彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国「福建三大漁女」たちの「花簪」(頭上の花園)風習が今、中国女性たちに大人気です

2024-07-06 10:04:09 | 滞在記

 6月28日(金)の午後、福建省福州市内にある「三坊七巷」に、日本の知人・友人たちにあげるためのジャスミン茶を買うために行った。久しぶりに行った三坊七巷なのだが、中国各地の女性の民族衣装を身にまとって散策している女性の多いことに驚かされた。

 三坊七巷の伝統的な街並みを歩くそれらの女性たちの多くは、頭に大きな花飾り(花簪/花冠)をしている。そして、衣装はさまざまな伝統的なものを、好みに合わせて着ていた。

 三坊七巷の通りにあるカジュマルの1本の樹木はハート❤型に刈込剪定がされてもいた。

 三坊七巷の通りには、レンタル衣装店も数軒。中国各地の伝統的民族衣装が店内に並べられ、多くの女性が、店内で化粧や髪結いと髪飾り、そして衣装を試着している。

 中国の有名女優の一人である趙麗穎が花簪(はなかんざし)を付けて民族衣装を身にまとう大型写真パネルがどの店にも飾られていた。今、中国で一大ブームとなっているのが、この花簪と伝統的民族衣装を身にまとって街並みを散策したり、写真や動画に撮ることだ。

 私がこの巨大な花簪と独特の髪型を初めて見たのは、2017年の2月。福建省龍岩市にある龍岩大学に勤める日本人教員の鶴田さんと福建省泉州市に旅行に行ったときのことだった。(※泉州市は2021年に世界遺産都市に認定されている歴史文化都市。古代から中世、海のシルクロードの起点となった港町。別名は刺桐城。刺桐とはデェイゴのことで、この町はデェイゴが多い。)

 泉州市の古街の中心的な通りにたくさんの露店が並び、地元の女性たちが野菜や果物、肉類や海産物を路上で売っていた。海産物を売っている女性の髪形と髪に飾っている花々が独特だった。こういう女性たちが、まるでその髪型も長年の生活の一部であるかのような自然な光景だった。

 髪に花簪をしているが、その花簪が量的に少ない女性たちもいた。彼女たちも海産物を商っていた。最近わかったのだが、路上で海産物を商っている女性たちは、「福建三大漁女」と呼ばれる、福建省の海岸漁村の女性たち(海の女たち)だった。そして、その「福建三大漁女」は、ここ泉州市の海岸の漁村に集中していた。「恵安女(グイアンメィ)」と「湄洲女(メイジョウメィ)」と「蟳埔女(ジンホーメィ)」。大きな花簪を髪型に飾る海の漁村の女たちの伝統的な風習をもつのが「蟳埔女」だった。

 泉州市内を流れる晋江の大河の河口付近にある漁村の一つが「蟳埔村」。2023年以前にはここの女性たちの習俗である「簪花囲」(髪を花冠で飾る風習)は、全国的には一般的に知られていなかった。

 この「簪花囲」が2023年から中国国内だけでなく海外まで知られるようになったのは、中国の有名女優の一人である趙麗穎(36歳)がこの「簪花囲」をして広告されたことから始まる。燎原(りょうげん)の火のごとく、「簪花囲」はあっという間に中国女性たちの心をとらえたのだった。

 祝日や週末には1日に5万人もの観光客が泉州市の蟳埔村を訪れるようになり、村とその周辺は「簪花囲」の髪型に好みの伝統的な衣装を身に着けた女性たちの散策する光景が出現するようになっている。おりしも、泉州市は2021年に世界遺産都市に認定されたこともあり、市政府は観光にも力を入れ始め、泉州市内には多くのレンタル衣装店が開店したのだった。(※150元[約3000円]で、着物や髪飾り「花冠}などのレンタルができる。)それが、まあ、泉州まで行かなくても福州市内や中国各地の伝統的な古街地区でもレンタル衣装店で「簪花囲」をしている女性たちの姿が出現しているということになる。

 日本の前田敦子さん(元AKB48のセンターで女優)がこの4月下旬に、福建省の泉州市に来て、「簪花囲」にチャイナドレスを身にまとった写真などを撮影した。これも「とても美しい」と、中国のSNSでは評判となっていた。

 ※泉州市の「簪花」は、宋や元の中世の時代から、泉州に伝わる風習。花の冠で髪を飾ることで、女性たちの「希望」と「幸福」への願いが込めたものとされている。

 泉州市に面する泉州湾は、かっては海のシルクロードの中国の起点港だった。イタリアのマルコポーロは、イタリアから陸のシルクロードを通って中国に至った。そして、イタリアに帰るときは、この泉州から船に乗る海のシルクロード航路をとっている。

 この泉州湾の入り口には、崇武城(古城)がある。そしてその城壁に囲まれた城市内には約3万人余りの人々が暮らしている。かってこの城郭は、日本の倭寇などから泉州湾を守るために造営されたものだった。その泉州市崇武地区に行くバスの中には、独特の花笠を被った女性の姿もみられた。

 その独特の花笠の衣装は、ここ崇武地区付近の漁村の女性たちの日常的な伝統的風習衣装だった。竹で組まれた傘に花を飾り、日よけを兼ねた肩までかかるカラフルなスカーフ。

 この風俗衣装もまた、「中国福建三大漁女」の一つである「恵安女」の衣装。私はこの崇武地区(※恵安区)を2015年12月に訪れた。(※閩江大学の学生の、「いとこの結婚式」が泉州市内のこの恵安地区で行われ、招待されて結婚式に参加した。) この花笠がとても美しいので、その学生に頼み購入してもらった。今も私の福州市内のアパートに飾っている。

 福建省は東シナ海の台湾海峡に面していて、とても漁業や養殖業などが盛んな省でもある。「中国福建三大漁女」には、もう一つ、これも泉州の漁村の女たちの衣装習俗の一つだが「湄洲女(メイジョウメィ)」がある。(※私はこの「湄洲女」の人たちは、2017年2月に、泉州市古街地区の露店で見たことがあった。)

 「湄洲女」の花簪を少ししている。彼女たちの伝統的な衣装は趣がある。漁村の女たちは天秤棒を担いで、泉州の街中まで海産物を売りに来ている。まあ、日本の京都にも、花を売りに京都の街中に来ていた「大原女(おおはらめ)」などの女性と似通ったところがあるようにも思う。