(以下、東京新聞から転載)
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「五輪までに2000万人」大丈夫? 訪日客ガイド不足
2014年1月29日 朝刊
日本を訪れる外国人旅行者を案内する観光ガイドの不足が深刻化している。ガイド不足に向けて、観光庁は「通訳ガイド制度」の創設を打ち出したが、これが逆に既存のガイド資格の受験者数減少を招いている。観光庁は新資格創設を事実上断念。政府は東京五輪が開かれる二〇二〇年までに外国人旅行者を現在の倍の二千万人に増やそうとしているが、政策の混迷が足を引っ張っている。 (木村留美)
訪日外国人旅行者は昨年初めて一千万人を突破。倍増するには「繰り返し訪日する旅行者がカギとなる」と大手旅行会社。そのためにも、日本の魅力を伝えるガイドは重要視されるが、「ガイド探しにはいつも苦労する。特にアジアの国の人を案内できるガイドは足りない」という。
現在、外国人観光客をガイドするには国家資格「通訳案内士」が必要。全国で約一万七千人が登録している。難関資格ながらガイド専業は約一割で、七割以上の人がガイドの仕事をしていないのが現状だ。
このため観光庁が打ち出したのが、「通訳ガイド」の創設だった。案内士に比べ安易な制度として門戸を拡大、急増する外国人旅行者に対応しようというもので、〇九年から旅行業界関係者や大学教授らをメンバーにした検討会を開催。一〇年には、研修を受け一定のレベルに達した人を「通訳ガイド」として認定する中間報告をまとめた。
しかし一一年一月、観光庁は突然、「通訳ガイド」を事実上断念することを検討会に提案。最終報告では、国が認める特区のみでの運用となった。案内士と通訳ガイドの共存が問題となったためで、観光庁では「理想が先行していた」などと釈明する。
一方で、「案内士」試験の受験者数は激減。一二年度の受験者は五千人で、五年前と比べて四割以上減少した。「通訳ガイド構想で、案内士の資格は不要だと、志望者が受け止めてしまった」と試験を運営するJNTO(日本政府観光局)の担当者。観光庁では「通訳ガイドは引き続き検討する」としており、今後も制度変更の余地を残す。このため案内士の受験者数減少も止まらないままだ。
駅のホームに貼られた、各社のWiFiが使えることを示すシール=28日、東京都内で
写真
◆日本の無線LAN環境 外国人「不十分」
外出先で高速インターネットを利用できる公衆無線LANサービス「WiFi(ワイファイ)」の整備促進に、国が本腰を入れている。日本を訪れる外国人旅行者には、誰でも使える無料無線LAN環境が不十分という声が多い。災害情報の提供にも役立つと考えられ、観光、防災の両面で活用が期待できる。
スマートフォンなどの普及に伴い、旅行先で観光情報を得たり、ブログを発信したりする人が増加。観光庁が二〇一一年に外国人旅行者にアンケートしたところ、「旅行中困ったこと」として「無料公衆無線LAN環境」を挙げる回答が36・7%でトップだった。
こうした声を受け、総務省は昨年末から諸外国の実情を調査。三月までに米国や英国、中国など六カ国・地域の無料無線LANサービスの現状をまとめる。二〇年の東京五輪の前に国内のサービス向上につなげる。
同省は今国会で審議される補正予算案に公衆無線LAN整備事業の補助金を初めて計上。総額九億円を見積もる。各地の避難所となる公共施設が主な対象だが、担当者は「観光客が集まるような公園なども候補になると考えている」と話している。 (栗田晃)
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「五輪までに2000万人」大丈夫? 訪日客ガイド不足
2014年1月29日 朝刊
日本を訪れる外国人旅行者を案内する観光ガイドの不足が深刻化している。ガイド不足に向けて、観光庁は「通訳ガイド制度」の創設を打ち出したが、これが逆に既存のガイド資格の受験者数減少を招いている。観光庁は新資格創設を事実上断念。政府は東京五輪が開かれる二〇二〇年までに外国人旅行者を現在の倍の二千万人に増やそうとしているが、政策の混迷が足を引っ張っている。 (木村留美)
訪日外国人旅行者は昨年初めて一千万人を突破。倍増するには「繰り返し訪日する旅行者がカギとなる」と大手旅行会社。そのためにも、日本の魅力を伝えるガイドは重要視されるが、「ガイド探しにはいつも苦労する。特にアジアの国の人を案内できるガイドは足りない」という。
現在、外国人観光客をガイドするには国家資格「通訳案内士」が必要。全国で約一万七千人が登録している。難関資格ながらガイド専業は約一割で、七割以上の人がガイドの仕事をしていないのが現状だ。
このため観光庁が打ち出したのが、「通訳ガイド」の創設だった。案内士に比べ安易な制度として門戸を拡大、急増する外国人旅行者に対応しようというもので、〇九年から旅行業界関係者や大学教授らをメンバーにした検討会を開催。一〇年には、研修を受け一定のレベルに達した人を「通訳ガイド」として認定する中間報告をまとめた。
しかし一一年一月、観光庁は突然、「通訳ガイド」を事実上断念することを検討会に提案。最終報告では、国が認める特区のみでの運用となった。案内士と通訳ガイドの共存が問題となったためで、観光庁では「理想が先行していた」などと釈明する。
一方で、「案内士」試験の受験者数は激減。一二年度の受験者は五千人で、五年前と比べて四割以上減少した。「通訳ガイド構想で、案内士の資格は不要だと、志望者が受け止めてしまった」と試験を運営するJNTO(日本政府観光局)の担当者。観光庁では「通訳ガイドは引き続き検討する」としており、今後も制度変更の余地を残す。このため案内士の受験者数減少も止まらないままだ。
駅のホームに貼られた、各社のWiFiが使えることを示すシール=28日、東京都内で
写真
◆日本の無線LAN環境 外国人「不十分」
外出先で高速インターネットを利用できる公衆無線LANサービス「WiFi(ワイファイ)」の整備促進に、国が本腰を入れている。日本を訪れる外国人旅行者には、誰でも使える無料無線LAN環境が不十分という声が多い。災害情報の提供にも役立つと考えられ、観光、防災の両面で活用が期待できる。
スマートフォンなどの普及に伴い、旅行先で観光情報を得たり、ブログを発信したりする人が増加。観光庁が二〇一一年に外国人旅行者にアンケートしたところ、「旅行中困ったこと」として「無料公衆無線LAN環境」を挙げる回答が36・7%でトップだった。
こうした声を受け、総務省は昨年末から諸外国の実情を調査。三月までに米国や英国、中国など六カ国・地域の無料無線LANサービスの現状をまとめる。二〇年の東京五輪の前に国内のサービス向上につなげる。
同省は今国会で審議される補正予算案に公衆無線LAN整備事業の補助金を初めて計上。総額九億円を見積もる。各地の避難所となる公共施設が主な対象だが、担当者は「観光客が集まるような公園なども候補になると考えている」と話している。 (栗田晃)