彦四郎の中国生活

中国滞在記

「中国新文化運動と中国共産党創立(紅船起航)」に関する展示と「覚醒年代」という中国で大ヒットした歴史ドラマのこと

2024-07-11 11:58:38 | 滞在記

 6月28日(金)の午後、中国福建省福州市内の伝統的建築群エリアの三坊七巷にジャスミン茶を買いに行った時、エリア内にある何箇所かの展示用建物の一つで、中国共産党が創設される時代の「新文化運動」に関する展示会が開催されていた。

 1910年代から20年代にかけて、中国では雑誌『新青年』などが刊行され、北京や上海などを中心に「新文化運動」が起きた。そして、1921年には中国共産党が創設されることにもなる。それらの中心になった重要人物が、陳独秀(ちん・どくしゅう)や李大釗(り・だいしょう)、そして魯迅(ろじん)や蔡元培(さい・げんばい)、胡適(こ・てき)たち。特に、陳独秀や李大釗は中国共産党創立の中人人物となった。(※魯迅以外は、日本では知名度はほとんどないが、中国でも2020年まではあまり知られていなかったかもしれない。)

 私はこの「紅船起航」と題された、特に「新文化運動」を中心とした展示を興味深く見ることとなった。おそらく、中国の人々にとってもこの展示は興味深く、関心をもって見る人が多かったのではないかと思う。若い人の参観者も多かった。なぜ現在、この展示を多くの中国人が興味をもつかというと、2021年に中国中央テレビ局で放映された歴史ドラマ「覚醒年代(かくせいねんだい)」(全43話)を、老若男女、中国の多くの人々が視聴し大反響を呼んだのだった。そのドラマの中心人物がこの「新文化運動」や「中国共産党創立」の中心を担った人たちだからだ。

 このドラマによって陳独秀や李大釗、蔡元培、胡適などの名前は広く中国の人たちにとっても親しみと共に知名度が高まることとなっている。

 陳独秀、李大釗、魯迅、そして、蔡元培、胡適、毛沢東などなど、彼らの実際の写真と略歴などが記されている展示パネル。

 日本でも少し知名度のある郭沫若(かく・まつじゃく)などの写真パネルも展示されていた。(※私は数年前に北京に行った際に、郭沫若が暮らしていた邸宅に行ったことがあった。また、毛沢東が生まれ育った実家にも外国人教員研修で2013年に行ったことがあった。)

    中国の人たちも、「覚醒年代」のドラマでの中心人物たちを演じる俳優たちの顔を思い浮かべながら、展示での本物の写真を見ながら、「ああ、実際の人はこんな顔をしていたのか‥」と、感慨深くこの展示を見ることとなったのかと思う。

 この「紅船起航—新文化運動」のパネル展示を一通り見終わって、三坊七巷の小さな雑貨店(書籍もおいてある)に入ると、習近平著作集がずらりと店の前列に並べられていた。(※習近平国家主席は私より一歳年下の1953年生まれで、今年は71歳になるかと思う。)

■昨年2023年3月に3年ぶりに中国に戻り、このCCTV歴史ドラマ『覚醒年代』(全43回)を視聴した。このドラマは、中国共産党創立100周年を記念して作成されたドラマで、2021年2月から放送が始まったようだ。中国国内のインターネットを通じての視聴なので、もちろん中国語なのだが、字幕で中国語も併記されるので、会話の内容はかなり理解できた。

 このドラマはとても面白く、また、そんなに内容が硬くもなく、歴史ドラマとしてとても視聴しやすかった。また、人気俳優や若い俳優たちも多く、このドラマが中国の若者たちにも大きな支持を得た理由もわかる。とにかく見ていてあきないほど面白いドラマだった。近年では、中国ドラマ史上、視聴率の高さもそうだが、中国中央テレビ(CCTV)としては大成功のドラマ制作だったかと思われる。

 第1回目には、日本の早稲田大学留学中の陳独秀、李大釗などの場面が描かれていた。陳独秀の息子たちやガールフレンドなどのドラマでの描かれかたも、若者たちの支持を受けた要因ともなった。私は個人的には、このドラマで李大釗と北京大学の校長(学長)の蔡元培が好きだ。ちなみに、毛沢東は李大釗のつてで、北京大学図書館の職員に迎えられていて、李を「私の先生」として敬慕していたようすがドラマで描かれている。

 「新文化運動」の中心地となった北京大学。陳独秀は文科長(文学部部長)として迎えられ、李大釗や胡適らも教授として教鞭をとる。ドラマでの北京大学校長を演じた人と、実際の蔡元培とはとても良く似ていた。

 1919年、「五四運動」が北京大学の学生たちを中心として巻き起こった。この運動は、大規模な反日・反帝国主義、反封建主義の抵抗運動。直接的には、日本の「対中21箇条要求」(日本の中国への軍事力を背景としてた帝国主義的、植民地主義的要求)に対する抗議行動だった。これらもドラマでは描かれた。

■このドラマでは、創立100周年を迎える中国共産党創立(1921年)までの1910年からの10年間余り、そして創立に至る時代、そしてその後の10年間余り、つまり20年間余りを中心に、中国共産党の黎明の時代を描いたドラマとなっている。2020年1月から始まった新型コロナウイルス感染拡大、それにともなう中国国内での超厳格な「ゼロコロナ政策」。都市封鎖などにより中国国民の多くは自宅での生活を余儀なくされることも多く、2021年2月から始まった「覚醒年代」は、ドラマの面白さとともに高い視聴率得ることともなった。

■1921年7月に中国共産党は創立された。第1代委員長は陳独秀。創立メンバーは57人(58人という説もある)だが、そのうち3分の1余りのメンバーは、日本に留学経験のある人たちだった。当時、中国からの日本留学生が最も多かったのが早稲田大学。早稲田は1899年に清国留学生部を設置するなど、中国からの留学生受け入れ体制が整ってもいたようだ。このこともあり、現在の中国の大学生にとって、有名で留学したい大学の筆頭は早稲田大学、次いで東京大学となっている。

■李大釗は、早稲田大学留学時代に、日本の社会主義者だった安倍磯雄や、京都帝国大学でマルクス経済学の研究を行っていた河上肇らを信奉。かれらの影響を強く受け、彼らの著作を日本語で読み漁ったといわれている。これらを歴史的にみると、➀マルクス➡➁河上肇➡③李大釗➡④毛沢東➡‥‥‥‥‥➡習近平などの流れとなってもいるのかもしれない。

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 2021年7月、中国は「中国共産党創立100周年」を迎え、全国各地で行事が行われた。そして、2024年6月30日、中国共産党は昨年末(2023年12月末)時点での党員数が9918万5千人になったと発表した。1億人の党員数が目前となっているようだ。(※党員で最も多い年齢層は61歳以上の2787万2千人。30歳以下の党員は1241万2千人。女性党員の全体の割合は約3割。)

 2023年4月、閩江大学の教室でのようす。教室の後ろの小さな黒板には、「学習 二十大 青春向未来」「学習貫徹二十大 奮闘譜写 新編章」「学習 二十大」「喜迎二十大 永遠党走」などの標語スローガンが書かれてもいる。このような光景は中国のどこの大学でも見られるようだ。(※「二十大」とは、2022年10月に開催された「中国共産党第二十回党大会」のこと。)