光山鉄道管理局・アーカイブス

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鉄道ミステリとNゲージ・20「子供のいる駅」と跨線橋

2017-02-27 05:59:37 | 小説
 久しぶりの「鉄道ミステリとNゲージを語る」ネタ。前回からかなり間が空きました。

 今回は「急行出雲」所収の黒井千次作「子供のいる駅」
 ミステリとは言ってもこの作品は推理ではなくメルヘンというかSF(それも「すこし、ふしぎ」系)チックな一篇です。
(実際、初出が「大人のメルヘン」の一篇だったそうですし)

 ストーリーは、初めての電車のひとり旅に出掛けた少年が味わう普段と違う非日常感を描くと見せて、後半に(子供にとっての)恐怖体験(それが何かはここでは書きません)というサスペンスに移行、
 クライマックスに意外性のあるオチが用意されているという構成ですが、これだけの変転が文庫本ではたったの8ページに凝縮されているところに作者の手腕が感じられます。

 実は本作の初読の時、私はまだ小学生でしたから読んでいてとても身につまされた思い出があります(爆笑)

 私もそうでしたが、初めての電車のひとり旅というのはそれがどんなに短距離でも本人にとっては非日常な体験な訳で、前半で主人公の感じるワクワク感というのは汚れた大人にとって余りに切ない思い出と重なります(笑)
 そして後半のサスペンスは初めての一人旅では誰もが必ず感じる不安の現実化(大人にとってはインシデントでも同じ事が子供にとっては世界の終りみたいな切迫感を感じさせる)も誰しも思い出がある事と思います。尤も、今どきの子供がこの小説のような状況に置かれた時、これほど切迫感を感じるか少し疑わしい気もするのですが(それ位当時と今とでは子供の気質が変わっている気もします)

 そんな訳で、いい歳になってからそんな目で本作を再読すると「大人のメルヘン」の意味も少しわかって来るような気もします。

 本編解説はこれ位にしてこれがどこで「Nゲージ」と繋がるかと言いますとこの作品では跨線橋が大きな役割を果たしているからです。
(ネタバレになるのでこれ以上は書けません。ぜひ本編をご一読を)

 Nゲージの世界では跨線橋はかなり早い段階から商品化されていたモデルで78年当時でもGMのキットとTOMIXの完成品から選べました。
 特にGMなんかは駅舎もローカルホームも出ない先から跨線橋を出していたくらいで後に車上駅の駅ビルが製品化された折には跨線橋が丸ごと付属していたりもしました。
 私の場合、車上駅は切り継ぎなんかで大きなビルに改造したりしているので結果「跨線橋のキットばかりが余る」という笑えない状況でした。

 後にはユニトラックの登場に併せてKATOも追随しており現在でもこの3社のなかから好みの跨線橋が選択できます。TOMIXのそれもいつの間にか40年近いロングセラーです。

 ですが今回紹介するのは初の完成品だったTOMIXのそれです。

 この作品のイメージではGMやKATOのそれよりもTOMIXの方が作品の描写に近いと思いますので。
 こちらは流石に駅舎と対向式ホームの後からリリースされています(笑)が、跨線橋が付くだけで駅がなんだか華やかになった様な錯覚を覚えさせる点で魔法の様なアイテムでした。
 しかも、既に駅セットを持っているユーザーでも手軽にバージョンアップできたわけですから跨線橋恐るべし。この辺の展開のうまさは流石プラレールで鳴らした(いい意味での)玩具屋さんらしい所だと思います。


 なお、跨線橋が出てくる作品というのは実は他にもあり双葉社の鉄道ミステリ傑作選(これも鮎川哲也監修)の中に泡坂妻男の「階段」というのが収録されています。
 こちらはこちらで「読了の瞬間に一瞬、ぞっとする」独特な展開が印象に残る佳品です。

 また、実録系の怪談話でも「うつむき加減の男の数歩後からついていくと、跨線橋の角を曲がった途端、その男が消えている」という幽霊話があったりします。

 してみると跨線橋というのはミステリの世界では異空間か何かの様に認識されているのでしょうか。


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