何かをすれば何かが変わる

すぐに結論なんて出なくていい、でも考え続ける。流され続けていくのではなくて。
そして行動を起こし、何かを生み出す。

スティーブンス・ジョンソン症候群被害者の手記

2005-07-10 11:28:48 | Book Reviews
『僕は、涙の出ない目で泣いた。』(川畠成道 扶桑社文庫 ISBN 4-594-03837-9

 8才でカゼ薬によってスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)に遭い、初期対応は早かったものの、視力を失う。カゼ薬がなんであるか、(品名など)具体的にわからないが、おそらくOTCであると思う。

 その著者が、今では世界に名を轟かすヴァイオリニストなのである!

 被害に遭わなかったら・・・などと考えてはいけない。確かにどうなっていたかは「神のみぞ知る」だが、努力というより、わき目もふらず、選んだ道を歩むひたむきさ、師に恵まれ、信じ、受け入れる素直さ。障害があろうとなかろうと、神様も心から彼を応援したのではないだろうか。

 視覚からの情報に乏しい分、他の五感を働かせた描写に読む側は引き込まれる。見たことでなく、心で感じたことを記しているから、読む側も心で感じなければ受けとめられないからだ。
 作家ではないから、文章自体はフツウかもしれないが、とぎすまされた感性は読む側の琴線を鳴らす。さすがヴァイオリニスト! ビブラートをかけてハートをとらえる。

 障害を訴えたいわけでもなく、副作用の恐ろしさを伝えたいのではない。しかし、ここまで人の人生を左右するSJSを、改めて恐ろしいと思う。音楽の道を目指したいと思うことはあっても、視力を失うことを望む者など、誰もいない。
 被害者の多くは、川畠さんのようにはなれない。ご両親をはじめ、周囲のサポートも見逃せないのだろうが、そこまである日突然、人間の人生を固定してしまうSJSというものを、薬剤師は是非知っておくべきだと思う
Comments (4)
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