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ブエノス・ディアス,ニッポン~外国人が生きる「もうひとつの日本」(ななころびやおき著)

2005-12-13 17:47:47 | 書評
著者は現役の弁護士。主に…というわけではないらしいのですが,海外から日本に出稼ぎに来ている外国人からの依頼を受けることが多いそうです…といってもほとんど金にならないらしく稼いでいるのは別件だったりするそうで…。

ほとんどが著者担当した案件についてかかれています。主に海外から出稼ぎに来てビザが切れてオーバーステイになってという人があることで不具合を被る。それは法務局にばれて強制送還…という場合もありますが,事はもう少しややこしい場合が多いです。
…というかこれを読むまで実態がこうなっていることにわたしはあまりにも無関心というか知りませんでした。日本にラテンアメリカや東南アジアからの出稼ぎ労働者が多数いることは何となく把握してましたが,オーバーステイになってそのまま日本で数十年以上暮らし続けている人がかなりいるようです。数十年も暮すと当然結婚したり,子供ができて子供は日本語しか喋れなかったり…と,そういう状況で家族ともども強制送還になってしまったり,病気になっても保険に加入できなかったりとか…。
著者の案件は主にそういうものに永住許可を得るための裁判を担当したり…とかいうものが多いようです。
著者は本書のまえがきで以下の四つをこの問題の本質と言ってます。

「『専門知識,技術を持った外国人のみを受け入れる』という政府の方針は建前に過ぎず実際は外国人労働者の多くは単純労働者であり,実際は彼らから多くの恩恵を受けている」,
「漢字の文化が漢字圏以外の外国人の地位向上を阻んでいることへの 無自覚」,
「外国人が異なる存在であることを前提に,外国人管理をしようとし条件の違反に制裁を加えようとする」,
「在日外国人の問題を外国人を差別するのが当然という視点で管理していること」。

つまり我々の認識では海外から日本に働きに来てビザが切れても働いているのは彼らが悪い…,そしてそれで不利益を被り挙げ句の果てに非行や反抗に走るのは彼らが100%悪いとなっているように思います。というか申し訳ないけど,わたしにはそういう感覚がありました。しかし著者は海外から単純労働者を受け入れているという現実があるのに,彼らが被る不具合を解消していないため,彼らを追い詰めているのは国の方だと…。
実際に本の事例を読むと,そういう風に書いているからでしょうけど,かなり気の毒に思えるような部分があります。著者は弁護士だからそういうことに対してクレームをいいますし,それには「そうだよなぁ…」と感じます。
ただし一方でわたしの中には「そうは言ってもそういうルールなんだし,それを承知で入国してるのではないか」(もっとも法務局の運営基準も不透明らしい)とか,「外国人労働者が日本人なみに暮しやすくなることは,海外から大量の労働者の流入を招くことになり日本人の仕事を奪うことにならないか」とかいう感情もあります。正直わたしは著者がいうように実態に合わせて,いろいろ緩和することにすべて同意…いえ多分ほとんど同意出来ないように思います。もちろんそういう部分とは違って単純に改善すべき点で同意できるところもたくさんありますが…。
ただ著者に賛同していいか悩むところであはあるものの,わたしたちの目につきにくいところで,多くの人達が苦しんでいて,結果的に彼らを追い詰めてしまってたり,またわたしたちが無意識に彼らを差別し排除してしまっている現実はやっぱり知っておかないといけないのだと思います。

最近の現実の事例でいうとフランスでの移民系の若者の暴動,そして日本国内でも不法滞在者による犯罪などが話題になります。その際に安易にマスコミの情報で思い込みをつくらないためにもこういう本を読んでおく必要はあるのでしょう。
ちなみにこの本によると外国人の犯罪が必ずしも日本人に比べ物凄く多いとも限らない様です。また上記のわたしの感想を読むとなにか外国人が悪いことを犯した事ばかり書いているように思うかも知れませんが,実際は不法滞在であること以外は実に実直にひっそりと暮している例がたくさんあり,それでも非常に不利益を被っているという現実があるようです。
コメント
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