多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

なぜ中国人は「ごめんなさい」と頭を下げないのか

2011-07-27 11:53:49 | 多文化共生
(以下、BusinessMedia誠から転載)
==================================
なぜ中国人は「ごめんなさい」と頭を下げないのか

ちょっとした誤解や無知がとんでもなく大きな問題へ――。日中関係がこじれる時というのはやはりこのパターンではないだろうか。そこで中国における対人関係やビジネスマナーで、日本人が誤解してしまいそうな“ギャップ”をご紹介する。
[Wu Yu,Business Media 誠]

 仕事柄、日本から中国に進出する企業の方とお話をする機会があるのですが、そこでよくされる「相談」があります。

 「現地の従業員にミスを指摘したら、口では“対不起”(すいません)と言うんですが、どう見ても謝っている態度じゃないんです。やはり反日感情があるからなのでしょうか?」

 その中国人従業員に会ってないので100%とは言い切れませんが、それは恐らく誤解でしょう。「対不起」の言葉が出るとき、「その人は自分が悪い気持ちでいっぱいだと思いますよ」と私は答えます。

 同じ中国人だからかばっているわけではありません。私がこのように答える理由はひとつ、中国には「謝る」という文化がないからです。中国人っていうのは傲慢な民族だなあ、なんて思わないでください。単に日本人のような謝り方をする文化がないということなのです。

 ちょっと例は古いですが、このギャップを象徴するようなエピソードがあります。2006年、世界的に有名なファストフードチェーンの中国現地法人が中国全土で流したCMに対して「中国人に対する侮辱」という抗議が殺到して放映中止となり、同社が謝罪を表明するという騒動が起きました。

 問題のCMは、1人の男性客がDVD店の店主にひざまずいて優待期間の延長を求めるシーンから始まり、その直後に「当社は365日優待」というセリフが続きます。

 当時、職場の日本人から「一体なにが問題だったの?」と尋ねられましたが、私たち中国人からすれば、「え? なぜこれが問題にならないの?」と逆に首を傾げました。なぜなら、中国では「男の膝下には黄金がある」という有名なことわざがあるからです。これは女性にもあてはまるもので「神様や親、年配の親戚の以外、決してひざまずいてはいけない」という中国人の強い意識のあらわれなのです。

 このひざまずくことと同じような意味で、人前で頭を下げるという行為も中国人的にはNG。「対不起」の言葉だけで中国人にとっては十分に「謝罪」なのです。

 そんなことを言っている私ですが、最近ではすっかり「日本流」に慣れてしまい、たまに里帰りすると、つい「対不起」を連発して頭を下げたり、お辞儀したりするので、友だちから「大丈夫? 謝りすぎだよ」とか笑われ、また「あっ、ごめんね」なんて言ったりして……。

 ちなみに、人の頭を叩くなんてのも論外です。例えばバラエティ番組で、お笑い芸人が共演者の頭をパシンと叩き「ツッコミ」を入れたりしています。今でこそ、お笑い特有のコミュニケーションだと分かって笑ってしまいますが、初めて見たときは衝撃でした。これも中国人的にはNGなのです。

残業よりも恋人を選ぶのが中国のビジネスマン
多くの中国人は仕事よりもプライベートを重視するという(写真と本文は関係ありません)

 日本と中国では「対人関係」で大きなギャップがあることが分かっていただけたと思いますが、それがより顕著に出るのがオフィスではないでしょうか。有名なところでは、日本から中国にやってきたビジネスマンがまず驚く「オフィスのいたるところで口ゲンカをしている」という例のアレです。

 お互いに顔を真っ赤にして、まさしく口角泡(こうかくあわ)を飛ばすという感じで言い争っているので、みなさんからするとドキドキするのでしょうが、実は私たち中国人にとって、ごくごく普通の「打ち合わせ」。中国人の声がデカイためにケンカのように聞こえてしまうだけなのです。

 また、中国人と日本人の「仕事」に対する取り組み方にもかなりの温度差があると私は思います。例えば、中国の日系企業で働いていたころ、中国東北出身の男の子が新人として私のチームに入りました。身長が高く、たくましい体格で見るからに男らしい人で、日本で言うところの「九州男児」みたいなキャラでした。

