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大人の発達障害&予備軍に向けた全国初“弱み”を“強み”に変える職業訓練

2012-03-30 15:13:52 | ダイバーシティ
(以下、DIAMONDonlineから転載)
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大人の発達障害&予備軍に向けた全国初“弱み”を“強み”に変える職業訓練

 約2年前、当連載で「成績優秀なのに、仕事ができない大人の発達障害」について取り上げたが、2月1日までに約290万アクセスもの反響があって驚いた。

 そんな話題の「大人の発達障害」や、自分も発達障害なのではないかと悩む人たち向けに、他の団体とは違うアプローチで職業訓練などを行うメソッドがいま注目されている。

 発達障害の人が強み、特性を活かした仕事に就き、活躍することを応援するプロフェッショナルファーム「Kaien」(東京都港区)の取り組みだ。同社の鈴木慶太社長は、元NHKアナウンサーでもある。
スピード化とともに置き去りに…
日本の人口より多い世界の発達障害者

 鈴木社長の元にはここ最近、福祉関係や企業の障害者関係以外に、大学からの講演依頼が増えてきたという。

「大学を出て、就職できない人たちは、発達障害と傾向があったり、診断を受けたりする人たちが多いんです。いまの社会は、そういう人たちを置き去りにすることによって、生産性を担保しているんですね。これからより大きな問題になると感じています」

 スピード化とともに、グローバルで臨機応変さやコミュニケーション力が求められる社会。私たちはこれまで、引きこもりや虐待、フリーターといった現象面ばかり追いかけてきた。

 ところが、その「原因の多くに発達障害が隠されている」と言われ始めたのは、最近のこと。「そこにアプローチしていくことによって、社会課題の解決に向け、1つのきっかけになるのではないか」と、鈴木社長は指摘する。

 発達障害といっても、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、アスペルガー、自閉症スペクトラムの違いが、実はわかりにくいと言われている。とくに日本では定義が曖昧で、それらが重複している人が多いという指摘もある。

 日本は課題先進国。発達障害も、いわば米国の手法を輸入してきた。

「エール大学の調査によると、人口の2.3~2.6%の人が、発達障害の自閉症スペクトラムと推計されています。僕の目標は、こうした世界で見ると日本の人口より多い人たちに、メソッドをきちんと世界に発信していくこと。ビジネスというよりも、ノウハウを日本から発信できることへの面白さがあるから頑張っています」

得意を伸ばす就業支援や塾を開設
ビジネス界が発達障害者を支援する意義

 同社のスタッフは、フルタイム4人。パート4人。パートは、アクティブシニアの元NECのエンジニアに依頼しているという。

「福祉よりもビジネスの世界のほうがコミュニケーションの構造化、定量化がうまい。福祉の世界の人に任せるよりも、はるかに上手にできるから(彼らに任せているの)です」

 また、アクティブシニアの人たちは、元々、多くの人間に接してきていて、人間力がある。しかも、構造化されたコミュニケーションを獲得してきている。だから、彼らに任せたほうが適しているというわけだ。

「教わる側からすると、同い年の人たちとのコミュニケーションが取りにくい。例えば、小さい頃からいじめられた経験があると、圧倒的に歳の離れた子どもや親の世代のほうがやりやすい。コストも安く済む。彼らも喜んで引き受けてくれる。少なくとも、IT業界の構造化されたコミュニケーションは合っているのです」

 同社の利用者は、診断名や障害者手帳を持たない人たちのほうが多い。そこで、紹介事業のほかに、企業からの出資を受けて、人材紹介や内定塾などの就業支援事業を行っている。

 また、10代向けの部活や塾などの事業、TEENS(ティーンズ)も、特徴の1つ。 

「発達障害の人は、一般の塾では自分の課題を伝えられないし、友人もほとんどいない。部活でも周囲と交流が少ない。元々弱いコミュニケーション力や社会性がなくなって、ますます就職できなくなるのです。場がないと成長できないから、場を作ります。多くの場合、若者支援の場は自然の中に作られますが、そういう子たちではない。うちは、3Dのアニメーションを作ったり、iPhone向けのアプリを作ったり、尖ったところを強引に伸ばして、得意な分野で人と関連する。そこをうちの稼ぎ頭にしたいと思っているのです」

 これは、親にもうれしい事業だろう。コミュニケーション不全で引きこもってしまうような人たちを生まないよう、発達にでこぼこのある人たちが好きなことをやりながら学べるコミュニケーション塾といえる。

「多くの発達障害の子どもたちは、閉じこもってビデオ見て、親が“うちの子はパソコンできるのではないか”と思う。でも、仕事のパソコンとビデオを見るのとは違う。そういう親の期待のズレや本人の社会性のなさが、いきなり大学卒業の時に出てきて“就職できません”となるのです」

同時並行力が弱いのは集中力が高いから!
発達障害者の“弱点”は“強み”でもある

 そして、同社がもっとも力を入れているのが、国から職業訓練を受託して、発達障害向けに行っていることだ。

「小さい頃は、発達障害という診断でもADHDやLD的な症状が顕在化しやすい。しかし、大人になるにつれて、必要なコミュニケーションが複雑になり、アスペルガーや自閉症スペクトラムの弱さが発達障害者の苦しみの原因に移ります。

 ただし、これまで発達障害というと、(1)社会性や言語コミュニケーションが弱い、(2)特定の分野にこだわって、他の分野への関心が向きにくいなど、生活面での特性が主に取り上げられてきました。しかし家庭や学校ではなく、職場でどのような課題が目立つかという点については、医療や福祉の関係者は、これまであまり研究して来なかったようです」

