<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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昨年末。
エクアドルを新婚旅行中の新婚カップルが賊に襲われ夫が殺され妻も重傷を負った痛ましい事件が発生。
報道によると二人は流しのタクシーを通りでひらい、それが災いして命を落としたという。
タクシーの運転手が盗賊と結託して急ぎ働きのような強盗殺人を犯すことが頻繁に発生していたのだという。

海外でのタクシーの利用を考えさせるような出来事なのであった。

海外旅行をした時に、タクシーを利用することは少なくない。
国内でさえ知らない土地に行ったら場所がわからないのでタクシーを利用することになる場合があるけれども、海外であればなおさらだ。
初めて訪れた国で公共交通を利用して目的の場所にたどり着くのは容易ではない。

私の場合、1978年の8月にアメリカのロサンゼルスに行ったのが最初の海外旅行であった。
当時まだ高校生だった私は日本交通公社のLOOKというツアーに入れられて、ロサンゼルスでの移動はほとんど日本交通公社が段取りしたツアーバスなのであった。
ツアーの間の自由時間はロサンゼルスに住んでいる日系人の親類の伯父さんとおばさんが私をあちらこちら連れ回してくれた。
したがって初めての海外旅行はまったく公共交通を利用することが無かった。

初めて海外で公共交通を利用したのは20年前に初めてシンガポールを訪れた時であった。
使ったのは、地下鉄。
地下鉄なので迷うこと無くホテルの近場の駅から乗ってオーチャードまで買い物に出かけた。
この時は友達の結婚式に出席するために行っていたということもあり、同行の知人友人も少なくなかった。
だから一緒に路線バスに乗ってジョホールバルからシンガポールまで移動したり、シンガポール国内でも路線バスに乗ったりしたのだが、そういうことが出来た最も大きな原因には英語が話せるようになっていた、ということがある。
1978年のアメリカ訪問の時には英語などからっきし話せなかったのだ。

シンガポールではタクシーも利用したが、タクシーを本格的に利用したのはタイを訪れてからであった。



タイを始めて訪れたのは、前述のシンガポール在住の友人宅へ行く途中に「ついで」で寄ったのが初めてだった。
当時は大阪発バンコク経由シンガポール行きのシンガポール航空が飛んでいて、バンコク途中下車でもチケットが同じ料金だったのでバンコクに立ち寄ったのであった。
なんといっても、シンガポールへ行く目的が「飲もか」という、梅田か心斎橋へ行って飲もかという感覚で出かけたので、荷物は小さなリュックに着替えを2着。
あとはカメラを1台。
宿の予約もせずに数日前に旅行社で格安チケットだけを購入し、関空からシンガポール航空に乗った。
宿はバンコクのドンムアン空港のホテル予約窓口で確保。
「ロイヤルホテル」
という名前のホテルを予約したのだが、名前に反して一泊料金はわずか900バーツ。
日本円にして3000円ほどなのであった。

初めての国を訪れるというのは小さな緊張感がある。
まして一人で訪れると結構緊張するので、喉も乾いたことだし、まずは小銭も欲しいことからドンムアン空港の売店でコーラを注文して飲んだ。
このコーラに氷が入ってったのだが、飲み終わってから、
「おおおお、氷入ってたけど、大丈夫かいな」
と氷の清潔度を心配する有り様なのであった。
その時私はバンコクの衛生度を非常に悪く考えており、ガイドブックに書かれている「生水は飲まない」「氷の入っているものは食べない」などということをストレートに信じており、到着後早くも氷入りコーラを飲むくらい緊張していたにも関わらず、その氷に対する配慮がすっかりのけ落ちていたのだった。
なお、当然のことながら、そんな程度で腹をこわすわけもなく、猛烈な暑さでぶっ倒れそうになったことを除けば、至って元気に家に帰ったのであった。

問題はドンムアン空港からバンコク都内の、そのロイヤルホテルへはどうやって行くかなのであった。
ガイドブックには空港からはバス、タクシー、鉄道などの手段があるように書かれていたが、バスは空港バスなら乗れないこともないのだが、緊張していることと、文字がちっとも読めないこととなどが重なり、めんどくさくて乗る気がしない。
鉄道は空港ビルのすぐ前の高速道路の向こう側に駅が見えるのだが、田舎にあるJRの田舎の駅みたいで、
「これも、大丈夫か」
と不安感が先立った。
結局タクシーでロイヤルホテルやらに向かうことにして、空港からタクシーの列にならび黄色のタクシーに乗り込んだのだった。

「ロイヤルホテルまで行って」
と英語で行ってみた。
通じるかどうか心配だったのだ。
なんといってもタイの公用語は当然のことながらタイ語であり、シンガポールのように英語ではない。
したがって。
「もし、言葉が通じなければ、どうするどうする」
とビクビクのもなのであったが、
「ま、なんとかなるやろ」
との感覚があったのであった。
幸いなことに「ロイヤルホテル」は空港で登録されているくらいのホテルなので、タクシーの運転手は頷いて走り始めた。
車窓から眺める初めてのバンコクは異国情緒たっぷり。
シンガポール以外の東南アジアの国に来たのは初めてだったので、興味津々だった。

高速道路の横にはパナソニックの看板が並んでいた。
「お~、やっぱりタイは日本企業が多いんやな」
と感動していると、次にイオンの看板が見えてきて、
「お~、イオン、ってなんや」
と、当時は大阪にはイオンのジャスコやイオンモールなんぞはとほとんどなかったので、イオンが日本の会社であることに、
「たぶん、タイで有名な日本企業なんやろな」
と勝手に思っていたりしたのであった。

ロイヤルホテルは
「王宮に近いところ」
と空港の窓口でリクエストした結果選ばれた。
別に名前で選んだわけではない。
実際タクシーは王宮前のロータリーをグルっと半周して、北東角の王宮前広場がすぐ見えるところにある古ぼけたホテルに到着した。
かなり年季の張っているホテルだったが、確かに立派な外観で、王宮前で「ロイヤルホテル」。
なかなかな宿なのであった。

料金を払ってタクシーを降りた。
蒸し~とした熱気が私を包む。
暑い。
めっちゃ暑いやないかい。

すでに緊張感はどこへやら。
ホテルに着いたのでチェックインをしてさっさと散策をはじめなければならない。
バンコクでの滞在はたった2泊だったので、見て回る時間はあまりない。
もう二度と来ることもないタイなのだから、しっかりと見て回る必要がある。
と私は思った。

ホテルの入り口には弛緩した表情をした男が数人屯していた。
あるものはバイクにまたがり、あるものは車のボンネットに肘をついてタバコを飲んだりしていた。
実は彼らはタクシーの運転手なのであった。
それも、白タクの運転手で、私はうかつにも、このうちの一人を選んでしまい、バンコク観光に出かけることになるのだ。

つづく

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