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学会の権威と人気

2013-12-29 10:29:13 | 育児・教育
研究者というのはおおよそ自分の成果を「論文」という形で積み上げていくものです。中には本を書いたり作品を作るという分野もあるようですが,ほとんどの場合,大学にしても国とかカウントするときも論文で成果をカウントします。学術的な賞もありますが,その賞自体が論文に与えられたりするので,とにかく論文を出さないと研究者は自分の成果をアピールすることが出来ません。

で,論文はどこにあるのか?というと通常は学会が出す学術誌に掲載されます。掲載されるにはその学会が審査(査読)をし通らなければなりません。つまり研究者は学会と関わらずに成果を出すことが出来ないということになります。

ではその「学会」とは何か?というと学者が任意に集まって作ったものです。以前医者をやってる友人に医者が三人集まれば学会を作れる…という冗談を聞いたことがあるのですが,実際は日本学術会議が「日本学術会議協力学術研究団体」というのを指定しているので,勝手に学会を名乗っても公認の学会というのには当たらないようです。

とはいえ,学会というのはいろんなものがあります。そして研究者は成果を出す以上どこかの学会が出す論文誌に論文を投稿するわけですが,その投稿論文を研究成果として認めるか認めないか?というのも学会によっては様々で,ですから研究者は投稿するときにそういうことも考えて学会を選びます。

さて私も研究者の端くれであり,これからも研究を続けていこうと考えているわけですから,どの学会と重点的に関わるか?ということを悩むわけです。学会の一つの尺度に「会員数」があります。これは客観値なのでわかりやすいですが,人数が多い学会ほど,活動は盛んだし,そこに出すと多くの人に認められる可能性があります。一方学界の「権威」みたいのもあるように思います。これは学会の会員数とも関係があり,会員数が多いほど権威も高いと思われがちですが,中には会員数が少なくても権威がある…学会もあるような気がします。これはきわめて専門性が高かったり歴史が長い学会だと人数が少なくても権威が高いケースがあるように思います。

そしてもう一つの尺度に「人気」があります。これは会員数と関係があるのですが,会員数が多い学会の中にも業界人しか話題にしない学会と,ネットとかで話題になるような学会があります。一般とまではいかないまでもこういうネットで話題になりやすい学会はいろいろと新しい話題を提供するようなことをやっていて,結果的に新しい分野の開拓が出来たり,若い研究者が集まり実際に会員数が増えたり良い成果が出てくるという好循環が生まれている場合も多いでしょう。

…とは言え,私としては少し悩むのはこういう新しい話題を振りまき人気が出ている学会と,歴史があり専門性が高くて権威がある学会とどちらを重要視すべきか?…ということです。人気がある学会は書いた様に活動が盛んで,そこで活躍することは自分にも注目を得る可能性があります。活動の可能性が広がるということです。ただ一方で,こういう学会は研究成果が玉石混合な場合が多い気がします。あと地味な研究はこういう場ではかえって目立たなくなることも多いかもしれません。権威がある学会は,目立たない成果でもその学界的に質が高ければ,おそらく認められます。

日本に学会はたくさんありますが,歴史のある学会はどこも会員数の減少に悩んでおり,経費もきつくなっている気がします。そうなると「人気」を得るために,活動方針を変化させていく学会もそういうのなかに増えていくように思います。

さて,そういうことをちょっと前に考えていたら一昨日くらいに人工知能学会が学会誌の表紙に萌イラストを載せてきたということを知りました。この表紙女性の掃除ロボットというのが気に入らない人がネットで論争してるようですが,それについてはあまり興味はありません。それよりもあぁ人工知能学会もこういう方面の人にアピールし始めたのだなぁ…と私は思いました。だいぶ前に情報処理学会が初音ミクを学会誌の表紙にしたことがあって(そういう内容だったからですが),かってない程,学会誌が売れたそうです。もしかしたらそういう話知っている人が,学会誌の表紙に萌の要素を取り入れることでそういう効果があることを知っていたのかもしれません。

もちろん人工知能にしても情報処理にしてもロボットとか知識処理とかを扱うわけで,そういうものを題材とした作品が多いアキバ系の愛好者とは重複する部分が多いはずです。ですからまるで関係ない人にアピールしているわけではなく,より周辺を広げるという試みなのではないでしょうか。

ただし,人工知能学会の表紙に対しての学会の説明をみればわかるように新しい人に興味を持ってもらうため明言してます。ですからやっぱり学会以外の人の注目を集めるためにこういう表紙を選んだわけです。学会の質を高める手段として専門的な学術的な質というよりもまず人気を得ることを選んだってことだろうな…と思いました。

自分が積極的に関わるべき学会は,どっちの方なんだろうなぁ…と思ったわけです。
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