
長岡市柳原町の「塩の谷鮮魚店」を手がけて1年半が経とうとしています。
この建物は、木造3階建ての特殊建築物に位置し、長岡でも始めての木造3階建て準耐火建築物となっています。
残念なことに、1階部分は鉄骨造となっていますが、下地は全て木軸となっています。(1階部分も)
木造部分には県産杉をふんだんに使用し、県の補助事業を使いました。
市街地で、この手の建物を作るときは、大抵が鉄骨ですが、あえて木造にすることで、暖かみのある店舗に仕上がっています。
竣工後は、休みもなしにお客さんが入っているとのこと、特に奥座敷の木組みの部屋は予約でいっぱいだそうです。
手がけた店が繁盛するのは気持ちの良いことです。
奥の部屋は、いつもの通り「家内安全、商売繁盛」を願いながら丸太や羽目板を仕上げました・・
木造準耐火建築物
準防火地域では、いままでは鉄筋コンクリート(RC造)か鉄骨(S造)しか認められませんでしたが、木材に耐火被服をすれば、構造計算をすることで木造の準耐火建築物を作ることが可能となりました。
通常の木造建築物では、層間変形角が1/120で壁倍率を設定していますが、準耐火建築物では1/150以下となっています。
層間変形角とは、1階、2階の地震等の横加重を受けた時、1階~2階の傾きがどれくらいの角度かということです。
高さ3mの壁の上端を130kgで押し、1/120となった壁を「壁倍率1」としています。構造用合板では2.5倍、ダイライト12ミリでは3倍で、5倍が最大値です。
層間変形角1/150を実現するには、1/120で考える場合の1.25倍の壁量が必要となります。
そのため、3階建ての1階部分は壁だらけになってしまい、大空間や開口がとれなくなってしまうのです。
本当は木造3階建てにしたかった「塩の谷」も、1階には広い玄関ホールや調理室を設けるためにやむなく鉄骨造にしたのでした。
耐火被服は通常、ロックウールを使うのですが、アスベスト問題もあり、吹きつけは怪しいので、手間のかかるボード貼りを採用しています。
今年は、この近くにRC像の建物に木造準耐火建築物の玄関を増築する計画があります。
確認申請時に、
「何でコンクリートや鉄骨にしないんだ?」
と言われていますが、
「玄関や階段を作るのに、何で高価なRCやSにしなければならないんだ?」
という反骨精神が思わず出てしまいました。
木造にだって、可能性はあるのです。
ボードで覆ってしまうのは、意に反しますが、「燃えしろ計算」をして大断面の木材を使えば、被覆しなくても採用可能です。
夜な夜な、構造計算しておりますが・・どうなるか・・
なにぶん多積雪地域なもので、計算が複雑なのです。
(私は伝統構法やったり、構造計算したりと・・いったい何者?)
昔は、この本町通りは長岡のメインストリートで、城下のもっとも栄えた場所でもあります。妻入りの問屋が軒を並べていた由緒ある地域です。
今では、郊外型の大型店舗に圧されて、建物がポツポツとあるくらいですが、その伝統を引き継ぐような木造のデザインにしたいところです。

人気のある古民家風の客室