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<寄稿>新しい在留管理制度施行…在日児童・生徒にも影響

2012-07-12 13:22:58 | 多文化共生
(以下、民団新聞から転載)
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<寄稿>新しい在留管理制度施行…在日児童・生徒にも影響 2012-07-11

小西和治 全国在日外国人教育研究所 事務局長

 9日から施行された新しい在留管理制度は在日同胞児童・生徒にも大きな影響を与える。また、重大な問題点も内包していることが明らかになった。これらから子どもたちを守るため、特に大切だと思える4点について、全国在日外国人教育研究所の小西和治さんが寄稿した。

教育関係者と保護者へ注意喚起
「卒業証書、指導要録に本名記載を」

 16歳以上の者がこれから携帯することになる「特別永住者証明書」「在留カード」には通称名の記載が無い。従来から各地の教育委員会は、学校が作成する公文書は全て本名(民族名)という基本方針を持っていた。今後この方針をさらに徹底させないと、パスポートや特別永住者証明書等と学校発行文書の間に矛盾が生じ、せっかくの卒業資格の活用が困難になることも起こりえる。

 かつて、卒業証明書の名前とパスポートの名前の相違により、海外留学のチャンスを逃した者が存在した。また、学校発行の公文書である卒業証書に通称名しか記載されておらず、外国人登録証明書の名前と一致しないため、本人との同一人性の証明ができず、薬剤師や医師等の国家試験の受験が1年遅れたという悲劇も発生した。

 このままでは、このような「事件」の頻発が想定される。卒業証書をはじめとする学校発行の公文書に本名が正しく記載されなければ、子どもたちが、卒業時点では想定していなかった被害を将来、受ける「事件」の増加が心配される。

 総務省「外国人住民に係る住民基本台帳制度への移行等に関する実務研究会」の配布資料に、通称名のみの住民票は発行されないことが明記されている。学校が発行する公文書も、このようにする事を各地で求めていく必要があろう。

 学校の児童・生徒や卒業生にとって、基本的な公文書は指導要録である。万一、これに通称名しか書かれていないと、学校は日本人であると誤解し、とんでもない結果が発生する。

 高校を例にとると、一部の学校で実施されている外国人生徒向けの新在留管理制度の説明が受けられない。また、海外修学旅行のための旅券取得が間に合わない、財団法人朝鮮奨学会の奨学金の書類が配布されない、外国人向けの学校生活や進路についての教育の対象にされず、高校や都道府県単位で活動が散見できる同胞高校生の集いの案内からも排除され、一生の損失となる事もある。 その悲劇の最大のものが、前述した通称名のみが記載された卒業証書の発行であろう。

 新在留管理制度施行前は、外国人登録原票のデータを、学校が教育資料として活用する事が困難であった。ところが、住民基本台帳に外国人も掲載され、学校は校長を通じて、自治体から外国人児童・生徒の本名、在留資格、保護者の法的地位などの情報を入手することが容易になった。この情報を、指導要録の本名(民族名)記載をはじめとする、外国人児童・生徒が外国人として堂々と生きていくための教育に活用する事ができるようになったのである。

 外国人と日本人で構成されている家庭も、今度、初めて同じ住民票に記載されることになった。その結果、ダブルの子どもや、家族のうち誰かが外国籍である子どもの把握が可能になり、このデータを市民課↓教育委員会↓校長のルートで学校に届くシステムを構築しようとしている自治体もある。外国にルーツを持つ子どもを尊重し、在日外国人教育を充実させる取り組みである。

 入管法改定により、手続きミスや遅延に対する罰則が強化された。新制度を教員は正しく学習して、保護者のうっかりミスや16歳の初切替えに対する無知によって、子どもが不利益を被ることがないように配慮する必要がある。切替え時には、従来のような自治体からの事前通知はなくなる見込みである。出頭の時期も、場所も、旧制度とは異なる。高校生はもちろんのこと、中学生への事前指導も必要である。

 全外教研究所では、「研究紀要・在日外国人教育」第四号(本年8月発行)に「新在留管理制度が学校現場に与える影響」と題して、教員・保護者として知らねばならない基礎知識を詳しく説明した文章を掲載することを決定している。

(2012.7.11 民団新聞)

新在留管理制度7月9日導入、「非正規滞在者へ許可を」

2012-07-08 19:07:38 | 多文化共生
(以下、カナロコから転載)
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新在留管理制度7月9日導入、「非正規滞在者へ許可を」 研究者らが訴え
2012年7月8日

