庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

経済の活性化は緩い数値目標ならば達成できるのか? 

2009-06-07 | 経済問題
2020年までの日本の温室効果ガス削減目標(中期目標)を、麻生首相が政府として意思決定をするのが、6月10日と報道されている。
産業界に中でも経団連は、もっとも甘い目標の4%増加を主張している。
国際感覚の全くない、内弁慶のようないい分である。
それほどでなくも、産業界の団体(遅れている産業や企業が入っている護送船団方式の業界)は、ほとんどが経済にとって悪影響のすくない緩い目標設定を主張している。

主張の根拠としては、京都議定書は不平等条約であって産業の足かせとなっている。
これ以上の削減目標は企業にとっての負担となり、しいては一般国民への転嫁によって生活に悪影響を及ぼす。
だから、EUの主張や環境市民団体の言い分を聞いて、経済への悪影響のあるような高い目標数値は、提示すべきではない。ということである。
お定まりの、経済の悪化、国民生活の圧迫、だから、削減目標による規制は悪政である。となる。

本当に数値目標が高いと、悪影響が大きいのであろうか?
京都議定書(6%削減〉に対しての取り組み経緯は前回に書いたが、目標達成に足りない見込み分は、東欧諸国との排出枠取引で、賄う政策になっている。
費用は2000億円になるといわれている。
なぜ目標達成に不足が起きたか?
大きな原因は原子力発電の増設という政策判断の誤りである。

1997年の京都議定書締結以後、原子力発電のトラブルが続発した。
ウラニウム燃料の製造工程での核分裂反応事故にはじまり、各地での原子力発電所の事故隠しやデータの改竄など、信頼を損なう事件が続発した。
最近は、新潟沖地震による、原子力発電所の長期停止である。
このような状況では、原子力発電による炭酸ガス排出削減は幻想にとどまる。
そして、それに頼ってきた産業界は、省エネと海外への工場移転でつじつまを合わせてきた。

経済は停滞してしまうのは当然である。
後ろ向き、消極的施策に頼ってきたツケが、今になって回ってきた。
海外への資金投入〈排出枠の購入〉する分を、国内への脱化石燃料事業(再生可能エネルギー産業の開発など)に投資をしてくるべきであった。
今の時点で少なからず削減に貢献すると同時に、次世代に向けての『新産業』として、活発な発展段階に入っている筈である。

このような経緯をキチンと見れば、削減の目標数値が高いから問題だ!
ということではなくて、その目標に向けての取り組み方針の誤りが問題である。
長期的な世界の動向と、技術革新の可能性についての洞察を深く検討し、その上で、大胆に政策的な措置を講じていく聡明さが必要である。

今までの政策の失敗は、電力業界におもねる経済産業省のエネルギー政策の誤りに起因している。
その政策の誤りを今になって、あわてて取り繕うとしている一方で、まだ数値目標は低くすべきであり、「理想論に走って、途方もない数字を国民の皆さんに押しつけることは、適当ではない」と主張している。
経済政策も長期のエネルギー戦略も曖昧なままにして、環境規制は経済の足を引っ張り、国民生活に負担をしいる。という、旧態依然たる論理でいる。

このような事実にもとずく分析もなく、破たんしている経済論理による環境規制悪玉論にとらわれている経済官僚の言うことを頭に入れて、首相はいいなりになってしまうのか。
以下、次回に。

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