引っ越してきた当初に地植えしたハゴロモジャスミンは、部屋の目絶ち(目隠し)として常緑の葉を茂らせ、5月にはたわわに花房をつける。清楚にしてゴージャスな咲き誇り方で目を楽しませてくれるのはいいが、難点は匂いがあまりにも「くどい」ことだった。
私自身、あまり好みの匂いではなく、もう少しほのかに香るフルーティーな香りだったらいいのに、と毎年開花するたびに思っていたのである。
これは昨年の写真。今年はもっとダイナミックだった
5月初旬、7分咲きほどに咲いた頃だったか。テラスにたたずんでいると、隣のテラスの窓が開く音がしたかと思うと、「うっ、臭っ!」というお姉さんの声がして、ガラガラピシャッ!と窓を閉める音が聞こえた。
うちの庭にはヒキガエルが産卵した生臭さが若干残っていたけれど、近隣の人が鼻をつまむほどではなかったから、隣のお姉さんに「臭い」と言わしめたのは、間違いなくハゴロモジャスミンが放つ匂いであろう。ううむ、くどくて臭いと思っていたのは、やはり私だけではなかったか…。
隣のお姉さんは1歳くらいの乳飲み子を連れて、実家に戻って来ているようなのだ。窓を全開して清々しい空気も入れたいに違いない。なのに、窓を開ければくどい匂いが入ってくる。「たまらないわ!」という感情が込められた「うっ、臭っ!」であった。
悩んだ末、私はとうとうハゴロモジャスミンを伐ってしまう決心をしたのであった。質の悪い土であったにもかかわらず、文句もいわずに根をしっかりと張り、そばに立つ木にも絡みついて茂っていたハゴロモジャスミンよ、許せ!
ザクザクと刈り取ったハゴロモジャスミンの花房や枝葉は70リットルのゴミ袋7袋にも及び、胸が痛んだ。根は深く広く張っていたので掘り起こさずに残したが、根元まで容赦なく刈り込まれ、ハゴロモジャスミンは目絶ちとして役割を果たした10年の歳月に終止符を打ったのであった。
と思っていたら、ハゴロモジャスミンはひこばえを伸ばし、それが今ぐんぐん成長している。まるでノエホタ母のセカンドハウスの庭にあるバナナのようだ。なんという力強さ!
目絶ちがなくなったので、実家からムクゲとアブロチンをそれぞれ2鉢もらってきたばかりなのに、その脇の地面からにょきにょきと新芽を伸ばしている。
「好きだなあ、コイツ」と思いました。この生命力、この打たれ強さを見習いたいものだと思った。
これからはあまりこんもりとさせず、隣のお姉さんに「臭っ!」と言われないように育てていくからね。