしら。
初版は1999年なのだけど、15年を経ても内容は色あせず「メノポーズは、時の贈り物である。誰もが年を重ねる。生きている限り、免除されるものはいない。とするなら、メノポーズも加齢も、可能な限り自然に楽しく、快適に迎えたい」という落合さんの思いが全編に溢れている。
更年期のさまざまなな症状と向き合いながら、お母さんの介護、看取りを終え、現在も反原発の立場に立って積極的に活動されているけれど、落合恵子さんは相変わらず若々しくハツラツとしていて、元気をくださっている。
落合さんのエッセイが出版された翌年、はらたいらさんがご自分の更年期症状を告白した『はらたいらのジタバタ男の更年期』を発行し、巷を驚かせた。この本によって、男性にも更年期特有の症状があることが周知されるようになったし、大学病院でも次々と男性更年期外来が開設されたそうだ。
はらさんは49歳くらいから不定愁訴になり、当時のことを「思い通りにならない身体と心。今までの価値観が全部ひっくり返されるほど、つらい日々だった」と書いている。
そして、最初の告白本から2年後に発行された『男も「更年期」がわかると楽になる』には、これまではらさんが触れてこなかったED(勃起障害)の問題や夫婦間のことなどが正直に綴られていた。男性の更年期症状や女性にはわからない苦悩、専門医へのインタビュー、奥さんの本音なども掲載されていて、興味深い内容だった。
男性も女性もホルモンの減少に左右されるんだなあ。私にも「今までの価値観が全部ひっくり返されるほど、つらい日々」がやってくるのかなあ。まあ、更年期じゃなくとも、人生にはそういうときがあるけどね。
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