多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

記者の目:改正入管法施行

2012-07-05 09:51:13 | 多文化共生
(以下、毎日新聞から転載)
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記者の目:改正入管法施行=河津啓介(西部報道部)

毎日新聞 2012年07月05日 00時25分

 7月9日に改正出入国管理法が施行され、外国人の在留管理制度が一新される。60年続いた外国人登録制度が廃止となり、日本人と同じ住民基本台帳への登録が可能になる。国によると新制度は、外国人の正確な所在把握などを目的とする。しかし外国人支援団体は「締め付けが強化され、悪意のない外国人まで処罰されかねない」と危惧している。既に200万人を超える外国人が日本社会を支える。外国人を「管理」するだけでなく、彼らの文化的背景を尊重し、権利を保障する「共生」に向けた法整備が必要だ。

 外国人の住民情報はこれまで入国管理局が入管法、自治体が外国人登録法に基づき、それぞれ管理していた。新制度は入管に情報管理を一元化し、住所や勤務先などの継続的な把握を目指すという。
 ◇罰則厳しく、出国処分も

 制度一新で厳しくなるのは住所の登録、変更届を巡る罰則だ。現制度では、14日以内に自治体に住所を届けなければ20万円以下の罰金を科せられる。改正法施行後は、それに加え、在日コリアンら特別永住者を除き3カ月を超えて滞在する中長期在留者は無届け状態が90日を超えると在留資格取り消しによる出国処分を受ける。懸念されるのは在留外国人への周知不足で、自覚のないまま違法状態に陥るケースが出ることだ。自治体に登録した住所と現住所が異なる外国人は相当数存在する。各自治体は5月以降、住民票を作るために外国人登録の住所に仮住民票を郵送したが、「宛先不明」による返送が相次いだ。毎日新聞が先月、20政令市を調査した結果、送付した仮住民票41万4677通のうち、約7%の2万8568通が返送されてきた。川崎市など3市は返送率が1割を超えた。国が定めた約2カ月の準備期間は短く、大半の自治体に「不明」外国人の正しい住所を調べ、新たな住民票に反映させる余裕はない。

 正確な住所の把握は、外国人が教育、医療などの行政サービスを滞りなく受けるためにも必要だ。だからといって、長年かけて築いた日本での生活を奪う罰則はあまりに重い。入管は「個別の事情を勘案し、機械的に適用しない」と述べているが、裁量に委ねる部分が大きい不透明な制度になれば、無用な不安、混乱が生まれるだろう。せめて周知漏れを防ぐために3年間は猶予期間にすべきだと考える。
 ◇「非正規」排除、制度の死角に

 改正法の問題点は他にもある。これまでは非正規滞在の難民申請者や超過滞在者にも外国人登録は認められてきた。それにより義務教育や予防接種、入院助産などの住民サービスを受けることができた。だが、新制度では住民票はもちろん外国人登録証明書に代わる「在留カード」も交付されない。制度の死角で悪質なブローカーなどの暗躍を助長し、治安面でも問題を抱えることになりはしないか。

 国は新制度でも非正規滞在者に認めていた最低限の権利は保障するという。ならば、なぜ住民サービスの根幹となる住民登録から排除するのか。非正規滞在者が把握できなくなれば、自治体は就学通知などを送れなくなる。苦境に立たされるのは、子どもたちのような弱者だ。

 韓国政府は90年代に日本の外国人研修制度に似た「産業研修生」名目の外国人労働者受け入れを始めたが、劣悪な待遇などが社会問題化し、04年から相手国と2国間協定を結んで単純労働者を受け入れる「雇用許可制」に移行した。その後、韓国では農村部の嫁不足などから国際結婚による移住者も増大し、07年に「在韓外国人処遇基本法」、08年に「多文化家族支援法」を相次いで制定し差別禁止や教育、社会適応への支援を明文化した。政府が主導して権利を保護し摩擦や社会不安の種を取り除こうとしている。

 一方、日本は「単純労働者は受け入れない」という方針を維持しながら、「実習生」という名の安価な労働力として外国人を利用する、ごまかしを続けている。07年には入国審査で来日外国人の指紋、顔写真提供が義務づけられ、外国人登録法で一度は廃止された指紋採取が事実上復活するなど、近年は管理強化ばかり目につく。

