多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

被災地のDV/地域の人権意識高め防止へ

2014-08-19 09:44:46 | ダイバーシティ
(以下、河北新報から転載)
========================================
被災地のDV/地域の人権意識高め防止へ

 東日本大震災の被災地で、配偶者からの暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)が深刻化している。人の尊厳をないがしろにし、心身を傷つける暴力がはびこる地域社会で復興は語れない。そう認識し、被害者を支える地域の人権意識啓発と関係機関の連携強化を急ぎたい。
 警察へのDV相談件数は2013年、宮城県警が前年比236件増の2092件、福島県警が17件増の857件、岩手県警は70件増の368件。いずれも過去最多となった。内閣府が被災3県の女性を対象に実施している悩み・暴力相談には13年度、4837件が寄せられ、うち13%が配偶者や交際相手からのDVに関する内容だった。
 一般社団法人社会的包摂サポートセンターが厚生労働省、復興庁の補助事業として全国展開している24時間電話相談「よりそいホットライン」。13年度のまとめで、DV・性暴力相談の割合が被災3県ではそれ以外の都道府県の2倍近くに上った。
 相談から浮かび上がるのは、生活再建がままならず、先の希望が見えずに孤立する被災家庭、DV被害者の姿だ。「DVが原因で別居していた夫が津波で家も職場も失い戻ってきた」「被災で生活環境が激変し、夫が引きこもりがちになった」「職を失ったまま失業保険も切れ、弔慰金も使い果たして経済状態が悪化した」。そうした状況下で夫の暴力が激化している。
 狭い仮設住宅では逃げ場がない。地方は人間関係が濃密なため、行政の窓口に知り合いがいる場合も多く、相談しづらい。世間体を気にして暴力は隠されがちだ。性別役割分業意識が根強く、自分がDV被害者であることに女性自身が気付いていない事例も少なくないという。
 DVは震災前から数多く潜在していた。震災を機に表面化したわけだが、それも氷山の一角。復興が遅々として進まない現実の中、時間の経過とともにさらに深刻化する危険もはらむ。
 「相談件数の増加はある意味、いいことだ」と、DV被害者の支援活動を25年続けているNPO法人ハーティ仙台の八幡悦子代表は言う。相談しないケースこそ事態が悪化し、殺人など重大な事件に至ると、早期対処の必要性を指摘する。
 DVは、それを目の当たりにする子どもへの虐待でもある。子どもへの暴力が重なっているケースも少なくない。それを逃れたシングルマザーの経済的困窮は、共に暮らす子どもの貧困問題だ。DVの深刻化は多様な社会問題と連鎖している。
 DVを防止し、被害者を支援するために必要なのは何か。人権教育、男女平等教育の推進だと専門家は口をそろえる。
 行政の担当者や相談員、民生委員など支援する側が人権、男女平等の視点を持ち、連携することが重要だ。そして市民もまたその視点でDVに気付き、専門家や相談機関につなげる地域力を高めたい。どんな暴力をも許さない「世間の目」が求められている。もちろん、被災地だけでなく、あらゆる地域で。


2014年08月19日火曜日

最新の画像もっと見る

コメントを投稿