 では、発達障害者はオフィスでどういう弱さが出ているのか?鈴木社長が同社の卒業生に聞き取りしたところによると、大体、以下にあてはまるという。

①勤怠
②同時並行作業力が弱い
③創造が苦手なため、新しい環境や物事を怖がって適応しにくい
④聴覚のワーキングメモリーが弱く、耳から聞き取った情報が抜け落ちやすい
⑤柔軟性がないとよく言われる
⑥物事がどう進んでいるのかを理解していないため、段取ることができない
⑦失敗の経験や不安感から、決断や判断が遅くなる

 しかし、裏を返せば、これらは逆に強みでもあると、鈴木社長は説明する。

 例えば、②の同時並行作業力の弱さは、集中力の表れでもある。③の場合、帰属意識があるため、ハマれば組織に対して忠誠力を発揮する。④は視覚優位なので、物事の変化に強い。⑤については、自己論理と他者論理が一緒であれば、こだわりや深みになる。⑦は逆に、慎重に物事を進めることもできる。

 ただ、勤怠や段取りについては、小さい頃から、トレーニングしていくしかない。

「これらは、彼らにとってのアキレス腱でもあります。つまり、鍛えてもしょうがない。やり方としては、アキレス腱をできる限り使わないような、適した職種を探すことです。また、アキレス腱を守るプロテクターをつくる。またどのように就職活動すればいいのか段取りができない人も多い。自分の弱みがどこにあるかといった客観視も弱い。そういったことまで考えてナビゲートする必要がある。ただ非常に真面目でルールにはきちんと従うので、プロテクターをきちんとはめてあげれば、そこからは走り始めるという部分が当社のノウハウです」

 たとえば、大学の学者であっても、これまでのように研究してればいい時代ではなくなった。いまはマルチタスクを求められるので、対応するのが難しい。

「最初は、“猿の惑星”づくりを目指そうと思っていました。ただ、少し前までの社会なら、宗教やイデオロギーが支えになっていたけど、いまは資本主義を支えに世界が動いている。そんな中で、そこの部分だけ新しい村をつくっても、基本的には浸食されてしまう。資本主義に組み込まれた働き方を探していかないと、結局失敗するんですね。だから、いまは多数派という資本主義の論理を譲れない部分として伝えています」
発達障害予備軍も含めた職業訓練を開始
“弱み”を目立たなくする訓練とは

 同社は昨年8月から、全国初の国のモデル事業として、「発達障害者や発達障害の疑いを含む」人たちのために、職業訓練を無料で始めた。この「発達障害の疑いを含む」という点が、とても重要なポイントだ。

「発達障害と診断されれば、既存の社会福祉のインフラが使いやすくなります。ただ、そうではないうっすらとした特性のある人たちがすごく困っているので、彼らに自分をきちんと認識してもらう場を作らないといけないのです」

 これはインターンシップのような状況をつくることによって、職場でのコミュニケーションを学ばせようという場だ。

「彼らは、勉強すればできる人たち。しかし、仕事になると、なぜ離脱するかといえば、仕事上のコミュニケーションが苦手。受信する力とそれをタスクに分解できる力、アクションする力、さらに、そのプロセスを報告、連絡、相談、質問する発信力も弱い。そこで、とにかく報・連・相ができるように徹底する。報・連・相をするには、職場に近い状況をつくらないと、生きた場面に出会わない。だから、座学はほぼゼロ。ずっと働いているイメージです」

 横浜市の訓練所で行っているのは、古着のオンライン店舗。仕入、交渉、品質管理、パソコン上のマーケティング、発送などを通して、自分が得意なことや、自分ができないことを学ぶ。

 仕事に就いてからの作業を体験することによって、内定前の戦略を立てて、就職活動に臨む。就職後は、報・連・相を学んでいるので、ズレたときに補正できる仕組みだ。

「陥りやすい罠としては、資本主義と民主主義をはき違えていて、職場では人は平等ではないことがわからない。また、段取りや質問、相談を省いても勉強できてしまうので、仕事に行ったときに弱みが一気に噴出します。さらに、真理を追い求めるあまり、事実の多面性を理解できずにスレ違う。自分のズレを他人に押し付ける。自分の考えを話せる人が多いのに受信ができない。理解できたのに実行できない。段取りの悪さから寝る時間が短くなって、職場で眠気に襲われるケースが多い。そして、仕事さえできれば人間関係はできるものなのに、仕事より人間関係ばかり築こうとするのです」

 つまり、仕事ができるというのは、作業指示を受けて把握する。ところが、多くの場合、組織や文化の慣習を理解しながら、その場の状況をなんとなく察知することや、把握した後、タスクリストに優先順位を付けるのが弱い。

 また、タスクリストに起こしたものを判断、決断して、アクションを起こす。この際、世の中はズレが生じるので、絶えず指示者に報告・連絡・相談して確認していかなければいけない部分が弱い。だから、ズレてもすぐ元に戻れるようにしておくことが必要だという。

「他の職業訓練は、アクションだけを教えていることです。そこが、うちと違う部分。実は、アクション以外の部分が、コミュニケーション力や仕事力と言われる部分。当社は、彼らに足りないもの、得意なところを伸ばして弱みを目立たなくすることだけを考えていたら、従来のアクション型ではなく、コミュニケーション型の訓練に必然的になったんです」
発達障害者の特性が生きる職場とは?
確認、管理、保守、点検がキーワード

 では、弱みが目立たなくて、強みが生きる職場とは、どんなところがあるのか。

 たとえば、ビルを建てるとき、土地の分析、ニーズを探り、入居者のイメージを描いて、関係者や行政を説得。ビルを設計して建設してもらい、基準通りになっているかを確認、保守、点検していく。