 定住化で生じる教育、雇用、地域融和などの課題は出入国政策の引き締めだけでは解決しない。自治体の中には独自の支援に取り組み、宮城県などのように多文化共生社会の推進を条例化した例もあるが、国の動きはあまりに鈍い。外国人を「生活者」として扱い、社会に溶け込める施策を講じてこそ、少子化が進む日本社会に新たな活力や地域の安定などの恩恵が生まれるはずだ。

外国人留学生の就職支援 求人情報や相談のサービス拡大

2012-07-05 09:50:38 | 多文化共生
(以下、産経新聞から転載)
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外国人留学生の就職支援 求人情報や相談のサービス拡大
2012.7.5 07:48

パソナが今年1月に開催した外国人留学生のための合同企業説明会「JOB博」。多くの留学生が参加した=東京都千代田区(同社提供)

 企業の海外事業展開を支える人材として、日本の大学で学んでいる外国人留学生に注目が集まっている。ただ、日本企業への就職に関心を持つ留学生は増えているものの、「就職活動のやり方がよく分からない」といった声も目立つ。こうした中、留学生に企業の求人情報を提供するなど両者を橋渡しするサービスが広がっている。(竹岡伸晃)

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新興国への期待


 大手化学メーカーの日東電工(大阪市北区)は今年4月、初めて留学生を本格的に採用した。本社採用の総合職48人のうち6人が中国からの留学生。いずれも大阪大や早稲田大などトップレベルの大学の修士課程で学んだ人材だ。同社の採用担当者は「海外売上高の割合が約7割となり、人材の多様性を高める必要があった。今後も積極的に留学生を採用していきたい」と力を込める。

 国内経済が伸び悩む中、アジアなどの新興国に活路を求める日本企業。各国で市場開拓や生産管理を担当したり、現地と本社を結んだりする人材として期待が高まっているのが外国人留学生だ。

 人材サービス大手のパソナ(東京都千代田区)は、留学生の多い大学に出向き、就職に関する相談に乗るサービスを行っている。就職活動全体の流れに加え、エントリーシートや履歴書の書き方、面接を受ける際の服装や言葉遣い、自己PRの仕方などを具体的に説明。「総合職として入社し、ある程度時間をかけて昇進していく」という日本企業でのキャリア形成の概要についても伝える。

 留学生が同社に登録すれば、採用意欲のある企業の紹介を受けることもできる。市川知之グローバル事業部長は「新卒を一括採用する日本企業の採用は独特で、留学生には分かりにくい。就職活動を支援することで、留学生が卒業後活躍する場が広がれば」と期待を示す。

 リクルート(同)は昨年12月、留学生向けの就職サイト「リクナビグローバル」(https://r-ship2.jp/2013/global/)を開設した。利用時には、名前、大学・大学院での研究内容、日本語や英語の能力、希望する職種・業種、日本企業で働きたい理由などを登録。企業側からメールで、就職関連のセミナー情報や面接の案内などが届く。就職活動のノウハウや内定を獲得した先輩留学生の「必勝法」なども学べるという。

 サイトを立ち上げた新卒事業本部の池野谷康充部長は「留学生の登録は伸びており、メーカーやIT(情報技術)系、流通など幅広い業種・規模の企業が関心を示している」と手応えを話す。

 出身国を限定してきめ細かいサービスを行っているのは、外資系人材サービス会社のアデコ(港区)だ。今年3月以降、日本にあるベトナム、タイの留学生団体とそれぞれ契約を結び、留学生に求人情報などの紹介を始めた。元留学生の社員を専任担当者として置き、経験を生かした助言やメンタル面のサポートなども行う。

 「日本企業が生産拠点や市場として進出を進めており人材へのニーズが高い」(同社)両国を対象に選んだ。今後もインドネシアなど新興国の留学生を中心にサービスを拡大していく考えだ。

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 ■留学生採用、今後も増加?

 日本学生支援機構のまとめによると、平成23年度の外国人留学生(大学や大学院など)は13万8075人。東日本大震災の影響で前年比2.6%減だが、「増加傾向は続いている」(留学生事業部)。

 一方、24年春卒業の大学生・大学院生の就職状況をまとめたリクルートの「就職白書2012」では、企業(774社)の20.9%が外国人留学生を採用。従業員1000人以上(287社)では33.1%に上った。同社の就職情報サイト「リクナビ」の岡崎仁美編集長は「優秀でチャレンジ精神が旺盛、出身国の事情にも通じている外国人留学生の採用は今後も増えるだろう。ただ、日本人と異なり、『一生一社で働く』感覚は薄いため、昇進・昇給などの将来像を具体的に示す必要がある」としている。