13日9時から「NHKドラマ 火の魚」を観た。普段、ドラマはほとんど見ないが、予告編を聞いて面白そうだと思い、予約録画した。見たいと思っても、忘れていたりその時間に用事が入ったりするので録画しておくのが一番。しかし、何もない時は録画しながら見ることになる。昔は人気作家であった小説家が、大病を患いそれを機に瀬戸内海の島に移り住み、孤独な生活をしながら細々と駄作を書き続けて暮らしている。そこへ、担当者の代わりに若い女性記者が原稿を取りに来たところからひと夏の2人の奇妙な交流が始まる。女性記者は、拒否されてもひるむところがない。おまけに老作家の作品について、自分の思っていることをずけずけと言う。老作家は女性記者に「人形劇をやれ」とか「金魚の魚拓を表紙の装丁にしろ」とか無理な要求を突きつけてくるのだが、彼女は不思議と素直に受け止め、それらを叶えていくのであった。ストレートな2人のやりとりはややもすると感情がもつれ、決裂へと向かって行ってもおかしくないように思えるが、そうはならない。どこかにお互いを受け入れる友情めいたものを感じる。そのわけは、姿を見せなくなった女性記者を案じて老作家が編集社に電話をかけることで分かる。2年前に患ったがんが再発して入院したという。老作家はすぐさま東京の病院に向かう。「ストレスを与えてしまって済まなかった」とあやまる老人。「逆です。あなたの孤独に救われました」と女性。死を意識することにより生じる孤独。しかし、もっと悲惨な孤独があることを知り、その孤独を共感することにより救われたと。原作に室生犀星とあった。なるほどと思った。くらいテーマなのにどこかユーモアに彩られた明るさがある。昔読んだ「杏っ子」もそうであった。離婚をはじめあまり幸福でなかった娘の人生を描きながらどこか明るかった。