 ある日、急に仕事が入ったので、私は「ごめんなさい、今日はどうしても納品しなければならない仕事が入りましたので、1時間ほど残業してもらえますか?」と頼みました。しかし「ダメです。今、大雨が降っていますので、彼女に傘を送らなければなりません」とキッパリと断わられてしまいました。

 このエピソードを日本人と中国人にそれぞれ話すと、面白いように意見が分かれます。日本人の多くは「は? ダメじゃん、その新人」とか「ありえないでしょ」という意見ですが、中国人は「男らしくていいね」とか「別にいいんじゃない? 退職時間になったんでしょ」という意見がほとんどなのです。

 一般論的に中国人は仕事より家族や自分のプライベートの生活を重視する傾向があります。だから、日本人が休日返上で働いたり、家庭サービスを犠牲にして仕事に打ち込む姿というのは「すごい!」と思う反面、ほとんどの中国人からすると、理解できないなという印象なのです。

日本の「ほう・れん・そう」は中国ではパワハラになる?
日本では、「ほうれんそう」は社会人の基本の「き」

 このようなビジネスシーンでの日中間のギャップのなかで、私が最も格差が大きいと感じているのが、「上司」に対する意識です。それをよくあらわしているのが、日本企業で必ず言われる「ほうれんそう」です。言わずもがな「報告・連絡・相談」のことで、上司が部下に求める社会人の基本の「き」とされていますが、この「ほうれんそう」を中国人の部下に求めてはいけません。

 「あの日本人、心配性だね」

 「もう、本当にうるさい! いちいち何をやったか報告しなくちゃいけないなんて」

 日系企業で働く中国人の友人たちからよくこんな愚痴を聞かされます。生意気なように聞こえるかもしれませんが、中国では部下が報告・連絡・相談を自らするという慣習はありません。仕事の進み具合は、上司が部下のもとに自ら足を運び、状況を聞きだして的確な指示をするのが当たり前なのです。つまり、「ほうれんそう」を部下に求めるというのは下手をすれば、パワハラや「嫌がらせ」だととられてしまうのです。

 このギャップの根底にあるのは、「上司」に対する考え方の違いだと思います。中国人は日本人に比べるとかなりドライに考えています。

 「上司は上司。一緒に仕事をして、自分を評価する人に過ぎない。嫌であれば、辞めればいいでしょう?」

 日本のオフィスではみんなの前で上司が部下を怒鳴り飛ばしたりしていますが、中国では絶対にありえません。公衆の面前でしかった時点で、中国人はみんなの前で恥をかかされたと感じ、さらに反発し、二度とその上司には従うことはないでしょう。

 もしどうしてもしからなくてはいけない場合、必ず個室に呼び入れ、自尊心を傷つけないように、「君のために言っているんだ」と優しく諭す必要があります。

 なんだか面倒臭いなあと思うかもしれませんが、これが中国ビジネスにおける「常識」なのです。「日本流」がいいのか、「中国流」がいいのかという議論ではなく、もし中国に行き、中国人とビジネスをするのならば、「郷に入らば郷に従え」というだけの話です。

 なんてことを偉そうに言っている私ですが、実はホロ苦い思い出があります。先ほどお話をした「残業よりも恋人を選んだ新人」に私はこのように怒鳴ってしまったのです。

 「は? なにそれ? ありえない!」

 日系企業で勤めているうちに「日本流」が身についたようで、「中国流」を押し通す彼についイラッときて、ついみんなの前でしかってケンカをしてしまったのです。結果、彼は翌日から出社せず、ほどなく辞めました(涙)。

 今だったら、彼の自尊心を傷つけることなく、個室で1時間の残業をしてもらえるように説得したのにと後悔しています。

 同じ中国人でもこんな調子ですから、日本からやってきた方と、現地の中国人従業員の間に非常に深いギャップがあることがよく分かってもらえたと思います。ただ、ギャップがあると驚いているだけでは何も生まれません。そのギャップを互いに理解して、いいところを認め合う。それこそが、異文化コミュニケーションの醍醐味ですし、私が少しでも役立ちたいことなのです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