庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

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緑のダムとコンクリートダムの協調こそ治山治水だ! 

2009-11-10 | 森林・林業
前回までに森林の機能には雨水を一時的に保持する役割があるが、適切な状態に保全しないと緑のダムの役目を果たさないことを説明した。
コンクリートダムを造り続けようとする専門家は、この樹木の不健全な状態を採りあげて、緑のダムでは洪水対策は不完全である、と批判している。
不健全な森林を放置したままではコンクリートダムを造っても機能を低下させ寿命を短くする。

ここは発想を転換するべき時期である。
まず山地の樹木を「材木生産用の針葉樹」一辺倒の政策を転換して、急傾斜地における植林は、今後は広葉樹林を主体に切り替える。
傾斜の緩い山地においては、針葉樹主体の人工林として、健全な手入れを行って価値の高い材木生産に振り向けて、林業を振興させる。
広葉樹林には適時、抜き伐りを実施して、老齢化した樹木は取り除き、成長の良い樹木を育てることで、雨水の保持機能を最良の状態に維持する。

このような措置を講じた上で、地域の降雨量を想定して河川に流れ込む水量変化を見積もっていく。
その水量によって中流域の最大水量や、下流域の堤防の安全度を見直してチェックする。
こうして初めて、現在までに設置したダムの機能で洪水予防が果たせるのか、不足するのかを論議していくべきである。
大元の山地に降った雨の流れに対して、緑のダム機能を何も対策していかないで、ただ流れてきた雨水の量が急激に増えるから、今のダムの機能では不足だ!と騒ぐのは、愚かとしか言いようがない。 

全国では、まだ140ヵ所以上の新規のダム建設計画が動いている。
新政権はこのダム計画の是非を見直すために、建設の進行を一時ストップすることを決定した。
従来のダム建設を前提とした治水基準や、川からの取水する権利(水利権)を見なおして、新基準を作ってダム建設の要否を判断していくことになった。
この新基準の作成と並行して、上流の林地における「緑のダム」機能の向上を、極力実施することを義務付ける措置も必要であろう。
あとの維持のための費用が膨大になることで、負の遺産を増やす「愚かさの象徴」のような「コンクリートダム」を増やしていく愚策は避けねばならない。

ダムによる洪水対策の方針によって、翻弄されてきた地元の住民にとっては、大きな災難である。
50年以上も振り回されて、生活の基盤を奪われてしまい、唯一の望みであるダム建設後の観光資源を生かした地域作りを待望してきた。
それがダム建設は不要となって、その後の生活や産業基盤が何もない状態では、取り返しのつかない被害である。

そこで、「緑のダム」に転換した地域においては、何を産業基盤にしていくかを真剣に討議して、その方向に向けての支援を、国の責任で行うべきであろう。

それには、健全な森林保全に伴う林業の活性化と、バイオマスエネルギー事業を地域社会における産業として育て、地産地消を目指した経済を目指すことにある。(以下次回に 

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