 最初の工程は、彼らの苦手なコミュニケーションが多くなる。ところが、後ろの工程は、書類に落ちやすく、変化しにくいため、仕事や職場として適している。だから、確認、管理、保守、点検、品質などが適したキーワードになる。つまり、IT以外でも、活躍する場はいくつもある。

 ただ、構造化され、定量化された「後工程」の分野は、コストの安い海外に持っていきやすい。こうした職場が日本のどこで残っているかを探して、開拓していくのが、同社の仕事だという。

「“福祉の先進”は、“ビジネスの常識”です。作業、計画の定量化、目的目標の明確化は、すでにビジネスでやっていることなんです。ただ、企業の側でも、これまでこうした当たり前の価値観に十分取り組んでこなかったのではないか」

 このスキームは、発達障害の疑いがあるかどうかにかかわらない。不安を解消させるために、上司はゴールを設定して道筋を敷き、いま自分たちがどこにいるのかを指し示してあげることが、実はいまの日本に求められている。

 こうした鈴木社長の考えや取り組みについて綴った新刊は、今年4月、ダイヤモンド社から出版される予定だ。

弱者 地域で支える ◇日高村

2012-03-30 14:29:05 | ダイバーシティ
(以下、朝日新聞【高知】から転載)
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弱者 地域で支える ◇日高村

2012年03月29日

支援が必要な一人ひとりについて、暮らしの様子などを話し合う=日高村沖名


 災害時、高齢者や障害者の「要援護者」をどう支援するか――。日高村はその計画を県内でいち早くまとめ、注目されている。背景には、20年に及ぶ住民の見守り活動があった。専門家も「地域福祉のモデルとなり、県外にも先進例として発信できる」と高く評価する。

 日高村は人口約5500人で高齢化率33%。村社会福祉協議会が中心になり、「小地域ネットワーク活動」と呼ばれる見守り活動を1991年から進めている。現在の対象は約200人になる。

 活動の一つが、「一声(ひと・こえ)ボランティア」。近所に住み、要援護者にさりげなく声をかけられる関係のひとに依頼する。要援護者1人を複数が受け持つことも多い。決められた義務はないが、見かけたら声をかけたり、催しに誘ったりする。

 渋谷良雄さん(83)は毎朝、担当のお年寄りの家に行き、新聞が取り込まれているか、洗濯物が出ているかなどを確認する。「ネットワークが充実したら安心して暮らせる。ここでは孤独死はない」と話す。

 「緊急通報装置協力員」もいる。要支援者が自宅にあるボタンを押すと、社会福祉協議会につながる。社協が本人に電話をして出ない場合には、協力員に「見にいってほしい」と連絡する。

 沖名地区の一人暮らしの女性(79)は、「一声ボランティアが見守ってくれているから心強いです。それに緊急通報装置のボタンも置いているし、毎月1回、社協から電話がかかってくれるしね」とほほえむ。

 要援護者を一対一で見守り続けるのは難しい。ネットワークは、1人をたくさんのひと、地域で支えていくことを目指している。

 情報の共有も欠かせない。五つある地区ごとに年2回、小地域ネットワーク会議を開く。一声ボランティアと協力員のほか、民生児童委員、福祉委員や、消防団、自治会、老人クラブ、子ども会など様々な立場の住民が加わる。支えが必要な人の様子を互いに報告し合い、どんな支えが必要か議論する。

 要援護者については一人ずつ、A3判1枚の台帳がある。体調、困っていること、調理、買い物、ゴミ出し、通院などの生活状況が記される。

 2月下旬の夜、沖名地区のネットワーク会議があった。約40人が集落ごとに四つのテーブルに分かれ、要援護者一人ひとりの台帳を確認しながら「病院にも元気に行きゆう」「畑仕事していないので心配」などの報告を書き足していった。

 会議で出た提案は、村の健康福祉担当者や介護の専門家らでつくる支援者会で具体策を練っていく。ネットワーク会議は半年に一度は、実現できなかったことの反省会も開いている。

 「地域のつながりがなければ個人を支えることはできない」という考えのもと、地域活動の中核を担っていることも特徴だ。防災訓練、高齢者の体操やウオーキング、花見、植樹、トンボ公園づくり、一斉清掃など、日ごろの活発な活動が連携を深める役に立つ。

 日高村は2年前、災害時の要援護者支援制度をスタートさせた。ネットワークの活動が役立ち、要援護者の登録や、避難を誘導する支援者の決定がスムーズに進められた。県内で去年4月までに制度を創設できたのは日高村と四万十市だけだ。

 県立大の田中きよむ教授(社会保障論)は「地域福祉には住民一人ひとりを大切にする個別支援、地域づくりの複眼が望まれるが、それを理想的な形で備えている」と評価する。(前田智)

介護福祉士:EPA受け入れ、言葉・制度が厚い壁 省庁の姿勢バラバラ

2012-03-29 12:26:29 | 多文化共生
(以下、毎日新聞から転載)
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介護福祉士:EPA受け入れ、言葉・制度が厚い壁 省庁の姿勢バラバラ
 ◇受験機会は原則1回

 EPA(経済連携協定)に基づく初の介護福祉士試験で36人のインドネシア人とフィリピン人が合格(合格率37・9%)した。それでも受験を目指して来日する外国人はピーク時の3分の1以下に減っている。言葉の壁に加え、受験できる機会は1度だけとあまりに厳しいためだ。外国人の受け入れは積極派の経済産業、外務両省と消極派の厚生労働省の「妥協の産物」として08年度に始まったばかりだが、導入4年目にして早くも存続が危ぶまれている。【稲田佳代、鈴木直】

