長屋茶房・天真庵

「押上」にある築60年の長屋を改装して
「長屋茶房・天真庵」を建築。
一階がカフェ、2階がギャラリー。

こころ温まる暖房

2015-12-09 08:24:38 | Weblog

昨日は横浜からやまだくんが蕎麦を手繰りにこられた。

「元気シール」の不思議なTQ技術をやっている人だ。おやじさんから引き継いだ

技術で、今の物理学では説明がしつくない技術。簡単にいうと、花が咲く、という自然界の中

で、不思議なエレルギーを人工的に作り、転写する技術。「花のある人」という言葉とおなじくらい

わかるようなわからないような、「くくり」が難しい。でもこの世の中、年を重ねれば重ねるだけ、

ある分野のことを深く知ろうとすればするだけ、わからないことのほうが多くあることが、わかる。

やまだくんの技術を応用していろいろな商品を開発する若社長と二階にあがって「夢」を語りあった。

若いのに「火鉢」に興味をしめした。火鉢のぬくもりがわかる人は、こころがわかる人でもある。

この火鉢は大塚の骨董屋が、愛用不買で「まだ売りたくない」といい続けるのを説得して、始めたばかりの「天真庵」

の空間に嫁いできたものだ。欅でつくられていて、四方に縁側みたいに8cmくらいのへりがある。 

五徳に鉄瓶をのせ、湯けむりがあがるころに急須に煎茶を入れ、そのへりに茶托と煎茶椀をのせお茶

を飲む幸せは、筆舌無用の世界だ。もちろん鉄瓶の蓋をあけ、そこに徳利を入れ、人肌になる酒を飲むと、壺中天の

幸福を手に入れることができる。昔から炭で暖をとる器のことを「手あぶり」といった。たかが知れている日本の冬だけど、

スイッチひとつで春風が吹く便利さに慣れた輩には、「てあぶり」に幸せさは、わかるすべはなかろう。

築70年になる天真庵の冬は「スースースー」だ。朝一番の仕事は、炭をおこすことから始める。

炭がおきたら、そこに土鍋をかけ、水とこんぶと大根をいれ、五徳にのせる。そばを打っていると、大根と

昆布が静かに歌いはじめるような香りが伝わってくる。「五徳」・・・暖をとる、煮る、焼く、薫る、炎を愛でる・・

五つではおさまらないくらい、いっぱいの徳があるように思う。冬の寒い中、炭の上に鉄瓶や土瓶や鍋を置き、

端坐して談論風発した友たちの顔を思い浮かべるだけで幸せいっぱい胸いっぱいである。

今日も夕方に「座敷でそば遊び」をやるので、今朝はやく蕎麦を打ち、冷え込む手を温めながら火鉢の鉄瓶

の湯けむりを待ち、これまた20年愛用している久保さんの急須で煎茶を飲んだ。これからしばらくは

日本は斜陽で今の経済学からいうと右肩下がりになりそうな気配。それが自然であるならば、先人たちに習い、

不便ではあるが、貧を楽しむ生活に波動をあわせるのも一考だと思う。それぞれ勝手な価値観で、ひとさまは

どう思うか知るよしもないばってん。