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廃人ドラッグ、に思う

2014-08-19 22:10:01 | ダイバーシティ
(以下、毎日新聞から転載)
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発信箱:廃人ドラッグ、に思う=小国綾子
毎日新聞 2014年08月19日 東京朝刊

 厚生労働省の募集した「脱法ドラッグ」の新名称として「廃人ドラッグ」という案が、実際に採用された「危険ドラッグ」より票を集めたと聞いて、胸が苦しくなった。確かにその方がインパクトは強いかもしれない。でも「廃人」では薬物依存者への偏見を助長する。

 17年前、薬物依存者と家族を1年間取材した。ドラッグに深く依存する人の多くは、いじめや虐待を受けた過去があったり、人付き合いが苦手で自分に自信がなかったり、さまざまな困難を抱えていた。「クスリが唯一の友だちだった」という声もよく聞いた。親たちの闘いも壮絶だった。友だちより家族より命よりドラッグが大事、となった依存症の我が子から、金をせびられ、暴力を振るわれ、子供の借金の取り立てまで……。かばうことが我が子の回復を遅らせると学び、時には警察に通報し、毅然(きぜん)と対応しようと努める親の切なさ。ある母親は当時妊娠中だった私のおなかを何度もなで、「ほめて育てろと聞いて懸命にほめて育てたのに、それが娘を『良い子でないとほめてもらえない』とクスリへと追いやったなんて」と泣いた。

 法の網をかいくぐり、新たな化学物質が次々登場する危険ドラッグは、規制や取り締まりだけでは抑え込めない。遠回りに見えても、乱用・依存者への治療や回復支援を充実することこそが、交通事故など悲しい事故に巻き込まれる被害者をこれ以上生まないことにつながるはずだ。

 生きづらさを抱え、ドラッグに頼り、しかしそこから抜け出そうとしている彼らを、どうか「廃人」と切り捨てないでほしい。彼らの回復を、その家族の闘いを支えよう、という社会でありたい。(夕刊編集部)

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