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S60チルドレン (川畑聡一郎先生のご冥福を祈ります)

2005-12-19 14:57:42 | 書評
現在発売中の週刊イブニンブの416ページを観て驚きました。今年の夏までに「S60チルドレン」という連載を行っていた川畑聡一郎先生が亡くなられたそうです。31才。桝田道也氏のところに訃報があります
正直に書くとわたしは川畑先生については「S60チルドレン」しかしりません。というかおそらくこの作品が初めての長期連載だったのではないでしょうか?。わたしは熱狂的なファンではありませんが,妙な味があるこのマンガを気に入り,一応単行本(全4巻)はそろえております。なので,作者のことはわからないので,マンガのことなどを。本来ここはマンガの感想を書くところじゃない(マンガの感想を書くところは別にある)のですが。

S60チルドレンという作品は昭和60年頃に鹿児島で小学生低学年を過ごしている少年少女達の日常の物語りです。なぜ鹿児島か?…というと作者がそこの出身だからだそうです。ですので,この物語りには当時の流行なども合わせて非常にその空気を持ち込んでいます。
このお話の秀逸なところは子供を人種として描いている,つまり大人とは別の生き物として描いている。もちろんSFじゃないので普通に親や先生と生活してますが,子供は子供の社会があり,そこの原理で動いているということです。そして主人公の男の子は,妙に物事に冷静な視点を持っているものの,クラスメイトの誘いに流されたり,変な虚栄心があったり…と実にその心情を丁寧に描いています。例えば馬鹿馬鹿しいと思っていても,友達とお菓子やそのおまけを買ったりとか,遠足にいくとなぜか周りになじまない自分を感じるもののどうしようもないと思ったりとか…。
いきなり自分の話をしますが,わたしは子供の頃自分は正しく(大人でいうところの論理的に)思考できてると思ってました。そしてそれが現在まで続いているところからして,現在のわたしの記憶では当時の自分はきちんと物事を考えていたと思ってます。しかし実際に例えば小学3年の子供と接したり,当時のとある行動面だけを思い出すと,やっぱり突拍子もない行動をしたり,変な顔とかをしたりとか…そういうことはやっていたように思います。つまり自分は過去の自分はちゃんとしていたと思っていても,実際はそうでないことが多いのではないか?…と思います。広げると人は自分の過去を過大に正しかったという記憶に書き換えてしまうのではないか?…と思います。
話がそれましたが,この作品でも主人公はおそらく大人になって思い返した作者の記憶が元になってると思います。しかし秀逸なのはそれでても子供故の大人とは違う思考をうまく表現できていて,それが大人である我々が当時の自分にうまく入っていける事になってるのだと思います。
この作品はギャグというよりは妙なノスタルジーがある作品で,おかしなことをやっていても笑うというよりは,どこか懐かしく寂しいい感覚をわたしはおぼえます。そしてその中にある子供の社会のシビアさ,ある人はクラスになじめず不良のグループに入ったり,ある人は塾に通って勉強するも頭がいい友人に勝てず,それでも自分のプライドを何とか保つとか,そういう子供なりの社会をうまく描いていると思います。
S60チルドレンはおそらく読む人によって胸に込み上げてくるものが違う作品だと思います。それゆえに良い作品だとわたしはおもいます。
そして,この私小説的な作品からどのように世界を広げていくのか?,これからが楽しみであった川畑先生が亡くなられたことをとても残念に思いました。ご冥福をお祈りします。
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