 「毎年受けられたならもっと余裕があったのに」「『あいうえお』から始めて、3年間で合格するのはプレッシャーが大きい」

 合格したインドネシア人のワヒューディンさん(30)らは28日、東京都内で記者会見し、来日からの苦労を語った。

 EPAに基づき、インドネシア、フィリピン人は「介護福祉士候補者」として来日する。介護施設で3年間実務を経験した後、1月の国家試験を受ける。滞在は4年間に限られているため、チャンスは原則1度きり。不合格なら帰国を迫られる。

 先行する看護師試験では外国人の合格率は1割程度。介護は今回上回ったとはいえ、世界最速級で進む少子高齢化を前に人材逼迫(ひっぱく)に対する介護業界の焦りは強い。

 政府は今後、ベトナムとも協定を結ぶ。しかし、いずれも外国人の受け入れ目的はあいまいだ。介護業界、外貨獲得を目指す各国の意向を背に経産、外務両省は介護を成長の見込める雇用の受け皿とみて拡充を狙う。

 ところが厚労省は元々外国人労働者受け入れに消極的。受け入れ是非論への発展を嫌い「EPA上の特例で人手不足解消策ではない」と強調している。

 政府のどっちつかずの姿勢は、候補者を受け入れる介護施設の減少を招いている。08年度に53施設あったインドネシア人の受け入れ施設は、11年度には29施設に減った。フィリピン人向けは、09年度に92施設だったのが11年度は33施設と3分の1近くに減少した。

 そうなれば送り出す側も候補を絞る。インドネシアの介護福祉士候補者は09年度の189人が10年度は77人、11年度は58人に。フィリピンも09年度は217人だったのが11年度は61人に激減した。

 背景には事業者に支払われる介護報酬上の扱いもある。施設は入所者3人に職員1人を配置(3対1基準)する必要があるものの、外国人候補者は職員とみなされない。介護報酬から人件費は出ず、雇うなら施設側の持ち出しとなる。

 批判を受け、厚労省は4月以降、夜間などに基準を超す人員を配置した場合、外国人候補者でも報酬を加算する。だがあくまでも補助要員で、3対1の基準は従来の職員で満たさなくてはならない。

 一方で介護経験ゼロでも日本人なら職員として扱われる。候補者は母国では「介護士」の認定などを受けているだけに、あるインドネシア人候補者は「私たちは存在が認められていない幽霊職員だ」とため息をつく。
 ◇将来は看護師も/日本語難しい…明暗分かれ

 初めての合格発表があった28日。共に働き、学んできたインドネシア人たちの明暗が分かれた。合格者が期待を語る一方で、特例で来年もチャンスを与えられた不合格者の間には「再挑戦か、帰国か」と迷いが広がった。

 東京・霞が関の厚生労働省には午後1時、会議室の机に合格者名簿が置かれた。名簿をめくったサリプディンさん(28)はガッツポーズ。「将来は医療が進んでいる日本で看護師の資格も取り、インドネシアに戻りたい」と夢を語った。一緒に来た同僚のジョコさん(26)は受験番号がなく、「離れて暮らす妻を呼んで一緒に暮らすつもりだったのに」と肩を落とした。

 2人は08年に来日し、「東京都板橋ナーシングホーム」で働く。ジョコさんは来年再挑戦するつもりだが、「日本語が難しいうえ、介護のことでも勉強することが多い」と心配そうだ。

 山梨県甲州市の特別養護老人ホーム「光風園」では、ポピ・アルフィアトゥロフマーさん(25)とエラ・ジュラエハさん(24)がインターネットで合否を確認した。ポピさんだけが合格した。

 来日当初、2人は簡単な会話しかできなかった。今は方言も少し理解できる。研修担当者の守屋英一さん(42)は「彼女たちは本当に一生懸命勉強した」と3年間を振り返る。慣れない漢字や専門用語の勉強は大変だった。ポピさんは昨秋から毎日机に向かったが「仕事が終わってからの勉強は嫌になる時もありました」。エラさんも「仕事だけで疲れてしまった」と話す。

 ポピさんは今年大学に入学する弟の学費のため、4年間は日本で働くつもりだ。一方、エラさんは来年も挑戦するかどうか「まだ決められない」と悩む。守屋さんは「笑顔がいいエラさんはすごく介護に向いている。また挑戦してほしい」と励ます。【石川隆宣、稲田佳代】

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 ■ことば
 ◇介護福祉士

 主に高齢者や障害者の心身の状況をみながら、介護や介護に関する指導を行う専門職の国家資格。福祉施設で働く人が多い。国家試験の受験には3年以上の実務経験が必要で、日本人の場合、現在は福祉系大学など指定の養成校を卒業すれば試験を受けずに資格が取れるが、15年度からは全員に試験が課せられる。受験は毎年可能。昨年9月末の資格登録者は約98万5000人。

出入国管理、生体認証活用で自動化へ

2012-03-29 12:25:56 | 多文化共生
(以下、Travel visionから転載)
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出入国管理、生体認証活用で自動化へ-出入国管理行政検討会議、中間報告
2012年3月28日(水)

 法務省は3月26日、出入国審査方法の改善を検討する「訪日外国人2500万人時代の出入国管理行政検討会議」において、中間報告をとりまとめた。会議では生体認証情報を活用した新しい出入国審査の問題を中心に議論を実施。中間報告では「当面は出入(帰)国審査の合理化方策を検討する」として、「機械を使い、『自動化』をはかる方策が最も現実的な方策」と提言した。

