「これでもだんだん、まともな国になりつつあるんですよ…、
それでも日本と比べると、まだまだ100倍いいかげんですけど…」
タイ、チェンマイ在住9年目の知人が、時々口にする言葉である。
彼とは仕事上の付き合いなのだが、たまたま私の旅友がチェンマイ
で合気道を教えており、彼もまたその彼を知っており、「世の中案外
狭いとね…」ということで、それ以後、私が来タイするたびに飲みに
行くようになっている。
今回もまた会社に顔を出すと、ちょうど外でタバコを吸っていた。
よれよれのシャツにダボダボズボン、そしてサンダル姿が定番だ。
どこから見てもバックパッカーである。それもそのはず、彼もかつて
は旅人で日本にたどり着く前に、タイのチェンマイで日本人経営の
衣料品会社に現地採用として就職してしまったのだ。
それも今では一人で任され、社長は年に数回来るだけだそうである。
彼との酒は相当長い。夕方6時には待ち合わせて、そのまま夜中
の0時まで延々と続くのだ。彼は酒豪だが、かなり静かな酒である。
元々大人しい人なのだが、酒が入ってもかなり無口なのだ。
最初の頃は気を使ってあれこれしゃべっていたのだが、やがて疲れ
果て時に彼がひとこと、「僕は無言のままで耐えられる人とじゃな
いと飲みにいかないんですよ…」とポツリ。
私より3つ下だが、案外大人びたことを言うのであった。
彼とは仕事の話は2割ほど、あとは旅の話しばかりだ。
彼と飲んでいると、昔旅先で出会った人と飲んでいる時を思い
出すのである。それはなんとも懐かしく心地良いのであった。
そしてそう思っていた矢先、彼が「三田さんといると、旅行先で飲ん
でいるみたいな気がするんですよね…」とひとこと。
やはり旅人には何か通じ合うものがあるのだ。外こもりとか現実
逃避の感覚を共有できるのである。彼もまた旅に出たいと言う。
いくら外国に住んでいても、彼にとってチェンマイは現実の世界で、
とにかく、タイから出ないと旅行気分にはならないそうである。
「それでも、ここは日本よりは楽ですよ。何せみんな、いいかげん
ですから…」
そんな彼のことを、どこかでうらやましいと思っている自分がいた。
それでも日本と比べると、まだまだ100倍いいかげんですけど…」
タイ、チェンマイ在住9年目の知人が、時々口にする言葉である。
彼とは仕事上の付き合いなのだが、たまたま私の旅友がチェンマイ
で合気道を教えており、彼もまたその彼を知っており、「世の中案外
狭いとね…」ということで、それ以後、私が来タイするたびに飲みに
行くようになっている。
今回もまた会社に顔を出すと、ちょうど外でタバコを吸っていた。
よれよれのシャツにダボダボズボン、そしてサンダル姿が定番だ。
どこから見てもバックパッカーである。それもそのはず、彼もかつて
は旅人で日本にたどり着く前に、タイのチェンマイで日本人経営の
衣料品会社に現地採用として就職してしまったのだ。
それも今では一人で任され、社長は年に数回来るだけだそうである。
彼との酒は相当長い。夕方6時には待ち合わせて、そのまま夜中
の0時まで延々と続くのだ。彼は酒豪だが、かなり静かな酒である。
元々大人しい人なのだが、酒が入ってもかなり無口なのだ。
最初の頃は気を使ってあれこれしゃべっていたのだが、やがて疲れ
果て時に彼がひとこと、「僕は無言のままで耐えられる人とじゃな
いと飲みにいかないんですよ…」とポツリ。
私より3つ下だが、案外大人びたことを言うのであった。
彼とは仕事の話は2割ほど、あとは旅の話しばかりだ。
彼と飲んでいると、昔旅先で出会った人と飲んでいる時を思い
出すのである。それはなんとも懐かしく心地良いのであった。
そしてそう思っていた矢先、彼が「三田さんといると、旅行先で飲ん
でいるみたいな気がするんですよね…」とひとこと。
やはり旅人には何か通じ合うものがあるのだ。外こもりとか現実
逃避の感覚を共有できるのである。彼もまた旅に出たいと言う。
いくら外国に住んでいても、彼にとってチェンマイは現実の世界で、
とにかく、タイから出ないと旅行気分にはならないそうである。
「それでも、ここは日本よりは楽ですよ。何せみんな、いいかげん
ですから…」
そんな彼のことを、どこかでうらやましいと思っている自分がいた。