何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

カネがないなら知恵を出せ

2007-08-21 08:49:31 | Book Reviews
『貧乏トヨタの改善実行術』 若松義人・著、だいわ文庫、2007年3月。

 トヨタは製造業であり、同社関連書籍の多くは製造ラインに関するものがほとんどで、必ずしもサービス業にあてはまらないような感じのする章もあるが、組織のありかたという点では首肯させられる部分が多々ある。大メーカーなのだが、どこにでもありそうな景色が目に浮かぶのは、著者の筆力によるところも大きいのか。

 主力製品が海外工場に生産移管されることになり、このままでは赤字転落が必至という企業があった。その企業を再建するために社長としておもむいたVさんが目にしたのは、厳しい経費削減で疲弊した生産現場と、社員の姿だった。

 前任者の方針は「生産規模が縮小に向かう以上、生産現場のあまりお金はかけられない」というものだった。そのため、たとえば工場の環境改善がほとんどなされていない。そのため整理整頓が行き届かず、汚れ放題のありさまだった。それでは改善もできない。生産性は低下する一方だった。また、物流についても、不便を感じながらも予算カットによって手を打てずにいた。

 そこでVさんは社員にこう言った。

 「私は今後、経費を削減しろと言いません。もちろん経費はつねに見直し、ムダを出さないように改善していきます。ですが、ある程度のお金をかけなければならないもの、削ってはいけないものもたくさんあります。ムダを省いて、必要なお金を有効に使う。これからは、この方針でやっていきます」

 こうした方針のもと、たとえば社員研修の支出は決して惜しまなかった。外部研修にも積極的に社員を送り込んだし、コンサルタントにも依頼した。
 「たいしたお金じゃないから、どんどん外に行って知識を吸収しなさい。そして、そこで学んだことを改善に活かしなさい」
 
 Vさんのムダに対する目は厳しい。しかし、「元気が出る仕組み」のための投資は惜しまなかった。
 「人や設備にかけるべきお金まで削って「節約しろ、がんばれ」と言っても、人は動きません。まして、元気なんか出るわけがありません。会社を変えるには、元気が出る環境をつくることが大切です」 (p.66~7)


 若者に手厚く教育をしても、辞めてしまう人もいれば、あまり教育費に多くの予算はとりたくない、極力減らしたいと考える薬局経営者に出会ったことがある。そういう経営者は珍しいのではなく、結構多いのではないか。建前では教育や育成は大事で、十分力を入れているようなことを言うが、予算のつけ方、出席や参加への制約など、やっていることを見れば腹の中が透けて見え、それがいかに口先だけのものであるかはバレてしまう。

 そういう風土がイヤで辞めていく者も多いという。投資に見合う成績を挙げられるかどうか、経営者がそのリターンを気にすると、雰囲気はさらにぎくしゃくしていく。すぐに結果が得られなければ、さらに改善や工夫を重ねて、次からは結果を出せるように、多少の失敗を許すような度量がないのだろう。

 どこまでスタッフを大事にしているか、「人が大事」「人が財産」ということを考えているかどうかも、一番反映している部分だ。
 制約の多いその経営者のところでは、結局、利益は芳しくないらしい。
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