 自動化の前提条件としては、出入国管理上問題の無い者をあらかじめ特定し、特定された者と出入(帰)国しようとする者の同一性を確実に確認することをあげる。具体的には指紋や顔写真といった生体情報を利用し、対象者の同一性の確認をおこなう方策を検討する考えで、2012年度に研究を実施する計画だ。

 日本人の出帰国手続きの自動化については、IC旅券に搭載した顔写真を利用した顔認証による自動化ゲートの研究を実施し、12年度に実証実験をおこなう。さらに、自動化ゲートの利用促進を進める。自動化ゲートは2007年11月の成田を皮切りに羽田、関空、中部に合計20台設置しており、事前登録をした者が利用できる。今後は設置数や、事前希望者登録が受付可能な場所を増やす考え。事前登録は現在7ヶ所の入管事務局で受け付けているが、旅券事務所などでも登録可能とすることを検討していく。

 中長期にわたり日本に滞在し、再入国許可を得ている「在留外国人」への対応については、IC旅券に搭載された指紋を活用した自動化ゲートの研究を実施し、事前に利用希望者登録を要しない利用対象の拡大をはかる。また、EDカード提出が自動化ゲートの効率運用の妨げになっているとし、事前に必要な情報を取得するなどEDカード提出を不要とする方法も検討する考えだ。さらに、日本人対応と同様の取り組みも進めていく。

 在留外国人以外の外国人観光客や短期出張のビジネスマンなど「新規来日外国人」については、自動化の対象とする範囲を、査証免除を決定する際の考え方と合わせて12年度に検討するとした。入国管理局が自動化の対象者を特定する仕組みを構築する方針で、日本独自の枠組みでの自動化ゲートの活用や、他国と連携した枠組みでの自動化、確実な同一性の確認のための方法などを検討していく。また、クルーズ船の乗客に対する出入国検査の合理化も検討していくとした。

 検討会議は2011年10月14日に設置されており、6回にわたり会合を開催して観光立国実現のために出入国管理行政がはたす役割を議論した。会合では東京入国管理局羽田空港支局の視察や、関係団体としてジェイティービー(JTB)や全日空(NH)、クルーズバケーション、福岡市、警察庁へのヒアリングも実施した。今後は12年度中に中間報告や実証実験の結果などを踏まえ、具体的な方策を検討。13年度初旬に最終報告として、具体的な提言を発表する予定だ。

宇宙の魅力知って バリアフリー絵本、京大教授ら出版

2012-03-29 12:25:36 | ダイバーシティ
(以下、京都新聞から転載)
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宇宙の魅力知って バリアフリー絵本、京大教授ら出版

点字版「ホシオくん天文台へゆく」に収録される木星の点図と嶺重京都大教授

 全ての人に宇宙の不思議と面白さを知ってもらおうと、京都大理学研究科の嶺重慎教授たちがバリアフリー絵本「ホシオくん天文台へゆく」を制作、近く出版される。絵と文字の「活字版」、点字と点図の「点字版」、「音声版」の3種類で、嶺重教授は「広大な宇宙の中にいる自分を感じてもらうことで、みんな大切な存在なんだと分かってもらいたい」と話している。

 限られた人のための天文教育ではなく、子どもや高齢者、障害者をはじめ、長期入院中の子どもや特別支援学校の児童生徒にも、宇宙と地球、人と生き物の素晴らしさを伝える目的で、嶺重教授たちは大学生版、中高生対象のジュニア版の「天文学入門」を制作してきた。今回は、小学生以下向けのキッズ版として、三菱財団の助成で絵本を作った。

 著者は、嶺重教授と茨城県立水海道第一高教諭の高橋淳さん、イラストレーター・絵本作家の坂井治さん。「おおおきなポケット」(福音館書店)の昨年2月号に掲載した絵本を加筆・再構成した。

 ホシオくんが天文台を訪ね、望遠鏡から見える宇宙の神秘を学ぶ物語。点字版は、星や星雲の模様や明暗、色合いのほか、火星の白い「極冠」や木星の大気の巨大な渦「大赤斑」も凹凸の点で表現した。音声版は、耳で理解しやすいように文章を全面的に書き換え、視覚障害者のための番組も担当したフリーアナウンサー高山久美子さんが吹き込んだ。

 嶺重教授は「特別支援学校などで使える天文教材はほとんどなく、子どもたちは宇宙を学ぶことができない。わくわくしながら想像を広げてもらえたら」と話している。

 活字版(945円)は読書工房(東京都豊島区)が発行し、点字版と音声版は社会福祉法人桜雲会(新宿区)が発行する。

【 2012年03月29日 11時01分 】

震災弱者:苦難の1年 知的障害の39歳

2012-03-29 12:24:50 | ダイバーシティ
(以下、毎日新聞から転載)
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震災弱者:苦難の1年 知的障害の39歳、避難所生活に支障 施設再開、心ほぐれ
 ◇絵本に「意思」 <やまこえ たにこえ げんきいっぱい><きゅうなさかもへっちゃらさ>

 「足を上げてみましょうか」。2月14日午前、福島県南相馬市の障害者支援施設「デイさぽーとぴーなっつ」。体操の時間、スタッフの呼びかけで利用者14人と体を動かす渡辺英二さん(39)に施設長の郡(こおり)信子さん(50)は目を見張った。「震災前より溶け込んでいる」。英二さんは自閉症で重い知的障害があり、会話ができない。

 東日本大震災から間もない昨年4月初旬。「何とか施設を再開してもらえませんか」。英二さんの母美奈子さん(67)は、新地町の自宅近くにある避難先を訪れた郡さんに、たびたび訴えた。一般避難所の中で英二さんは、みんなで見るテレビのチャンネルを突然変え、子供向けの本を取ってきてしまう。美奈子さんは目が離せなくなっていた。

