全英連参加者のブログ

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教科書の特殊指定

2006-03-31 06:33:07 | 気になる 教育行政

 3月17日の共同通信によれば、公正取引委員会は16日、独禁法に基づき教科書採択のために出版社が教育委員会関係者に行う売り込みなどの不公正な取引を規制した「特殊指定」を廃止する方針を決め公表した。
 4月17日まで廃止についての意見を一般から募集、その上で廃止手続きを進める。

 文部科学省
 …過剰な宣伝が助長される恐れがあり、慎重な検討を公取委に求めたい。
 公取委
 教科書採択の方法は以前に比べ透明化され、独禁法の一般の規制で十分で特殊なものは要らなくなった。利益供与で教科書採択がゆがめられる恐れも減った。利益供与などがあれば、刑法の贈収賄などで取り締まることができる。

*****

 行政が事前規制から、事後検査に重心を移しつつある。これもその流れだろう。

 教科書のいわゆる営業には制限があることは僕たち教師ならば誰でも知っている。ただ、中学校までの義務教育と高校では状況がかなり違う。
 公立学校の英語の教科書を例にとる。
 中学校の英語は1科目であり、それを3年間に分割して学習している。使用される教科書は7種類(×3年分)であり、広域採択(各都道府県の教育事務所単位による教科書採択)なので個別中学校の教諭には実質的には採択の事務・権限は制限される。(ほとんどない)
 高校の英語は科目数が6科目と多く、各学校のレベル・ニーズに合わせ何十という種類がある。広域採択ではなく、学校別採択である。高校英語は必修科目ではあるが、すべての科目が必修ということでもない。見本も多数学校に送られてくるが、冊数の制限があり、どんなに教科全員でじっくり読みたくても見本は1冊しか送られてこない。
 特殊指定が無くなると、教科書の説明会開催や教科書見本の提供が自由化され、採択にかかわる関係者への営業も規制がなくなる。では、教科書を選定する側の高校としては何が変わるのかな?
 見本がたくさん送られてくるにしても、実質的にはそんなには増えないだろう。これは教科書会社が個別学校での採択実績を知っており、また、その学校で「使えるレベル」はどの教科書かわかっているから、個々の教科書会社が持っているすべての種類(ラインナップ)の教科書を学校に送ってくることはそもそもこれまでもなかった。自由化されればターゲットを絞り込んで営業をすることになるのだろう。自由化って言っても、営業にかけられる人件費、見本の作成費にはそれぞれ限界があるのだから、各教科が教科書見本で埋まることは(笑)なかろう。
 教科書会社の説明会開催はどうか。そんなものに出かけるほど僕たち教師は暇ではない。学期中出張できるとも思えない。土日に開催されても、教科書採択はまさに、「The公務」なので、出かけるには出張扱いにしてもらわねばならない。靖国神社問題でよく出てくるが、僕たち公務員に本当の意味で「個人の資格で参加」はあり得ない。個人の資格(=仕事ではない)で特定の教科書会社の説明会に参加するというのは、見方によっては特定の業者に何らかの便宜供与を図っていることを疑われても文句が言えない行為だからである。そんなことはできない。やっぱりこれはダメだろう。
 報道には教科書出版からは大手が有利になる可能性が指摘されており、とあった。これは現在でもそうだが、論議を呼ぶことは間違いないだろう。実際教科書会社の執筆者の囲い込みも進むと思う。
 僕たち教師の望みは、どんな会社でもいいから、いい教科書である。

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