記者会見で「非正規滞在者に在留特別許可を認めてほしい」と訴えるNGO関係者=東京都千代田区

 新制度では、自治体が担ってきた外国人登録制度を廃止し、在留資格を持った外国人のみに在留カードを発行。ビザを持たずに暮らす約7万人の非正規滞在者の情報を行政は把握しなくなり、これらの人々の身分証明はできなくなる。

 会見では、連絡会と移住連の共同代表でカラバオの会(横浜市)の渡辺英俊さんが、罰則など監視体制を強める内容の新制度について、背景に排外主義があると指摘。「国際的にゼノフォビア(外国人嫌悪)はアパルトヘイト(人種隔離政策)に続く新しい人種差別の形態とされる。だが、日本ではこれが犯罪と理解されていない」とした。

 連絡会共同代表で一橋大名誉教授の田中宏さんは、外国人の登録申請の義務は在留資格には全く関係ない―とした判例を紹介。さらに「これだけ大きな制度改正をするならば、在留資格がない人の在留を認めるアムネスティ(恩赦)程度のことはすべき。そういったことをこれまで一切していないのは、日本ぐらいだ」と訴えた。

 新たな在留管理制度の導入を9日に控え、外国人を支援するNGO3団体が7日、東京都内で記者会見した。研究者など7人が参加。新制度では、非正規滞在の外国人が「存在しない者」として扱われることになり、参加者らは「非正規滞在者はまじめに働き、暮らしている。在留特別許可を認めて」と訴えた。「外国人人権法連絡会」「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)などの主催。

規制厳格化に疑問の声 新在留管理制度

2012-07-08 19:07:10 | 多文化共生
(以下、沖縄タイムス新聞から転載)
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規制厳格化に疑問の声 新在留管理制度

2012年7月8日 09時51分
(9時間4分前に更新)

 9日から始まる外国人の新しい在留管理制度に、県内で暮らす外国籍の人々から疑問の声が上がっている。引っ越し時に「転出届」を怠ると在留資格が取り消される場合があるなど規制が厳格化されたからだ。背景には不法滞在者の排除があるが、外国人の生存権に関わると批判も上がっている。新制度導入直前まで詳細を知らない人も多く、制度に関わる入国管理局や市町村の周知不足を指摘する声もある。(黒島美奈子)

 新制度は外国人登録制度を廃止。これまでは不法滞在者にも交付されていた証明書を無くし、正規滞在の外国人に限り住民基本台帳に載せて管理する仕組み。県内で対象となる外国人は2011年10月1日現在、約60カ国7815人。滞在する外国人にとって重要な制度改正となる。

 だが、16年前来県したブラジル県系人で同国籍の平良ソニアさん(48)は今年6月末、知人から聞くまで制度改正を知らなかった。

 新たに住民基本台帳へ記載される個人情報の確認が5月、那覇市から郵送されたが「これまでの制度がどのように変わるのか情報は記載されず、新たな手続きが必要なのかどうかも分からない」と不安げに語る。

 在日本大韓民国民団沖縄地方本部の金美敬(キムミギョン)事務局長も「情報があまりにも少ない」と不満顔だ。市町村から個人情報確認が届き始めた5月に入り、同本部には問い合わせが増えた。

 例えば中長期滞在の外国人へ新たに発行される在留カードは、現行の証明書にある日本での通称名が併記されない。通称名で預金口座を持つ外国人も多く、金さんは「外国人の暮らしに直結する制度改正であり、せめて住民説明会が必要」と訴える。

 米国人の男性(50)は「まるで外国人を犯罪者のように扱う制度改正だ」と疑問視する。今改正で外国人が働く企業や就学する学校は、法務省への届け出が必要になった。

 男性は「不法滞在者を減らすというが、さまざまな理由で仕方なく不法滞在している外国人が行く当てもなく地域から締め出されるやり方で、国際法上も疑問」と指摘。「学校や職場など社会のあらゆる機関を使って、合法的に暮らす外国人までも監視し、暮らしにくくする制度だ」と批判した。

 法務省福岡入国管理局那覇支局は「制度改正は合法的に暮らす外国人の利便性を高める側面もある。合法的に滞在する外国人であれば定期的に行政窓口につながるはずで、制度改正は徐々に周知できる」と説明している。

日系ブラジル人「第2世代」中川大臣招き集会 浜松学院大

2012-07-08 19:06:45 | 多文化共生
(以下、静岡新聞から転載)
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日系ブラジル人「第2世代」中川大臣招き集会 浜松学院大
(2012/7/ 8 08:37)

 浜松学院大は7日、日系定住外国人施策に取り組む中川正春内閣府特命担当相を招き、同市に住む日系ブラジル人の若者との対話集会を同市中区の同大で開いた。出稼ぎで来日した両親を持つ「第2世代」と呼ばれる若者たちが日本に定住する上での課題と必要な支援について話し合った。鈴木康友市長ら行政関係者や一般市民約50人が傍聴した。
 第2世代側からは「日本語の壁やいじめ、学費の問題などで不就学の子供が出る。外国人にも義務教育制度を適用してほしい」などの意見が出た。「高校や大学を出ても“派遣”でしか働けない」と雇用の不平等を指摘する声も多くあがった。
 中川担当相は「日本社会には確かに差別があり、制度の見直しが必要な部分もある。しかし、諦めずに可能性を見つけてチャレンジしてほしい」などと呼び掛けた。
 進行役を務めた市民団体「マイノリティー ユース ジャパン」のパブロ・ナダヨシ・ロリン代表は「第2世代側からも距離を縮める努力が必要。今後も声を発信していきたい」と感想を話した。

日本語ボランティア求む 四日市国際交流センター

2012-07-08 19:06:20 | 多文化共生
(以下、中日新聞【三重】から転載)
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日本語ボランティア求む 四日市国際交流センター

2012年7月7日


ボランティア(左)に教わりながら漢字の練習をする外国人の生徒=四日市市の四日市国際交流センターで
写真

 四日市市役所北館5階にある四日市国際交流センターで、外国人に日本語を教える市民ボランティアが、土曜と日曜日に慢性的に不足している。双方の思いが一致しないのが要因だが、求職活動や生活のため日本語習得を望む「待機生徒」も生まれており、センターは週末のボランティア確保に努めている。

 この取り組みは十三年前から始まり、現在は大学生から八十代の八十三人がボランティアで活動。外国人とペアになり、レッスンの時間を合わせて週に一回実施。平仮名や漢字の書き方、敬語の使い方などを教えている。

 センターによると、平日は働き、週末に学びたい外国人が多いが、週末に開いている学習施設はほとんどない。一方、ボランティアは主婦や定年退職した男性が中心で、週末は家族サービスに充てる人が多い。六日現在、八人の外国人がボランティアを待っている。

 センターは、四~五人のグループ学習や一人のボランティアに一日で複数人を教えてもらうなどの対策を進める、ただ、グループだと日本語の理解度に差が出たり、レッスン時間が合わなかったりして、「待機生徒」の解消に至っていない。

 週末の人員確保は思うに任せないが、ボランティアからは「毎回新しい発見があり、教える側も勉強になることが多い」といった声も聞かれる。

 センターは七月下旬~八月上旬にボランティアによる授業を公開して様子を知ってもらう新たな取り組みを計画。担当者は「専門的な資格や知識は要らないので、一度のぞきに来てください」と呼び掛けている。

 問い合わせは、四日市国際交流センター=電059(353)9955=へ。

 (加藤健太)

子どもの更正「ひきこもり」がもっとも困難…内閣府が支援者調査

2012-07-08 19:05:48 | ダイバーシティ
(以下、ReseMomから転載)
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子どもの更正「ひきこもり」がもっとも困難…内閣府が支援者調査
2012年7月6日(金) 17時02分

 内閣府は7月4日、困難を有する子どもの支援者調査報告書を公表した。困難を有する子どもを支援するうえでもっとも大変だったと感じたケースは、「ひきこもり」(28.7%)がもっとも多く、次いで「不登校」(19.5%)、「発達障害」(9.5%)という。

 2010年4月に「子ども・若者育成支援推進法」が施行され、ニートやひきこもり、不登校等の社会生活を円滑に営むうえで困難を有する子ども・若者に支援が必要になっている。そこで内閣府では、困難を有する子どもの支援者2,856人(714法人)を対象に、2011年10月3日~11月10日に調査員による訪問留置・訪問回収法を実施した。困難を有する子どもの支援者を対象とした調査は、国レベルとしては初という。なお、2012年4月1日現在、内閣府で把握している支援地域協議会の設置状況は、36か所である。

 支援開始時の年代は、「中学生以下」(35.0%)、「10歳代後半(中学卒業後)」(18.9%)となっており、20歳未満が5割以上(53.9%)を占めている。「中学生以下」から支援を開始した子どもの状況を見ると、「不登校」(34.9%)がもっとも多かった。

 支援対象者本人が抱えていた問題については、「こころの不安定さ」(82.4%)、「コミュニケーション能力の低さ」(80.0%)、「人と関わることへの不安」(77.7%)、「自己表現力の低さ」(75.3%)、「同世代からの孤立」(74.6%)の順で多かった。

 生育上の経験については、「不登校を経験した」(57.3%)、「学校や職場に友人がいなかった」(54.7%)、「学校や職場でいじめを受けた」(45.5%)、「学校の授業が理解できなかった」(43.4%)の順で多かった。

 支援対象者の家族が抱えていた問題については、「過干渉」(45.4%)、「両親の不仲」(36.7%)、「子どもに障害があるが、その受容ができない」(36.7%)、「子どもへの依存」(35.0%)の順で多かった。

 支援に関する課題として、「行政機関の理解・協力を得ること」(43.6%)がもっとも多く、次いで「支援対象者を発見し接触すること」(32.4%)、「就労先を開拓すること」(28.9%)、「教育機関との連携を強化すること」(28.0%)という結果が得られた。
《工藤 めぐみ》

災害時の外国人支援へ 11日に防災セミナー

2012-07-06 09:07:56 | 多文化共生
(以下、佐賀新聞から転載)
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災害時の外国人支援へ 11日に防災セミナー

 佐賀県国際交流協会は11日午後1時半から、県庁で「多文化防災セミナー」を開く。東日本大震災から15カ月。被災地で実際に取り組んだ外国人支援活動の報告を基に、災害時に備えた在住外国人の支援策や今後の課題を考える。

 県内の外国人登録者数は4208人(2011年末現在)。災害発生時の外国人支援策や互いの文化の違いを認め合う「多文化共生」の考え方を学び、万が一に備える。

 講師は、仙台国際交流協会の高平尚子さんと仙台市災害時言語ボランティアの遠藤弘信さん。被災自治体やボランティアによる外国人支援、被災地以外の自治体や民間団体との連携などを報告し、参加者同士で意見交換して災害時の外国人支援の在り方や考え方を共有する。

 聴講無料。定員50人。問い合わせは県国際交流協会、電話0952(25)7921。
2012年07月05日更新

災害弱者に地域の絆を 映画で考える震災避難手段

2012-07-06 09:07:30 | ダイバーシティ
(以下、東京新聞【神奈川】から転載)
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災害弱者に地域の絆を 映画で考える震災避難手段
2012年7月6日


 聴覚障害者など災害弱者の震災避難手段を考える「辻堂ビーチフェスタ2012」が七日午後六時から、藤沢市の辻堂海岸で初めて開かれる。東日本大震災の被災地では、大津波警報を聞き取れなかった聴覚障害者が、近所の人の連絡で難を逃れたケースがあったといい、実行委員会の阿久津真美委員長は「今後十年にわたってフェスタを開き、地域の絆を根付かせる活動にしていきたい」と意気込む。 (加藤木信夫)

 フェスタでは、老人ホームなどで演奏活動をしているセミプロの生ライブに続き、映画「珈琲(コーヒー)とエンピツ」の上映会と出演者らによるトークショーがある。

 六十七分間の映画は、耳の不自由なサーフショップ経営太田辰郎さん(50)がコーヒーで客をもてなしたり、筆談で客とやりとりする様子を記録したドキュメンタリー。やはり耳の不自由な映像作家今村彩子さんがメガホンを取った。

 今村さんは「被災地のろう者を取材し、『防災で一番大切なのは地域の絆』と聞いた。地域の人間関係が希薄になった現在だからこそ、この映画には意味がある」とコメントしている。

 会場は三百人収容で、入場料は一般が千三百円、小中学生は七百円。

 問い合わせは阿久津実行委員長=電080(5648)5054=へ。

記者の目:改正入管法施行

2012-07-05 09:51:13 | 多文化共生
(以下、毎日新聞から転載)
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記者の目:改正入管法施行=河津啓介(西部報道部)

毎日新聞 2012年07月05日 00時25分

 7月9日に改正出入国管理法が施行され、外国人の在留管理制度が一新される。60年続いた外国人登録制度が廃止となり、日本人と同じ住民基本台帳への登録が可能になる。国によると新制度は、外国人の正確な所在把握などを目的とする。しかし外国人支援団体は「締め付けが強化され、悪意のない外国人まで処罰されかねない」と危惧している。既に200万人を超える外国人が日本社会を支える。外国人を「管理」するだけでなく、彼らの文化的背景を尊重し、権利を保障する「共生」に向けた法整備が必要だ。

 外国人の住民情報はこれまで入国管理局が入管法、自治体が外国人登録法に基づき、それぞれ管理していた。新制度は入管に情報管理を一元化し、住所や勤務先などの継続的な把握を目指すという。
 ◇罰則厳しく、出国処分も

 制度一新で厳しくなるのは住所の登録、変更届を巡る罰則だ。現制度では、14日以内に自治体に住所を届けなければ20万円以下の罰金を科せられる。改正法施行後は、それに加え、在日コリアンら特別永住者を除き3カ月を超えて滞在する中長期在留者は無届け状態が90日を超えると在留資格取り消しによる出国処分を受ける。懸念されるのは在留外国人への周知不足で、自覚のないまま違法状態に陥るケースが出ることだ。自治体に登録した住所と現住所が異なる外国人は相当数存在する。各自治体は5月以降、住民票を作るために外国人登録の住所に仮住民票を郵送したが、「宛先不明」による返送が相次いだ。毎日新聞が先月、20政令市を調査した結果、送付した仮住民票41万4677通のうち、約7%の2万8568通が返送されてきた。川崎市など3市は返送率が1割を超えた。国が定めた約2カ月の準備期間は短く、大半の自治体に「不明」外国人の正しい住所を調べ、新たな住民票に反映させる余裕はない。

 正確な住所の把握は、外国人が教育、医療などの行政サービスを滞りなく受けるためにも必要だ。だからといって、長年かけて築いた日本での生活を奪う罰則はあまりに重い。入管は「個別の事情を勘案し、機械的に適用しない」と述べているが、裁量に委ねる部分が大きい不透明な制度になれば、無用な不安、混乱が生まれるだろう。せめて周知漏れを防ぐために3年間は猶予期間にすべきだと考える。
 ◇「非正規」排除、制度の死角に

 改正法の問題点は他にもある。これまでは非正規滞在の難民申請者や超過滞在者にも外国人登録は認められてきた。それにより義務教育や予防接種、入院助産などの住民サービスを受けることができた。だが、新制度では住民票はもちろん外国人登録証明書に代わる「在留カード」も交付されない。制度の死角で悪質なブローカーなどの暗躍を助長し、治安面でも問題を抱えることになりはしないか。

 国は新制度でも非正規滞在者に認めていた最低限の権利は保障するという。ならば、なぜ住民サービスの根幹となる住民登録から排除するのか。非正規滞在者が把握できなくなれば、自治体は就学通知などを送れなくなる。苦境に立たされるのは、子どもたちのような弱者だ。

 韓国政府は90年代に日本の外国人研修制度に似た「産業研修生」名目の外国人労働者受け入れを始めたが、劣悪な待遇などが社会問題化し、04年から相手国と2国間協定を結んで単純労働者を受け入れる「雇用許可制」に移行した。その後、韓国では農村部の嫁不足などから国際結婚による移住者も増大し、07年に「在韓外国人処遇基本法」、08年に「多文化家族支援法」を相次いで制定し差別禁止や教育、社会適応への支援を明文化した。政府が主導して権利を保護し摩擦や社会不安の種を取り除こうとしている。

 一方、日本は「単純労働者は受け入れない」という方針を維持しながら、「実習生」という名の安価な労働力として外国人を利用する、ごまかしを続けている。07年には入国審査で来日外国人の指紋、顔写真提供が義務づけられ、外国人登録法で一度は廃止された指紋採取が事実上復活するなど、近年は管理強化ばかり目につく。

 定住化で生じる教育、雇用、地域融和などの課題は出入国政策の引き締めだけでは解決しない。自治体の中には独自の支援に取り組み、宮城県などのように多文化共生社会の推進を条例化した例もあるが、国の動きはあまりに鈍い。外国人を「生活者」として扱い、社会に溶け込める施策を講じてこそ、少子化が進む日本社会に新たな活力や地域の安定などの恩恵が生まれるはずだ。

外国人留学生の就職支援 求人情報や相談のサービス拡大

2012-07-05 09:50:38 | 多文化共生
(以下、産経新聞から転載)
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外国人留学生の就職支援 求人情報や相談のサービス拡大
2012.7.5 07:48

パソナが今年1月に開催した外国人留学生のための合同企業説明会「JOB博」。多くの留学生が参加した=東京都千代田区(同社提供)

 企業の海外事業展開を支える人材として、日本の大学で学んでいる外国人留学生に注目が集まっている。ただ、日本企業への就職に関心を持つ留学生は増えているものの、「就職活動のやり方がよく分からない」といった声も目立つ。こうした中、留学生に企業の求人情報を提供するなど両者を橋渡しするサービスが広がっている。(竹岡伸晃)

                   ◇


新興国への期待


 大手化学メーカーの日東電工(大阪市北区)は今年4月、初めて留学生を本格的に採用した。本社採用の総合職48人のうち6人が中国からの留学生。いずれも大阪大や早稲田大などトップレベルの大学の修士課程で学んだ人材だ。同社の採用担当者は「海外売上高の割合が約7割となり、人材の多様性を高める必要があった。今後も積極的に留学生を採用していきたい」と力を込める。

 国内経済が伸び悩む中、アジアなどの新興国に活路を求める日本企業。各国で市場開拓や生産管理を担当したり、現地と本社を結んだりする人材として期待が高まっているのが外国人留学生だ。

 人材サービス大手のパソナ(東京都千代田区)は、留学生の多い大学に出向き、就職に関する相談に乗るサービスを行っている。就職活動全体の流れに加え、エントリーシートや履歴書の書き方、面接を受ける際の服装や言葉遣い、自己PRの仕方などを具体的に説明。「総合職として入社し、ある程度時間をかけて昇進していく」という日本企業でのキャリア形成の概要についても伝える。

 留学生が同社に登録すれば、採用意欲のある企業の紹介を受けることもできる。市川知之グローバル事業部長は「新卒を一括採用する日本企業の採用は独特で、留学生には分かりにくい。就職活動を支援することで、留学生が卒業後活躍する場が広がれば」と期待を示す。

 リクルート(同)は昨年12月、留学生向けの就職サイト「リクナビグローバル」(https://r-ship2.jp/2013/global/)を開設した。利用時には、名前、大学・大学院での研究内容、日本語や英語の能力、希望する職種・業種、日本企業で働きたい理由などを登録。企業側からメールで、就職関連のセミナー情報や面接の案内などが届く。就職活動のノウハウや内定を獲得した先輩留学生の「必勝法」なども学べるという。

 サイトを立ち上げた新卒事業本部の池野谷康充部長は「留学生の登録は伸びており、メーカーやIT(情報技術)系、流通など幅広い業種・規模の企業が関心を示している」と手応えを話す。

 出身国を限定してきめ細かいサービスを行っているのは、外資系人材サービス会社のアデコ(港区)だ。今年3月以降、日本にあるベトナム、タイの留学生団体とそれぞれ契約を結び、留学生に求人情報などの紹介を始めた。元留学生の社員を専任担当者として置き、経験を生かした助言やメンタル面のサポートなども行う。

 「日本企業が生産拠点や市場として進出を進めており人材へのニーズが高い」(同社)両国を対象に選んだ。今後もインドネシアなど新興国の留学生を中心にサービスを拡大していく考えだ。

                   ◇

 ■留学生採用、今後も増加?

 日本学生支援機構のまとめによると、平成23年度の外国人留学生(大学や大学院など)は13万8075人。東日本大震災の影響で前年比2.6%減だが、「増加傾向は続いている」(留学生事業部)。

 一方、24年春卒業の大学生・大学院生の就職状況をまとめたリクルートの「就職白書2012」では、企業(774社)の20.9%が外国人留学生を採用。従業員1000人以上(287社)では33.1%に上った。同社の就職情報サイト「リクナビ」の岡崎仁美編集長は「優秀でチャレンジ精神が旺盛、出身国の事情にも通じている外国人留学生の採用は今後も増えるだろう。ただ、日本人と異なり、『一生一社で働く』感覚は薄いため、昇進・昇給などの将来像を具体的に示す必要がある」としている。