 何度も家に戻ろうとする英二さんに美奈子さんは「もうないんだよ」と告げ、流された自宅跡に連れて行き風呂場のタイル片を見せた。夫重喜さん(64)と英二さん、妹2人の5人家族は配慮され避難所の個室に入ったが、大声を出す英二さんを部屋から出さないようにするしかなかった。

 英二さんは中学まで養護学校に通った。生活訓練のおかげでバスに1人で乗り、買い物もできた。祖父が亡くなり美奈子さんも働きに出たことから卒業後は知的障害者の入所施設へ。そこではなじめず、月1度の帰省時には眉毛をそられたり、耳が腫れ上がっていたこともあった。8年間の入所の末、普段は出ない涙を振り絞り、施設に帰ることを嫌がった。家に戻るとバスの乗車も買い物もできず、騒ぐようになっていた。案じた家族が自宅から通える居場所を探し、「ぴーなっつ」に通うようになると、徐々に落ち着き始めた。

 東京電力福島第1原発から約24キロの「ぴーなっつ」は原発事故後、郡さんらスタッフが利用者を訪ね、安否確認を続けた。再開を望む声は少なくなかった。「30キロ圏内(当時の緊急時避難準備区域)に障害者を集めていいのか」。県と市に難色を示されながらも4月11日、「障害者がそんなに大変ならやむを得ない」との行政判断を受け、再開した。

 英二さんは被災当初、「ぴーなっつ」に持参していたかばんを手に毎朝迎えを待っていた。だが、再び通い始めた時は表情がなくなっていた。5月に仮設住宅へ移ってからも大声を上げた。最も近くに住む「ぴーなっつ」のスタッフが片道25キロを送迎した。「そっと閉めましょう」。ドアの大きな開閉音もたしなめず、音を立てなければ「ありがとう」と繰り返した。英二さんの心は少しずつほぐれていった。

 11月9日朝。英二さんは美奈子さんに絵本をみるようしきりに促した。英二さんは絵本に色付きのテープをベタベタ貼るのが好きで、その絵本にも新幹線の写真にちぎり絵のようにテープが貼られていたが、隙間(すきま)に絵本の字が残っていた。それを見て、美奈子さんは息をのんだ。

 <やまこえ たにこえ げんきいっぱい>

 <きゅうなさかもへっちゃらさ>

 字を読めないはずの英二さんが意思表示していると思った。「家族全員がつらい思いをしているからこそ『みんなで頑張ろう』ってことかな」。美奈子さんはもう一つ、気づいた。その新幹線は、下の妹と同じ名前だった。【野倉恵】

毎日新聞 2012年3月29日 東京朝刊

自閉症中心に発達障害解説

2012-03-29 12:24:25 | ダイバーシティ
(以下、朝日新聞【群馬】から転載)
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自閉症中心に発達障害解説

2012年03月28日

「発達障害の理解と支援」をテーマにした市民講座に多くの人が参加した=前橋市


 「発達障害の理解と支援」がテーマの市民講座が前橋市内であった。講師の宮本信也・筑波大教授(発達行動小児科学)は「目の前にいる子どもらが世の中をどのように感じ、思っているのかを理解することが大切」と訴えた。

 県精神神経科診療所協会が主催し、約300人が参加。宮本さんは「自閉症を理解し対応できれば、他の発達障害にも応用できる」と自閉症を中心に話した。

 知能障害がない自閉症の方が多く、「目と目が合わない」「呼んでも振り返らない」「言葉が遅い」「友達と遊ばない」といったかつてのイメージだけではとらえられないという。人の気持ちが分からないというのも事実ではないと指摘した。

 顔の表情や身ぶり、声の調子に気付かないため、相手の気持ちに合わせた対応ができず、マイペースと見られがちという。

 顔の区別がつかない人もいるため、誤解をされやすい。また、想像することが苦手で、お互い違う意味で理解している「会話の落とし穴」があるという。

 どう対応すべきか。例えば言葉への配慮の必要をあげた。主語と目的語をつけ、具体的な用語・表現を使う。「それ」や「この前」という言い方はしない。「だめ、違う、間違っている」「○○しなさい」などの否定的や命令形の表現は避け「こんなふうにしてみたら」「○○しよう」などと穏やかに丁寧に話すことを紹介した。

 宮本さんは、日常生活や社会生活での困難な状態は改善することができ、そこに支援する意味があると指摘。発達障害の「特性」を早期に見つけ、将来の問題の軽減や予防が大切と呼びかけた。(泉野尚彦)

7月から外国人の新在留管理制度、難民認定申請中の外国人に不安広がる

2012-03-28 10:14:34 | 多文化共生
(以下、カナロコから転載)
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7月から外国人の新在留管理制度、難民認定申請中の外国人に不安広がる
2012年3月27日

100人超が参加した在日ミャンマー人による新在留管理制度の学習会=2月、東京都新宿区
 在日外国人の新たな在留管理制度が7月から始まるのを前に、難民認定申請中の外国人に不安が広がっている。新制度では自治体交付の外国人登録証明書(外登証)を廃止。多くの申請者が身分証を事実上失い、日本社会で“見えない存在”となる。国内外から「難民鎖国」ともいわれる厳しい環境に身を置く中、「さらに不安定な境遇に追い込まれ、保健医療や教育からこぼれ落ちる」と懸念されている。

 2月、都内で開かれた在日ミャンマー(ビルマ)人による新在留管理制度の学習会。「自分たちはどうなるのか」。参加者は100人を超え、難民申請者からは不安の声が相次いだ。

