<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地





結婚するまで私の朝食は100%和食だった。
白ご飯、味噌汁、めざし、漬物、味付け海苔、といったところが標準メニューでこれにフリカケがプラスされたり生卵をご飯にかけたりしていただいたものだ。
というのも両親が昭和一桁世代であり、とりわけ大阪生まれの大阪育ちの母と違って岡山県の片田舎で育った父はパン食を嫌がるどころか拒否したからだった。

そんなこともあってカミさんを貰ってから変わったのが朝の食生活。
和洋半分半分で、始めの頃はパン食に私もかなり違和感を持ったものだった。
「パンはおやつや」
との私の主張に、
「誰が決めたん」
とカミさん。
カミさん一家は義父の仕事の関係で一時期兵庫県芦屋市内に住んでいたことがある。
芦屋や神戸は美味いパン屋が多い上に、もともとパン食の盛んな地域だ。
それにカミさん自身も若い頃フランスの大学に留学していたこともあってパン食は標準に近いものだったのだ。

そもそも関西はパン食が盛んだということは今回NHK新書「なぜ日本のフランスパンは世界一になったのか」(阿古真理著)を読む以前から聞き知っていた。
それがなぜなのか、実はよくわからなかった。
新しもの好きの関西人の気質に合致したのか、はたまた本書に記されていたように関西の朝ごはんは手間をかけないからなのか。
今回これらの漠然とした原因が正確かどうかは判断しかねる部分がないこともないが、ある程度知ることができたのは収穫であった。

それにしても日本のパン文化は確かに凄いかも知れない。
私はヨーロッパには行ったことが無いのだが、フランスで10年余りを過ごしたカミさんによるとパリにあるパン屋さんでも日本のパン屋さんほどバリエーションはないのだという。
品種も5種類くらいで販売もケースに入ったものを、
「これちょうだい」
と言う具合にして包んで出してもらう形式だそうだ。
日本のようにセルフサービスでバゲット、食パン、アンパン、クリームパン、サンドイッチ、ホットドック、ケーキ、デニッシュ、その他様々と無数なバリエーションでお客さんを待ち構える店はまず見ない。
そういうことを聞くと、日本に来たフランス人が日本のパン屋の種類と味に感激するのは分からないでもないのだ。
私は東南アジアを旅するのが趣味なのだが、現地で美味しいパンに出会うことはまずない。
強いて挙げると日本人の感覚としてまともな味なのはベトナムのパンぐらいではないかと思っている。
多分それはフランス植民地としての歴史が長かったことに理由があるのかも知れない。
またタイのファミマやセブンイレブンなどのコンビニへ行くとヤマザキパンの製品が普通に販売されているが、これらとて日本のもののような感覚は薄いような気がする。
アンパンを買ったら餡が緑色をしていたのでビックリしたことがあった。

パンは発酵食品の一種でもあり、生産管理が難しい部分がある。
材料の小麦の品質も重要だ。
こういうこだわりを必要とするものは日本人の凝り性にもしかすると合っていたのか。
なんでも凝ってしまい自分のものにしてしまう日本独特の文化の賜物。
それの一つがパン文化なのかもしれないと思いながら読んだ一冊なのであった。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )