ネットを観ていたら
ボーズ博士が米国の「発明家殿堂」入りをしたという文を見つけました。ボーズ博士とはいうまでもなく,スピーカメーカであるBOSEの創始者です。ボーズは今ではオーディオが好きな人なら誰でも知っているメーカで,オーディオマニアから普通の人まで非常に信頼があります。実はちょっと癖があるので,マニアの中には嫌いな人もいるのですが,それは裏を返せば,それだけ存在感があるメーカということです。BOSEのスピーカはボーズ博士の独自の音響理論で設計されたとされていますが,その独自の理論とはなんなのでしょう。…と論文が出てるのかもしれませんが,読んだこと無いので,ちょっとわたしなりに感じるBOSEのスピーカについて語ってみたいと思います。
BOSEというと今でこそ,ヘッドホンやオーディオシステムもだしてますが,もともとはスピーカのメーカで,そのスピーカのヒットで有名になってます。なので着実に名前を上げていった初期のスピーカについて書きます。誤解の無いようにあらかじめ書きますが,今から書くことはわたしの思い込みで,BOSEや博士が語ったポイントではありません。
BOSEのスピーカは
ホームページの沿革に書かれているように,最初からマルチドライバのスピーカから始まってます。わたしがBOSEのスピーカを知ったのは70年代後半…つまり日本に入ってきてまもなくだと思いますが,当時売られていたスピーカは901,801(802?),そして30?,20?,40?,くらいでした。後に大ヒットとなる101はまだ売られていませんでしたが,当時から非常にユニークなスピーカでした。
ボーズの型番の最初の先頭の数字はスピーカの数で,最初にでた901は9個のスピーカがついてます。ユニークなのは901は9個スピーカがついてますが,受聴者の方を向いているのは一つで,残りは全部裏面についてます。そして全部が同じサイズのフルレンジです。当時の…というか今でもそうですが,高級スピーカは大抵はスピーカの数が増えると,異なるサイズで増えます。JBLとかがそうですが,大抵は大型のウーファ,小型のツーイータがあり,さらにミッドレンジとかがあります。当時の高級オーディオというと大型のウーファを持ち低音を出せることを売りにするのが通常でした。しかしBOSEは11cmのフルレンジだけを9個しかも8個は背面です。
8個のスピーカが背面に並んでいるということは,スピーカから発せされるほとんどの音は,直接受聴者に届かず壁などに反射して届くことになります。このような場合,音の響きは豊かになりますが,音像はぼやけます。ドライな音を鳴らす場合にはいいでしょうが,レコーディングで調整した音を鳴らすのに適してるかはわかりません。ですが,他のスピーカとは異なる独自の音にはなります。
そして901はわりと当初からイコライザをセットで売っていたように思います。これは11cmのフルレンジでは十分にフラットな特性を作れなかったのかもしれませんが,当時スピーカに専用のイコライザをつけるという考えは珍しかったように思います。通常はスピーカのみでフラットな特性を作ることを目指しますが,BOSEにはあまりそういう姿勢が観られませんでした。
ついでに書くと私は101を一時期所有してましたが,101にも11cmのフルレンジが載っています。40Xや802などもほとんど同じサイズのスピーカでもしかしたらBOSEは全部同じドライバを使っているのか?と思ったものです(真相は知りません)。で,101のスピーカを見て驚いたのは150Wの耐入力を持っていたことです。
というわけで,少なくとも初期のBOSEのスピーカの特徴は,11cmの高耐性フルレンジのみを使用する,反射音を積極的に利用する,イコライジングも使用する,ということです。このあとボーズはサブウーファを持った50Xやキャノンウーファ等を出していきますが,これらもそれまでにあったスピーカとはかなり経路の違ったものです。
さて,ボーズ博士が目指していた理論とはなんだったのでしょう?。わたしが思うに,BOSEのスピーカは特徴が音になって現われる,つまり聴いてその技術的ポイントがわかる…という点に重点がおかれている気がします。これはスピーカとして当たり前の様に思うかもしれませんが,そうではありません。それまでの高級なオーディオは「原音に忠実」であることを売りにしてました。原音に忠実ということは,スピーカに色が無いことです。つまり究極的にはどのスピーカを使っているかわからないことです。でもボーズのスピーカはおそらくわかります。
もっともボーズ博士自信は,BOSEのスピーカは忠実だというかもしれません。でもおそらくBOSEのスピーカが再現している音は,原音に忠実な音ではなくボーズ博士の心でなっている音だと私は思います。そしてその音がスペック的にも,見た目的にも,そして出てくる音も非常に斬新であり(そしてMITの教授が考えたというお墨付きもあって)オーディオファンに受け入れられたように思います。
以上わたしの勝手な思い込みですが,BOSEのスピーカについて書きました。ここでわたしがボーズに学ぶことは,オーディオは原音に忠実な音を出すことを目指すのではなく,わたしが聴きたい音を,聴いてワクワクする音を出すことだと思うということです。間違ってるかもしれませんが,わたしはそう思います。