 全ての難民申請者のうち、在留資格がなく仮滞在許可もない人は、2009年から11年にかけておよそ4割。新制度の下では、超過滞在など他の非正規滞在者と同じような状況になる。

 在留資格の有無を問わず自治体が交付している外登証が廃止される中、国が新たに交付する在留カードの対象外。自治体で住民票が作成されることもない。多くが、日本で広く利用できる公的な身分証を失い、アパート契約や口座開設など日常生活にも支障が生じるのではと指摘されている。

 難民申請中の男性は「母国でも日本でも自分の存在が認められない」と訴える。現在は就労が認められず食費にも事欠き、国民健康保険にも加入できず無保険の状態。新制度導入で、さらに不安定な状況に陥るだけに「保護を求めて日本に来たのに、どうやって生きていけばいいのか」と不安を募らせる。

 また、引き続き保障される権利も「絵に描いた餅」になりかねない。

 現行制度では、自治体に外国人登録をすれば、在留資格がなくても乳幼児健診や就学の案内などが送られる。新制度でも「現在と同じ権利が保障される」というのが政府の立場だ。

 だが、外国人登録制度が廃止されるため、在留資格のない外国人の存在を自治体が新たに把握することは原則不可能に。法務省入国管理局(入管)への通報を恐れたり、権利があることを知らなかったりして「自治体に自ら申告しなければ、現在と同じ行政サービスは受けられなくなる」(横浜市)という。

 全国難民弁護団連絡会議代表の渡辺彰悟弁護士は「難民申請者は生活が成り立たず、危険を覚悟の上で帰国を考えざるを得ない状況に追い込まれる。兵糧攻めのようで生活権が侵される」と指摘。「新制度の見直しとともに、日本に長期滞在し不安定な地位にある外国人に在留を認めることを今こそ考えるべき」とする。

 2月には入管、難民を支援するNPO法人なんみんフォーラム、日本弁護士連合会の3者が覚書を締結。具体的な取り組みとして、難民行政全般に関する改善点を探る協議を掲げる。新制度について入管は「周知に努める」とし、「要望があれば覚書に基づき協議もあり得る」としている。

 ◆新在留管理制度 入管難民法の改定などに伴い、在日外国人の情報を国が継続的に一元管理する。自治体による外国人登録制度を廃止する一方、3カ月超の在留資格を持つ中長期在留者に在留カードを国が交付。新たに特別永住者証明書が交付される在日コリアンなどの特別永住者などとともに、自治体で住民票が作成される。適法に在留する外国人の利便性の向上を図る一方、在留資格のない非正規滞在者を原則除外し、対処を厳格にする。

日本で病気やけがをしても大丈夫!

2012-03-28 10:14:01 | 多文化共生
(以下、greenzから転載)
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日本で病気やけがをしても大丈夫!外国人と医療機関を結ぶ「Japan Healthcare Info」 [マイプロSHOWCASE]


病気や怪我のときや妊娠したとき、親切にされたり適切なアドバイスをもらえたりすることは、とてもうれしいものです。まして、それが外国で助けてもらえたら、「この国ってすばらしいな」と好きになってしまうと思いませんか?

誰にとってもいざというときに安心して暮らせる環境は必要です。しかし、日本に滞在している外国人にとっては、日本はまだ十分な環境とは言えないのが現状。それを「何とかしたい!」と活動しているのが、今回ご紹介する「JHI(Japan Healthcare Info)」です。


外国人患者が日本で困らない環境づくり

もちろん今までも通訳を配置したり、英語のパンフレットを作ったりと、力をつくしている公的機関や病院もあります。しかし言語の問題から、そこまで”たどりつけない”外国人がたくさんいます。また、忙しい病院の場合、外国人のような施設独自のルールにのっとってもらえない人を敬遠しがちです。

JHIは、そういった外国人と医療機関をつなぐ役割を果たしているのです。具体的にどのようなサポートをおこなっているのでしょうか。


JHIは外国人患者と医療を結びます。
“言語の壁”を取り払うサポート

まずは患者の状態を聞いて、とりうる手段、かかる費用、使える公的サービスを調べて紹介し、希望にあわせて医療機関とのコーディネートを行います。また公費負担の制度などは特に言語がハードルとなる部分ですが、こういったところでもサポートしています。
文化的背景からくる不安をやわらげるサポート

多くの人が、「自分の国のやり方が普通だ」と思っているものです。日本人の医者が日本の文化的背景から発した言葉を、外国人患者が納得できるようにアドバイスすることも、安心につながるサポートです。

たとえば、フランスでは多くの場合、医者は患者の病状を「○○です」と断定します。それを普通だと思っているフランス人の患者は、「○○かもしれません。様子を見ましょう」といった日本の医者の言葉を、「あのドクターは自信がないのだろうか」と不安になるものなのだとか。

こういった経験を蓄積することで医療機関からの理解も深まり、少しずつサービスが充実していっているようです。


医療サービスへの想い

外国人の夫が急病になったときに、外国人にとって日本の医療サービスってとても使いにくいなと気づいたのです。

と語るのは、JHI代表のSaraさん(以下サラさん)。ご自身も慢性疾患を持っており、日本の医療現場では、患者のほうから医療機関に働きかけることの大切さを知っていました。

病院も公的機関も、コミュニケーションの方法が独特なんです。たとえばある病院ではFAXが使えなかったり、メールが使えなかったり。また、受け付けてもらえる時間が非常に短いこともあります。

日本人であれば、多少不自由は感じつつも、病院や公的機関に合わせたり、もしどうしても合わせるのが無理であれば先方に相談したり交渉したりすることができます。しかし、言語と文化の壁がある外国人は、そうはいかないんですよね。

