<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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年をとるとどうしても涙もろくなっていけない。

数年前にNHKドラマ「大地の子」を視聴中にボロボロと涙が止らなくなった。
主人公の妹が中国の極貧の中で息を引き取るというシーンなのであったが、まったくもって「実話に基づいたドラマなんだ」と思うと、やり切れない気持ちになり、さらに涙が止らなくなり、不覚にもいい年こいて泣きじゃくりまで入ってしまったのであった。
家族が私を見て笑ったのは言うまでもないが、その家族も泣いていたので笑う権利は無いように思う。
これ以降、大地の子に限らず、ちょっとしたドラマを見ると涙が流れるという、ある種感受性の疾患にかかっているのではないかと思えるほど感極まることが増えてしまった。

まさか自分が「探偵ナイトスクープ」の西田局長のようになってしまうとは意外であった。

ピクサーアニメーションスタジオの新作「カールじいさんの空飛ぶ家」を見てきた。
不覚にも、冒頭の10分間を見ただけで、涙が流れ止らなくなってしまったのだ。

「ヒック、ヒック」と泣きじゃくりまでしそうになったので「これはヤバい」と思ったが、心の糸に触れてしまったものは仕方がない。
尤も、すぐに場面はピクサーらしい笑えるシーンに変わったので、なんとか泣きじゃくりはやり過ごしたが、今回の「カールじいさんの」にはさすがに参ってしまった。

ピクサーのアニメーションはもしかすると今一番アメリカ映画らしいアメリカ映画なのかも分からない。
毎回エンタテイメント精神に溢れていて、退屈するシーンがまったくない。
音楽もおしゃれだし画面構成もスリリングだ。
そしてなんといってもストーリーが面白い。
奇想天外でスピード感があり、後味も悪くない。
ただ前作の「ウォリー」から大人向けアニメーションの要素が濃くなり単なるハッピーではなくなっているところが、良い意味で重厚さを生み出している。

まさかコンピューターグラフィックスのアニメーションで人生の重さを感じる日が来るとは思わなかったが、「カールじいさんの」はまさにテクニックを超えた他のプロダクションを寄せ付ない魅力を持つに至り、ついにはディズニーアニメーションを飲み込んでしまった凄さがある。
今作は従来にも増して、そんな感想を強く抱く映画になっていたのだった。

なお、「カールじいさん」を「カールおじさん」と誤読していたあなた。
あなたは私か。
カルビーのカールの食べ過ぎには注意しよう。

~「カールじいさんの空飛ぶ家」2009年ディズニー&ピクサー作品 字幕板を観賞 原題:UP~

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