また病院も公的機関も本当に忙しいので、自分から相談しない限り向こうから「こんなサービスがあるよ」とはなかなか教えてくれないのです。

医学系大学院で研究を行っていたサラさんは、調査で外国人患者の多くが、日本の基本的な医療サービスについて知識がなく、言葉が通じないことを不安に思っているという結果を知り、JHIの活動を行う決意をしました。
すべての人に、最善な医療を

日本には200万人以上の外国人が生活しています。そのうち企業からの出向の場合は、医療保険など利用できるサービスが存在します。しかし、それは「ほんの一握りの人だけ」とサラさんは言います。

多くの人が医療保険などのサポートを受けられず、病気になったときに相談できる人がいない状況なのです。また企業からの出向の場合、給料や手当てなどが出ていますから、支払いに対する不安はないかもしれませんが、そうでない人に対しては費用の負担も大きくのしかかってきます。

「なんとなく調子が悪いけれど誰にも相談できないし、お金が心配だからしばらく様子を見よう」と放置してしまって、重症化してしまう可能性さえあるのです。

そう言ってサラさんはJHIに寄せられた「利用者の声」を見せてくれました。ある方は、性感染症にかかったのではないかと心配しながらも相談できる人がおらず、日本語もあまり流暢ではなかったので、困り果ててJHIに連絡をしてきたそう。そこにはこう書かれていました。

週末に連絡をしたにもかかわらず、JHIは即座に連絡をくれました。私は費用負担の問題、仕事の関係から検査にいける日が限られていたのですが、JHIはすぐに無料で性感染症の検査を受けられる医療機関とその検査日、または有料だが英語で検査が受けられる近隣の医療機関のリストを送ってくれました。

しかし、無料で検査を受けられる医療機関の検査日は、私が行くことができない日であり、また有料の検査の費用は高額だったため、どの方法で検査をするか、なかなか決められないでいました。

すると、JHIはさらに、少し遠方にはなるけれど、私が利用できる日に無料で検査を行い、しかも英語を話すスタッフのいる医療機関を見つけてくれました。さらに、土地勘のない私のために、その医療機関までの非常に詳細な地図まで作成してくれ、非常に感激しました。(利用者の声より)

こちらの声は、さらに「深刻で、他聞をはばかる内容であった私の件を、JHIは完全にプライバシーを配慮して行ってくれました」と続きます。このプライバシーについて、サラさんはこう言います。

性感染症はもちろんのこと、どんな小さなことでも、個人情報には細心の注意を払っています。不必要な個人情報は受け取りませんし、すべて自己申告の情報をもとにサービスを行っています。

個人情報の中でも身体や健康に関する情報は「ハイセンシティブ情報」といい、一番他人に知られたくない情報とされます。それをしっかりと守っていく姿勢を、データ管理の方法などからも垣間見ることができました。
困らないようにするためのエンパワーメント

サラさんは現在、病気・怪我等の「困ったときの相談」という形態だけではなく、「困らないようにするためのエンパワーメント」事業にも意欲的に取り組んでいます。

自分自身もそうだったのですが、外国人患者の多くが「相談」「支援」というサービス形態を利用するのをためらっていることがわかりました。そこで、元気なときから知識を持ってもらうことを思いついたのです。

そこでサラさんは語学力と経験を生かして、外国人コミュニティの集まりなどに積極的に出かけ、日本の医療サービスについての知識を広めるワークショップを行っているそうです。

先日は、東京の外国人妊婦のコミュニティで講演をしてきました。検診をあまりしておらず、陣痛がきたら24時間いつでも病院に駆け込めば出産できると思っている外国人の妊婦さんもいます。

日本の病院では、妊娠初期から検診に通い、分娩を早い段階から予約し、いざ陣痛が来たらまずは医療機関に連絡してから行くのが普通であると説明したら、とても驚いていましたよ。

JHIの活動を聞けば聞くほど、普通に暮らしていたら気づかない課題が社会にはまだまだあることに気付かされます。このような丁寧な活動が、日本に来た外国人に「日本っていいな」と思ってもらえるきっかけになっているんですね。

自分の身の回りにある「こうしたらいいのに」と思うことを「自分ごと」にしていくと、世の中がもっとステキになっていくのだと感じました。

あなたの周りにもし外国人の方が居たら、ぜひJHIのことを教えてみてください。きっと喜んでくれるはずです。

外国人のための生活マップ作成 震災時の避難所も明記

2012-03-28 10:13:37 | 多文化共生
(以下、下野新聞から転載)
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外国人のための生活マップ作成 震災時の避難所も明記
(3月28日)

 【宇都宮】市国際交流プラザは市内に住む外国人のための生活マップを初めて作製した。災害時に活用できるようすべての避難所を網羅するなどの工夫を凝らしている。

 市はこれまで公共施設や生活に必要な情報を集めた外国人向けの「暮らしの便利帳」や「ごみの分別表」、緊急時用の「指差し会話帳」などを作製し配布してきた。

 従来の便利帳などと同様、生活マップには英語、中国語、ハングル、ポルトガル語、スペイン語、タイ語など七つの言語を使用。A1判の片面に全市の地図を掲載。もう片面には主要施設の一覧を番号を付けて記載している。裏面には中心部の地図を載せている。1500部作り市役所や同プラザ、市内の各大学などに配布した。

 同プラザなどには外国人から公共施設や病院、スパーなどがどこにあるのか場所を教えてほしい、といった問い合わせが数多くあり、昨年の東日本大震災の際には避難場所が分からないといった声が多数寄せられたため、新たに生活マップを作ることにしたという。